変態天使確定
その日の夜。
チェスと将棋、余った時間で議論し合って短編小説を作り上げた俺は自室のベッドに寝転がっていた。
特にすることもなく、ぼーっと宙を眺めていると――コンコンコン。
「はーい。入ってくれ」
ノックオンが聞こえたため、そう答える。
するとルナが部屋に入ってきた。昨日と同じ猫の着ぐるみパジャマで。
その一着しか持ってきていないのか、それとも相当気に入っているのか。どちらかは定かではないが……どちらにせよ、俺としてはありがたい。
もちろんそれは、妙に色気のあるパジャマで来られるよりはマシだ、という意味で。
「どうかしたのか、ルナ」
「昨日約束したので天国での出来事とか、地獄での出来事といった思い出話をしに来たのですが……」
「あー、そういやそんな約束もしていたな」
思い出す方法がある程度分かったとはいえ、これはこれでありがたい。もしかしたら、俺がそういった話を聞くことで思い出すかもしれないし。
それに気になるからな。天国や地獄での俺がどんな奴だったのか。
今まで聞いた話では非常に聞かない方がいいような気もするのだが。
「それではトノサマ。今日も布団に入って……でも構わないですか?」
「ん? あぁ、別にそれでいいぞ」
今日も暖房をつけずに寝転がっていたということもあり、俺の部屋の中は寒い。それでも先ほどまで寝転がっていたから布団の中は暖かい。
あえて暖房をつけてベッドに座ったまま話をしようとしなかったのは、昨日のことを思い出したからだ。
律儀に約束を守ってここへ来たのはあくまでも建前で、本当のところはまだ不安でいっぱいなんだろう。
――今日もまた眠れない夜になるんだろうなあ。
「眠れない夜って……もしかして、トノサマ。私を寝させない気ですか? ま、まさかトノサマからこのようなお誘いが来るなんて。嬉しいです、私は」
「ち、違うッ。そういう意味で言ったんじゃない!」
「そう言いながらもトノサマは、私をどんなふうに犯すかというえっちぃ妄想が頭の中にいっぱい広がって」
「だから違うからな!?」
勝手に俺をエロエロ魔人に仕立て上げないでくれ。
とかなんとか思っていると、そこでまた――コンコンコン。
ドアをノックする音が聞こえてきた。
誰かが俺に用があるみたいだけれど、一応ここはルナに断っておいた方がいいよな。
「ルナ、入れてもいいか?」
「え、トノサマ……?」
「なんで首を傾げてんだよ。入れてもいいかって訊いてるんだ。別におかしくないだろ」
「おかしくはないですけど……入れる、本当に入れるんですか?」
「だからそうだって。っていうかお前嫌なのか? 入れるのはまずいのか?」
「い、いえ、そんなことはないです。でも……」
「でも?」
「まだ濡れてないんです」
「――は?」
「だからまだ早いんです。まだ濡れていないので今すぐに挿れられてしまったら私は」
「ち、違うからな!? 何勘違いしてるんだよお前は!」
「え? ですからトノサマがまだ濡れていない私の秘蔵に無理やり挿れるのかと思って」
「……はぁ」
俺は深いため息をついた。酷い勘違いだ。断る必要なんてなかった。
もういい。入れるからな。
「そ、そんな無理やり挿れるなんて!」
頬を赤く染め、いやんいやんしながらルナが服を脱ごうとする。
さて、そんな変態は放っておくとして。
俺は布団から出て、「はいはい、今開けるからな」と言って、すぐにドアを開く。
するとそこには。
「あら、ルナもいるのね。ちょうどいいわ」
居間から二階へと上ってきたらしいティグリスがピンク色のパジャマを着て立っていた。
ちょっと予想外。ティグリスのことだからもっと色っぽいパジャマを身に着けてくるのかと思っていたのだが……まさか可愛らしい感じで攻めてくるとはな。
いや、攻めてくるっていう表現はおかしいかもしれないけど。
「え、攻めてきたんですか、ティグリスが?」
「いや、攻めてきたわけじゃない……って、おまえええええええええ」
「うん?」
ルナが生まれた時の姿になっていた。
猫の着ぐるみパジャマを布団の上に脱ぎ捨てていて……下着は見当たらなかった。
どうやらこのパジャマを着ている時は身に着けていないらしい……って、そんなじっくり考察している場合じゃなくて!
「おいルナ! とりあえず服を着ろ、服を! その着ぐるみパジャマを今すぐ身に着けるんだ!」
「……え? あぁ、そういうことですか。わかりました、今すぐ身に着けます」
俺が大声を上げると、ルナはすぐさま猫の着ぐるみパジャマを手に取る。
あれ、意外にも素直に言うことを聞いたな。
なんて俺が驚いていると、。
「今日は着たままヤりたい気分なんですね」
ルナが猫の着ぐるみパジャマを身に着け、とある部分についているチャックを――
ジィィィィィ。
「ちょ、開けなくていいから! 俺はそういう意味で言ったんじゃねえ!」
「え、じゃあどやって私を犯すというんですか」
ルナが首を傾げる。だから俺はそういう行為をしたいとは一言も言ってねえよ!
「相変わらず発情しているわね、ルナ」
「むむ、ティグリスには言われたくないですね」
「まぁいいわ。それよりもちょっと二人に大事な話があるの。そこ座ってもいいかしら?」
ティグリスがルナの隣を指さす。
「あぁ、別に構わないが……大事な話って?」
「ええ。本当は話したくないけれど、そうも言っていられなくなったの」
「もしかしてティグリス」
ルナはティグリスの様子を見て即座に何かを勘付いたらしいが、俺にはさっぱりわからない。この恥じらいのない変態天使が急に真剣な顔つきに変わったことから察するに、かなり重要な話なのは間違いないだろう。
とりあえずティグリスを部屋に招き入れ、ルナの隣に座らせる。ベッドに三人は狭いから俺は椅子に座る。
そして暖房をピッとつけたところで、
「わたくし、このままだと明後日には間違いなく死ぬわ」
ティグリスがいきなり恐ろしいことを言ってきやがった。




