プロローグ
このサイトでは初めての投稿になります。まだ良く分からない点もあり不安ですが…。出来るだけ多くの読者様に見ていただけると嬉しいです!
「お前、感情がないのか?」
窓のないだだっぴろい金属質で冷たい部屋。
その部屋の真ん中で、少年は床に座っている少女を見下ろして言う。
少女は沈黙を貫き、どこか遠くを見るような目で少年を見ていた。
「ここはもう持たない。あと数分もすればやつらに占拠されるだろう」
少年が何を言おうと、少女は顔色一つ変えないで、じっと少年の顔を見つめ続けた。やはりその目からは何の感情も読み取れない。
少年は気味悪さを覚える。
「お前は、死にたいのか?」
敵に占拠されて見つかってしまえば、殺されるか、捕らえられて死ぬまで道具として使われるか、このどちらかである。
それを理解しているのかしていないのか、少女は何も言わない。まるで、そこに存在しているだけの置き物であるかのように。
少年は、少女に取り合うだけ無駄だと思って背を向けた。少女が動かないなら仕方ない。自分まで見つかってしまう前に逃げなければ。
そう、人間はいつだって、誰よりも自分の事が大切だ。
しかし、出口に向かって歩き出す前に、抑揚のほとんどない声が背中に投げかけられた。
「私は、ここから出たことがありません」
少年は思わず立ち止まって振り向いたが、少女は変わらず無表情だった。それでも、確かに口を動かして話始める。
「感情も、生きる理由もありません。でも…外の世界を見てみたいです」
「俺が見せてやるよ」
少年は無意識に答えていた。世の中には知らない方がいいこともある。外の世界のことなんて、争いが溢れる世界のことなんて、知らない方がいいのかもしれない。けれど、見ることで変わることもあるはずだと、そのことで自分の何かが変わるかもしれないと、少年は心のどこかで期待した。
少女は変わらず続ける。
「私には感情がありません。外の世界を見ても、きっと何も思うことが出来ないでしょう」
「そんなことはないさ。俺が感情をあげる」
なぜ、この少女にそこまでのことをしてあげられるのか。不思議と疑問には思わなかった。
少年は知らない。少女が、自分と同じように人類の希望を背負わされてここにいたことを。
少年が微笑んで差し出した手を少女が握りしめるのと、敵がこの部屋に入ってくるのはほぼ同時だった。
少女が笑ったのは、その日が初めてだった。
少年が笑ったのは、その日が最後だった。
そんな彼らが見ていた世界は…。
――俺達が命を懸けるほどの価値がある世界だっただろうか。
読んでくださってありがとうございます!
更新頑張りますので、これから始まるお話を楽しみにしていただけたらと思います。
小説書くのって難しい…(´Д`)