-一人-
王様が死んだ。
俺はこれからどうすればいい。
新しい王様の手助けをするか?
紅を憎んで仇討ちでもするか?
考えてみれば、俺自身にはやりたいことなんてなかった。
本当はここにいてはいけない存在で、それでも生きたいから助けてくれた王様の言うことを聞いてきた。盗賊を捕まえることも、スパイも、時には殺人だってした。意思無く動いている自分の行動を不思議に思うことはなかった。
王様がいなくなった。
それでも俺自身の目的を見つけることは出来ない。
ただ、意味もなく広がっていく虚無。
俺は、一人では本当に何もできないのだ。
既に知っていた筈なのに。
今更、身体に刻み込まれるかのように理解させられていく。
「くそ...」
こんな理不尽な世界なんて。
壊れてしまえばいいのに。なくなってしまえばいいのに。
そういえば、今日王様が俺と聖を城へ呼んだ理由はなんだったのだろうか。もし、紅という存在についてだったとしたら。
悪い予想ばかりが頭の中に浮かんでいく。
何にしても、明日になればもっと詳しいことがわかるだろう。今日は寝ようと思った。さっき起きたばかりで寝れそうではなかったが、動き回る気にもなれない。
体を倒して天井を見る。醜いほど真っ白な天井。
...と、誰かがドアをノックする音が聞こえた。俺が返事をしなくてもドアが開く。その瞬間、気配で誰が入ってきたのかを理解した。
「...聖、か?」
「うん。零兄、ただいま」
聖は俺が寝ているベッドの脇まで歩いてくると微笑んで言った。笑うことを知らなかった彼女に、俺が与えた表情。普段ならそれを見ても何も思わなかった。けれど、今ではとても...とても、...この感情はなんだっけ。
「聖、俺はこれから...どうすれば、いい...?」
聖の顔を直視できずに、目を逸らして問う。
いくら妹とは言えど、他人に訊いたって仕方が無いことなのに。それでも訊かずにはいられない。俺はどうすればいいのか。聖はどうするつもりなのか。
「分からない」
しかし、聖は笑みを消して即答した。俺が返事に迷っていると、聖は首を傾げて続ける。
「でも、私と零兄はずっと一緒。零聖は、死なない」
「っ...そうだな」
聖は王様がいなくなっても何も変わっちゃいない。多少の戸惑いはあるのかもしれないが、自分のやりたいことがハッキリしている。それが俺には物凄く羨ましいように思えた。
――一人では何もできない
「俺たちは、ずっと一緒だ」
――けれど、一人でないなら
「零兄、眠い...?」
流石と言うべきか。聖は俺の状態を簡単に看破してしまう。例えば喋るだけでもキツいこととか。俺が明日に不安を感じていることとか。魔力量を感知できない聖は、いつも俺の状態を表情や言動から見破っていた。
「手...、握ってくれないか」
俺の頼み事に戸惑ったのか、数秒間硬直した聖はやがてゆっくり俺の手を握った。
感覚が、俺たちはまだ生きているのだと告げる。
目を閉じると、すぐ眠気に襲われた。聖が近くにいるため安心して身を任せる。
――零聖は二人で一人
うわぁぁぁ短くてすみませんm(_ _)m
零羅と聖は兄妹です!\_( ゜ロ゜)ここ重要!←
なんかいい感じになっちゃってますが...。




