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戦場で踊れ  作者: 羽鷺終茶
26/33

-幸福-

「んーっよく寝た」


時刻は18時。17時に起きるつもりで目覚まし時計をセットしたが、結局叩き潰すように止めて二度寝した。

薄暗い部屋の中で、右手の人差し指を立ててその先に魔法で火をおこしてみる。当たり前のように難なくこなし、激しく魔力消費したときの息苦しさはない。白癒との戦闘で消費し過ぎた魔力は回復したらしい。

そこで部屋を見渡してみた。国王だからという理由で与えられた、広すぎる部屋。大き過ぎる窓。そこからは街の風景が一望できる。絨毯は王室にありがちな赤色に金色の刺繍。カーテンは白色の物とオレンジ色の物で二重になっている。照明はシャンデリアだが、落ちてくると危ないためそのうち取り外してもらう予定だ。


「聖...?」


帰ってきたような形跡がない。別にこの時間までに帰ってくる必要があるわけではないが、心配になってしまう。離れている時に何かあったら、俺たちは何もできないのだから。

迷わず聖を探しに行くことを決めた俺はベッドを降りて部屋を出た。

確か、聖には暁を探検――という名の偵察に同行してもらえるよう、話をしに行かせたはずだ。時間的には既に話終えているだろうが、取り敢えず暁のところを目指す。


と、ここまでは良かったのだが。

暁を探すのは困難である。

理由は簡単。暁がとても自由な性格だからだ。彼女は自分がやりたいと思ったことをすぐさま実践してしまう。だから、行きたいところがあれば勝手に行ってしまうし、いつ戻ってくるかも分からない。あるときは部屋が寒いからといって知らない人の家の屋根で寝ていたし、またあるときは部屋の風景が飽きたとか言って川岸で読書していた。

しかし、街を出るほどの遠出をするときに誰にも何も言わず行ってしまうほど馬鹿でもない。俺が何も聞いていないということは、街の中にはいるはずだが、何せ街は広い。聖のように空を飛べでもしない限りなかなか見つけられない。


そして、事態は更なる困難を極めた。

暁の部屋のドアノブには、外出中と書かれたプラカードがかかっていたのだ。それを見て、一応ドアノブを回してみたが、案の定鍵がかかっている。


「だめだ...」


なんだか今日はついてない。

会いたい人にはなかなか会えないし、やりたいこともやれないし、聖への心配も募ってくるし、腹も減った。


......食堂行こう。


純粋に腹が減ったという理由で足を進めた。

だからこそ、いや勿論のことなのだが、俺はこの時食堂で行われている出来事を知らない。予想さえもしていない。いや、誰が予想するというのだろう。

食堂に女性陣が集まって、俺に抱いている不満を言い合っているだなんて。


俺は、大きめのテーブルを囲んでいる聖と幹部のみんなを見て、食堂の入口で立ち尽くしていた。


「そうよ、零羅くんはもう少し私たちの気持ちに気付くべきだわ!」


と、白癒。

...気持ち...?俺は無意識に白癒たちを傷付けるようなことをしているのだろうか。


「零兄は、そんな性格」


と、聖。

つまりどんな性格...?


「あれは一生彼女できないにゃ」


と、暁。

失礼だな!あれって呼ぶな!...って、は?彼女?


「零羅さんは、みんなのものなのです〜」


と、翠。

俺はものじゃないぞ。


女性陣が言っていたのは、一般的に、客観的に、どう見ても不満という不満ではないものらしいが、俺の目には不満としか映らなかった。

実は、最初は聖目線で書いていた部分です。

零羅の鈍感さを出したくて大幅に変更しました。

というか、なんか平和な部分を書きすぎたかな...と反省しております。戦闘とか作戦とか今後の計画とか入れるとややこしくなってきて途中で匙を投げてしまうので...世界統一について踏み出すのはもう少しあとのお話になりそうです。

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