-普通-
「うわああああああああ!!!!!!!!!」
嘘だろ?!?!?!?!
え、今絶対飛べる流れだったのに?!?!?!?!
俺は恐怖というか焦りとか困惑に似たものを感じながら聖の上に落下した。空中で視界が回転して、清々しいほどの青空が目に入る。その眩しさに目を細める暇もなく、聖の腕の中にすっぽりと収まった。
「うおっ...」
「零兄...重いっ」
「え、聖ちょっと待て...?!」
計画通り聖にお姫様だっこの形で受け止めてもらえたのは良かったが、計画外なことに、やはり女の子一人の腕に俺は重かったらしい。聖は上記を呟くように言うと、躊躇なく腕の力を抜いて俺を地面に落とした。
「いだっ?!」
コンクリートの地面に腰を打ち付けた俺は情けない声をあげてしばらく地面を転がるように悶絶した。
その間、何度か聖に名を呼ばれたような気がしたが、取り敢えず応答は後に回した。
「零兄、魔法はイメージ」
「え?ああ、分かってるけど...」
痛みから解放された俺は大人しくその場に座って、立っている聖を見上げた。相変わらずの無表情。
「零兄、攻撃魔法と防御魔法使う時、どうやってイメージする...?」
「それは......」
俺にとっては簡単な質問のはずだった。もう何度も使ってきた魔法。何度もイメージしてきたもの。けれど、俺は質問に答えられずに詰まってしまう。
どうやってイメージしているか。自然とそのイメージが出来る。無意識で、イメージが出来る。俺にとってはそれが普通。
魔法が使えることが普通だから、無意識でイメージが出来る俺。
飛べることが普通だから、何も考えずに飛べる聖。
「...なるほど」
「そういう、こと」
つまり、お互い何も考えずに特別なことをしているのだ。出来るなら、やろうと考えなくても出来る。
「聖、もう一回やってみよう」
俺の言葉に、聖は笑顔で賛成した。
ということで、俺はもう一度同じ場所へよじ登り、下に聖がいることを確認。手を振って、準備完了の合図を出す。同じ合図が聖から帰ってきて空へ目を向ける。
飛ぶ。ただ、それだけのこと。
俺は滑らないように気をつけて後ろに数歩下がって深呼吸をしてから足に力を入れた。
飛ぶ。決めたら止まらない。
そこから走り初めて猛スピードで加速。屋根が途切れる直前に、タイミングを合わせてジャンプ。慣れない浮遊感に包まれる。空がいつもより近く見えた。
その直後...。
「...?!」
迫り来るコンクリート。落ちているのだと認識する前に、俺の右手首に巻き付くようにして緑色で一重の魔法陣が展開される。その魔法陣を見て、聖が俺の下から避けるのをかろうじて捉える。
...待て。聖が避けたら俺は地面に激突するだろ?!?!?!?!
焦りが俺を襲った。
それに魔法陣は魔法を発動する前に展開されるもので、俺は魔法を使おうとした記憶がない。
このまま重力に加速されて地面に叩きつけられる自分を想像して思わず目を瞑った。
が、いくら待ってもあの痛みは来ない。俺にとっては願ったり叶ったりだが、一体何故...。
恐る恐る目を開けると、俺の身体は地面すれすれでわずかに浮いていた。
「な、なんで...?!」
疑問の言葉が自然と発せられると同時に、微量ながら魔力が減っていくことに気付く。ハッとして右手を見ると、魔法陣が淡く輝いていた。
「...魔法...?」
完全に脱力すると魔法陣は消滅して、背中にコンクリートの硬さが伝わる。
どうやら俺は無意識で発動させた魔法で墜落を免れたらしい。
「零兄、私いたのに、なんで魔法使ったの?」
仰向けに寝た状態の俺を上から覗き込んだ聖が不機嫌そうに見えるのは...気のせいだろう。彼女にその感情はないはずだ。
「なんでって...なんか勝手に魔法が発動して...」
「魔法は、イメージが大事」
そう。そのはずだ。俺はイメージをしただろうか。あの時の俺に、そんな余裕はなかったはずだ。
「聖、飛ぶのは保留にしよう」
考えるのが嫌になった俺は、飛ぶことを一旦置いておくようにした。
翠が大量の魔力について悩んでいる間、もう一つやっておきたいことがある。
「探検、行く?」
「そう。暁も連れていく」
次の作戦で幹部が彼ら自身の足で通ることになる国境と、出来れば街の入口の状況を目で確かめておく。時間がどれくらいかかるか分からないため、夜目が利く上に戦力的に安定している暁も同行させた方がいいと判断。
「聖は今日中に幹部に知らせておいてくれ」
「分かった」
俺は今日中に自国の様子を実際に目で見ておこうと思った。
零羅は空を飛べるのか?!については未定だったりします。思いつきで進めすぎて自分でも話の方向が掴めません\(^ω^)/
とにかく、更新頑張るので宜しくお願いします!
ここまで読んでくださってありがとうございます!
明日を生きる糧にしますね!←




