やっぱり真実は告げられない
「唯奈、ちょっといいか?」
「なに? おにいちゃん」
朝食を食べ終えた後。ティグリスが検知魔法を張り巡らせるために外出し、ルナには自室で待機してもらっているため、俺は居間で唯奈と二人っきりになっている。
わざわざこの状況を作ってもらったため、今のうちに謝って唯奈に機嫌を直してもらわなければ。
「今まで嘘を吐いていたことがあるから謝っておきたいんだ」
「ふ~ん、やっと謝る気になったんだ」
やはり唯奈は俺が嘘を吐いていたことを見破っていたらしい。さすがは長年一緒に暮らしてきた妹というべきところか。
「だから今から本当のことを話そうと思うんだけど……決して俺が頭のおかしくなった人間だとは思わないでくれ」
「う、うん」
「じゃあ言うけれど……俺は俺じゃないんだ」
「はい?」
「あ、ごめん。今のだとさっぱりわからないか。詳しく言うと俺は、今この身体を操っている俺は未来から来た俺の魂なんだ」
「あの、余計わかんなくなったんだけど……」
「えーっと……」
どう説明したらいいのだろうか。俺って説明するのかなり下手なんだよな。
でもこれだけは自分の口から言わないといけないんだ。ティグリスやルナに頼んで説明してもらっても意味がない。
手くそなりに頑張ってみるか。
そして長らく説明すること一五分以上。
「なるほどね」
なんとか唯奈に理解してもらうことができた。
具体的に説明したのは、未来の俺の魂(天国で過ごしてきたという部分は省く)が過去へやってきて、現在の俺の魂と融合したこと。その際に未来の方の俺の記憶が喪失してしまったこと。また魂の切り離しが可能だということ。そして、その未来でパートナーとなったのがルナやティグリスだということ。
もちろん、ルナやティグリスが天使であることや、俺があの時死ぬはずだったことは一言も言っていない。
「なんとなくわかってくれたか?」
「うん、一応ね。で、元のおにいちゃんはちゃんと帰ってくるんだよね?」
「今の俺は未来の記憶があるだけだから、その言い方は変だけど……まぁ、そうだな」
もともとこの任務が終わったら俺とルナとティグリスは天国へ帰る予定だった。
しかし、その際に問題になるのが俺の身体。魂が融合したまま俺が天国へ帰ってしまうとこの身体は死んでしまう。
ここでその問題を解決したのがティグリスの便利な魔法。融合した元の魂と未来の魂を切り離すことができ、この問題は見事解決されたのだ。
本来ならあの時死ぬはずだったが……まぁ、未来が変わってしまうけどこればかりは仕様のないことらしい。それに唯奈が俺を失って悲しむこともさせたくないしな。
「ややこしい話はこれくらいにしておいて……唯奈、今日は一緒にどこか出かけないか?」
「え、でも任務がどうのこうのって」
「あぁ、それは大丈夫だよ。この前水族館へ行きたいって言ってたよな?」
「う、うん。そうだけど」
「じゃあ、今日は水族館へ行くか、二人で」
「え、でもティグリスさんたちは?」
「あぁ、今日は二人とも用事があるんだ。それで俺一人が暇なんだ。だからどうかなって」
「ふ、ふ~ん、それなら、まぁ……いいけど」
「よし、じゃあ準備できたら早速行こうか」




