6.女の子と二人で暮らすなんて……どうすればいいの?
この日は本当に疲れた。
あれから、ケイと冴との間に目立ったトラブルは無かったが、二人はいつも視線をぶつけ合っているし、周りの生徒たちもなんとなく奇異な目で僕らのことを見る。
毎日これじゃあ、いくらケイが僕の命を守ってくれてのこととはいえ、僕の寿命が縮んでしまいそうだ。
寿命が縮む心配ならもう一つ。
今夜どうするかだ。
またケイと一緒のベッドに寝ることになったりしたら、今度こそ、いろんな意味で身がもたない。
なんとか……、なんとかしなければ!
ケイと二人での下校途中、ちょうど大きな家具ショップがあった。
「ケイ、ちょっと覗いていこうよ」
「いいけど……、どうしたの?」
僕はケイと一緒に家具ショップに入った。
「絆君、何買うの?」
「ベッドだよ」
「ベッド?
ベッドならあるのにどうして?」
「いや、ほら、夕べ一人用のベッドに二人で寝てきゅうくつだったろ?
だから、ちゃんとケイ用のベッドを買おうと思って……」
「私は平気だったけど……。
ケンタウロス同士は、みんな群れでくっつき合って寝るから……。
あ、でも、絆君がきゅうくつでイヤだったんだね。
ごめんね、気付かなくて」
ケイがちょっとしゅんとする。
「い、いや、決して、イヤだったとか、そういうわけじゃないんだ。
ただ――、その――、やっぱり――、人間の中学生の男女は、一緒に寝なかったりするもんなんだよ」
「男子トイレに女の子が入らないみたいに?」
「うん、まあ……、似たようなもんかな」
「分かった。
人間の世界で生きていくんだから、人間のしきたりに合わせなきゃいけないよね。
じゃあ、ベッドを買おう、絆君」
とりあえず納得してもらえて良かった。
僕は、適当なサイズと値段のベッドを見つけると、ショップに配達をお願いした。
こういう高額な買物の支払は、海外にいる父さんに請求書を回してもらうことになっている。
帰宅して、二人で僕の部屋に入った。
「じゃあ、今日買ったベッドをケイが使うことにして……。
場所は隣の部屋が空いているから、配達されてきたらそこに置くことにしよう」
「ええ、絆君と別々の部屋に寝るの?」
「そ、そうだけど?」
「だめだよ、そんなの」
「だめって……」
「忘れたの?
私は二十四時間、いつも絆君と一緒にいなきゃいけないんだよ。
ヴァンパイヤが活発に活動する夜なんていちばん危ない時間帯じゃない。
同じベッドで寝ないなら、せめて同じ部屋で寝るようにしなきゃ、敵モンスターが襲ってきたとき、すばやく応戦できないわ」
「あ、うん、そうだったよね……」
僕は困った。
ケイと同じベッドで寝るのは回避したものの、同じ部屋で寝るのか。
相変わらず悶々としてしまいそうだな……
夜。
もう一つ心配していることがあった。
風呂だ。
案の定、ケイが一緒に入ると言ってきた。
中学生の若い男女が一緒に風呂に入るということはないんだといろいろと言葉を尽くして説明し、なんとか納得してもらえたけど。
僕が風呂に入っているときは、扉一枚を隔ててケイが脱衣所で周囲からの敵襲に備えて目を光らせていた。
そして、ケイが風呂に入っているときは、僕がやはり脱衣所にいてケイが出てくるのを待っていなければならないのだ。
「絆君、ちゃんとそこにいるーー?」
途中、何度も風呂の中からケイに声をかけられ、その度に
「ちゃんといるよーー」
と返した。
「じゃあ、出るねー」
と言われれば慌てて脱衣所から廊下に出、扉を閉じてから、
「ど、どうぞ」
と促す。
毎回これじゃ、ほんと疲れちゃうよ。
ベッドは結局僕の部屋に二つ入ることになった。
二つ並べて置くのはさすがに恥ずかしかったので、部屋の壁に沿ってL字形に並べた。
ケイはベッドを隣同士に並べて置かないことに不満そうだったけど、ケイが毎晩隣に寝ていたら、僕は緊張のあまり不眠症で死んでしまうだろう。
ボディガードのはずのケイに殺されてしまってはたまらない。
この日は、ベッドに潜り込んだら、僕は直ぐに眠りに落ちてしまった。
昨日からの一連の出来事で疲れていたのだ。




