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戦場で踊れ  作者: 羽鷺終茶
16/33

-一人-

王様が死んだ。


俺はこれからどうすればいい。

新しい王様の手助けをするか?

紅を憎んで仇討ちでもするか?

考えてみれば、俺自身にはやりたいことなんてなかった。

本当はここにいてはいけない存在で、それでも生きたいから助けてくれた王様の言うことを聞いてきた。盗賊を捕まえることも、スパイも、時には殺人だってした。意思無く動いている自分の行動を不思議に思うことはなかった。


王様がいなくなった。


それでも俺自身の目的を見つけることは出来ない。

ただ、意味もなく広がっていく虚無。


俺は、一人では本当に何もできないのだ。

既に知っていた筈なのに。

今更、身体に刻み込まれるかのように理解させられていく。


「くそ...」


こんな理不尽な世界なんて。

壊れてしまえばいいのに。なくなってしまえばいいのに。


そういえば、今日王様が俺と聖を城へ呼んだ理由はなんだったのだろうか。もし、紅という存在についてだったとしたら。

悪い予想ばかりが頭の中に浮かんでいく。


何にしても、明日になればもっと詳しいことがわかるだろう。今日は寝ようと思った。さっき起きたばかりで寝れそうではなかったが、動き回る気にもなれない。

体を倒して天井を見る。醜いほど真っ白な天井。


...と、誰かがドアをノックする音が聞こえた。俺が返事をしなくてもドアが開く。その瞬間、気配で誰が入ってきたのかを理解した。


「...聖、か?」


「うん。零兄、ただいま」


聖は俺が寝ているベッドの脇まで歩いてくると微笑んで言った。笑うことを知らなかった彼女に、俺が与えた表情。普段ならそれを見ても何も思わなかった。けれど、今ではとても...とても、...この感情はなんだっけ。


「聖、俺はこれから...どうすれば、いい...?」


聖の顔を直視できずに、目を逸らして問う。

いくら妹とは言えど、他人に訊いたって仕方が無いことなのに。それでも訊かずにはいられない。俺はどうすればいいのか。聖はどうするつもりなのか。


「分からない」


しかし、聖は笑みを消して即答した。俺が返事に迷っていると、聖は首を傾げて続ける。


「でも、私と零兄はずっと一緒。零聖は、死なない」


「っ...そうだな」


聖は王様がいなくなっても何も変わっちゃいない。多少の戸惑いはあるのかもしれないが、自分のやりたいことがハッキリしている。それが俺には物凄く羨ましいように思えた。


――一人では何もできない


「俺たちは、ずっと一緒だ」


――けれど、一人でないなら


「零兄、眠い...?」


流石と言うべきか。聖は俺の状態を簡単に看破してしまう。例えば喋るだけでもキツいこととか。俺が明日に不安を感じていることとか。魔力量を感知できない聖は、いつも俺の状態を表情や言動から見破っていた。


「手...、握ってくれないか」


俺の頼み事に戸惑ったのか、数秒間硬直した聖はやがてゆっくり俺の手を握った。

感覚が、俺たちはまだ生きているのだと告げる。

目を閉じると、すぐ眠気に襲われた。聖が近くにいるため安心して身を任せる。


――零聖は二人で一人

うわぁぁぁ短くてすみませんm(_ _)m

零羅と聖は兄妹です!\_( ゜ロ゜)ここ重要!←

なんかいい感じになっちゃってますが...。

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