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戦場で踊れ  作者: 羽鷺終茶
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-双子-

事務室の前に立った俺は、静かに深呼吸をしてドアをノックしようとする。その一連の動作を繰り返して5回目。未だに俺はドアをノック出来ず、もちろん翠にも会えていなかった。ときたま後ろを通る人が俺を奇怪な目で見て行ったが、そんなことはどうでもいい。いや、どうでもよくはないのだが、どうでもいいと思ってしまうほどに緊張していた。


何故、そんなに緊張する必要があるのか。

それは、以前不用心に事務室へ入ったとき、見てはいけないものを見てしまって翠の攻撃魔法を真正面から食らったからである。このとき一体俺が何を見たのかについてはまたの機会に話すとして、とにかく同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。


実際、双子の安否確認と情報収集くらいしか出来そうなことはないわけだし、今やらなければいけないことでもない。


と、色々悩んだ末に、翠は温厚な性格のため慎重に入っていいか確認しておけば大丈夫だという結論に至った俺は意を決して事務室のドアをノックした。

...............。


「あれ?」


返事がない。

不在なのだろうか。だとしたらさっきまでの俺の葛藤は一体...。

念のためもう一度ノックしてもやっぱり返事がない。諦めて部屋に戻ろうと踵を返すと、向こうから歩いてくる人影が見えた。ウェーブがかった緑色の長髪。黄緑を基調とした素朴なデザインの服。


「翠!」


俺は一気に身体から力が抜けるのを感じながら相手の名前を呼んだ。

俺に気付いた翠は、立ち止まってこちらに手を振ると魔法でテレポートして俺の前へ現れる。いつも通りのほんわかした笑顔。


「零羅さん、何か御用でしょうか〜?」


「ああ。翠の友達の双子は元気か?」


名前を出さなくても誰のことを言っているのか察してくれたようで、翠は大きく頷いた。まぁ、俺と翠の知り合いで双子なんてそうそういないだろうが。


「すごく元気です〜。二人のこと覚えていたんですね〜」


そう言われて、改めて何年会ってなかったかを考えてみた。簡単に計算すると5年くらいか。確かに、あの時二人はとても小さかった記憶がある。

となると、逆に心配になってくるのが...。


「二人は俺のことを覚えてるか?」


忘れられていても構わないけれど、覚えてくれていた方が都合はいいかもしれない。


「う〜ん...どうでしょう...。この間の演説も聞いた筈ですが、何も言ってませんでした〜」


忘れられている可能性が高いか。それなら無闇に会おうとする必要はないだろう。


「じゃあ、二人にも紅のこととか、最近変なことがなかったかとか、隣の帝都の様子とか、色々訊いてくれないか」


「はいー、了解で〜す」


微笑んで敬礼をする翠。

俺は翠に別れを告げると、今度こそ自室へと歩いた。後ろでは、翠が事務室に入る音。普通ならここで翠に、俺が飛ぶための魔力の用意が出来そうかどうかを訊いておくべきだった。だが、俺は敢えて訊かない。出来ないと分かった時点で、きっと翠の方から言ってくる。せめて、俺が飛んでから様子を伺うようにしよう。

この時の俺は、いや、これからも、翠が俺と同じ気持ちで、だからこそ俺に飛べそうか訊いてこなかったのだと知ることはなかった。


自室に入ると聖はいなかった。男女が同じ部屋というのもおかしい話だが、聖の意見で同じ部屋を使っている。城に住み着く前もそんな感じだったし、今更変な感じはしない。寧ろ俺と聖が別室を使う方が変な感じがした。


現在時刻は15時。二時間後に目覚まし時計をセットして布団に潜り込む。顔まで毛布の中に突っ込んだ俺は、真っ暗な中考える。

魔法には詠唱かイメージが必要。しかし、今日俺は飛ぶ練習をしているときにどちらも使わず魔法を発動させた。偶然とかまぐれとか、そんな可能性はまずないだろう。魔法自体が有り得ないことを引き起こす力で、条件が一致して初めて成り立つ力なのだ。

もしかしたら、俺の知らない方法があるのかもしれない。あったとしたら、世紀の大発見になるのかもしれない。そしてそれを俺だけが知っているのであれば、絶対的な武器になるのかもしれない。

俺はそんなことを考えながら夢の中に落ちていった。



俺たちはまだ知らない。

誰が敵で誰が味方であるかを。

どれほどの規模で事が起きているのかを。

俺たちの行動が、結果的に何を生み出すのかを。

予測でもいいからすることができていたなら。

結果は何か変わったかもしれない。


俺は忘れない。


――零聖は二人で一人


どちらかが欠ければ存在しない者。


――零聖は一人では何もできない


けれど、一人でないなら。


――零聖は独りで生きているわけではない


けれど、孤独でなければならない。


――存在しないはずの、存在してはいけない存在


それが俺だと。

俺は忘れない。

なんか意味深な感じで終わっちゃいました。こういう不思議な感じ結構好きです。藍と蒼の登場についてはまだ決めていません。というか、二人は出番の多い脇役みたいな立場です。あまり登場人物が多いと作者の自分でさえ使い分けが出来なくなってくるので...トホホ。

そしてなんと、ついに金曜日が体育祭です。運動キライな作者は体育祭が嫌いです\( 'ω')/イヤアアァァァァアアアァァァァアアア!!!!

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