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契約者は侵害する!  作者: るなふぃあ
第五章 俺にとってはかけがえのない存在
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作戦会議

 結局あの後、それ以外の詳しいことは何もわからなかった。ただ間違いないのは、このまま進めば俺が自分自身の手で妹を、唯奈を殺めてしまうということ。

 それだけだった。

「ん……どうしたもんかな」

 現在時刻は午後一〇時を少し過ぎた頃。

 俺が自室でそれについて一人で考え込んでいると――コンコンコン。

 ドアをノックする音が聞こえてきた。そろそろ来ると思っていたんだよな。

「はーい、ちょっと待ってろ」

 ドアに向けて声を上げ、俺はベッドから起き上がる。

 ルナかティグリスか。はたまた二人ともなのか。

 適当に予想を立てながらもドアを開けると、

「……契約まだだったな、ティグリス」

「ええ、ちゃんと覚えていてくれたのね」

「当然だ。中に入ってくれ、ルナも」

「はい」

 ルナとティグリスの二人を部屋へ案内し、ベッドに座らせる。

 俺の顔を見たルナが心配そうな表情をした。

「大丈夫ですかトノサマ。なんだか顔色が良くないようですけど」

「ん……あぁ、大丈夫だ」

 そう言って何とか笑ってみせる。でも本当は全然大丈夫なんかじゃない。突然、『妹を自分の手で殺める』なんて宣言されて、普通にしていられるわけがない。

 それでも……あまりルナたちを心配させたくないんだ。せめて元気に振る舞って、前向きに考えていかないと――

「トノサマ。やっぱり無理しているじゃないですか。でもその気持ちはわかりますよ。私に妹はいませんが、もし同じ仲間を、天使を自分の手で殺めることになったらものすごく苦しいですから」

「ルナ……」

 だからいつも胸中を読み取るなと言っているだろ。せっかく心配させたくないと思って言ったのに……。

 ――まぁいいや。ここは俺が何としても前向きに考えていくしかない。

「さて、ティグリス。契約についてなんだが……寝る前でもいいか? 先にみんなで話し合っておきたいことがあるんだ」

「ええ、いいわよ。それで話し合いたいことって?」

「もちろんそれは明日のことだ。シリカはあの時『このまま進めば』って言っていただろ。つまりそれは……最悪な事態を回避する方法があるってことだ」

 どうやれば回避できるのか、それについてシリカは何も言わなかった。それはシリカにもわからないことなのだろう。

「そういえば、そのようなことを言っていたわね」

「だろ? だから今からその方法について考えていきたいと思うんだ」

「でも真志さん、回避する方法を考えるとしても……具体的にどういう展開になるのかはわからないわよ?」

「そうなんだよな。そこが問題なんだよな」

 未来が見えていて具体的にどういう展開になっていくのか。それさえわかっていればなんとかなるのに。

 でもシリカはそういうことすらも答えていなかったから、明日になってみないとわからないんだろうな、きっと。

「んー、そうとなれば……あっ、そういや二人とも地球へやってきた亡霊の姿は見えるんだったよな? 霊体にはなっているけど」

 ふと思い出したことを訊ねると二人はうんと頷いた。

「はい、見えますよ」

「ええ、わたくしたち天使は見ることができるわよ。それが?」

「あぁ、当初の予定とは違う方法でいこうと思う」

 当初の予定。それは任務当日にやつが誰かに取り憑く前にルナとティグリスで見つけ出し、捕えてルナが排除するという方法だ。

 なぜルナが排除するのか。もちろんそれはルナ自身の持っている能力じゃないと奴の活動エネルギーを奪えないからだ。

 残念ながらティグリスにはそのような能力は備わっていない。

 その代わりにティグリスは、治癒魔法と遠距離魔法に関してかなりのスペシャリストだ。

「当初の予定だとあまりにも時間がかかるし、取り憑かれる前に見つけ出せるかどうかの確率はかなり低い。そこでシリカの言っていた言葉を思い出すんだ」

「シリカさんの?」

 ルナが首を傾げる。

「そうだ。シリカはあの時『このまま進めば自分の手で妹を殺すことになる』って言っていたよな」

「ええ、そうですね」

「つまり、だ。その亡霊は唯奈に取り憑くんじゃないかと思うんだ。あくまでもこれは俺の予想だが、亡霊が唯奈に取り憑いて……亡霊を排除するために唯奈ごと葬らなければならない。そんな感じになってしまうんじゃないのかって。だからシリカはああ言ってたんじゃないかな?」

 もちろん、必ずしもそうなるとは限らないし、この場合はルナがやるわけだから『自分自身で』とはまた違うかもしれない。他にもいくつかのパターンはあるはずだから、考え出せるだけのことはしておいた方がいいだろう。

 ちなみに、取り憑かれてしまった人間ごと葬らなければならなくなる確率は結構あるらしい。だから誰かに取り憑かれることだけは絶対に避けなければならない。

 俺の考えにティグリスが頷いた。

「確かにそれは一理あるわね。必ずしも亡霊が唯奈ちゃんに取り憑くとは限らないけれど、関係がないということはなさそうね。……ということは真志さん。明日は唯奈ちゃんをずっとそばで監視するということになるのかしら?」

「んー、そうしたいんだけど……全員で監視するわけにはいかないだろ。あくまでもこれは確率だからな。明日必ずそうなるわけじゃない。シリカは明日やつが来るとしか言わなかったからな」

「なるほど。つまり、もし真志さんの予想通り唯奈ちゃんに取り憑くとしても必ずしも明日取り憑かれるわけじゃない、と言いたいのね?」

「そういうことだ。だから悪いがルナかティグリスのどっちかが唯奈の近くにいてもらって、亡霊が現れないかを見張ってもらうことにしてほしいんだ。それで手の空いたもう一人が他を探すという形にしたいと思う。それでもいいか?」

 本来なら二人で探しに行って貰う方が効率は良いだろう。が、唯奈に取り憑くという可能性を否定できない以上、こうするのがベストだと俺は思う。

 すると、二人は俺のお願いを聞きいれてくれたようだ。

「私はそれで構いませんよ」

「わたくしもその案で構わないわ。で、真志さんはどうするの?」

「俺は霊体となった亡霊は見えないからな。唯奈のそばにいるよ」

他の人に取り憑いて俺たちの家にやってきて悪さをするという可能性もあるし。ルナたちのように亡霊を見ることができないから、俺はこうすることしかできない。

 悔しいが、こればかりは仕様のないことだ。

「わかったわ。それじゃあ、わたくしは明日亡霊を探しに行くわ。ルナ、ローテーションでやることにしましょう」

「わかりました。明日は私が唯奈さんを見守る役目ですね」

「よし、それじゃあその方法で頼む」

「ええ、任せなさい」

「はい。唯奈さんは何としても守り通しますよ」

 頼もしい二人の協力を得て、作戦会議は終了した。

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