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契約者は侵害する!  作者: るなふぃあ
第三章 楽しい思い出……だと思いたい
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ポッキーゲームと口移し

 そして大体全員が半分ほど食べ終えたところで、俺はあることに気が付いた。

 店の雰囲気が、主に入っている客の雰囲気が、変わっているんだよ。

 どう変わったかというと、俺たちが入った時は友達同士で来た男性客や女性客ばかりだったんだ。それが今では男子&女子のペア。すなわちカップルというやつが増えている。

 だからその……なんていうかな。甘ったるい行為をしてるんだよ、そいつらが。

「…………」

 どうやらルナとティグリスも俺と同様にそのことに気付いたためか、周りにいる客のことをちらちら見たりしている。

 なんだか嫌な予感がするな、なんて思っていたところ、

「真志さん」

 ティグリスが話しかけてきた。

「な、なんだ?」

「あれ、やってみない?」

 と言いながら、ティグリスがとある方向を指さす。

 その指のさす方向を見てみると、


 カップルの二人がポッキーを双方向からかじり合っていた。


 いわゆるポッキーゲームというやつだった。二人でポッキーを挟むようにして端から食べていき、折らずにどこまで進めるのか、というのを楽しむゲーム。

 大体は恥ずかしさにより途中でポッキーを折ってしまうのだが。

 今俺たちが見ているカップルもそうだろうなあ、なんて思っていると、

「……っ!?」

 キ、キスしやがった。そのままキスしやがったぞあいつら。

 ポッキーを折ることもなく、そのまま進んで行って……ぶちゅっと。

 俺が唖然としながらそのカップルの行為を見続けていると、

「ねぇ、真志さん。あれ面白そうじゃない? やってみない?」

 ティグリスがチョコレートポッキーを口に咥えながらそんなことを言ってきやがった。

「な、何言ってんだティグリス。あれは」

「別に細かいことは良いじゃない。それよりほら、溶けちゃうから」

 くいっと口をこちらへ突き出してくる。

 ま、まてまてまて。ここは喫茶店だぞ。合コンをやるような場所じゃないんだぞ。

 俺が焦っていると、もちろんそれをルナが見逃すはずもなく。

「なっ!? それなら私も……って、ポッキー全部食べちゃったじゃないですかあああ」

「ふふっ、当然じゃない。あなたが全て食べたのを見計らってから言ったのだから」

 策士ティグリス。ナイスだ。ルナにまで強要されたら堪ったもんじゃない。

 なんて思っていると、

「くっ、それなら私は」

 パクリ。ルナがイチゴパフェをひと口。

 そして、

「……ん」

「ちょ、まさかの口移し!?」

「んー、んんー。……んんんん、んん」

「んーんー言って何言ってんのか分かんねえぞ」

 ごくり。

「ト、トノサマ。早くしてくれないと口の中で溶けて……って、飲み込んじゃったじゃないですかああああああああああ」

「ふっ、かかったな」

「謀りましたねトノサマ!?」

「それよりも真志さん。早くこっち。ん……」

「いやいやいや、ティグリスさすがにそれは」

 口移しよりは断然ましだけど、できるレベルじゃない。ポッキーゲームなんてとてもじゃないが――

「何あいつ、へたれだな……」「女子から攻められてあれはないな」「あの人はああだけど、キー君は違うよね?」「も、もちろんだ。あんなへたれじゃない」

 俺が両手を突っぱねて、ティグリスが近づいて来れないようにしていると、こちらのやり取りを見ていた周りのカップルたちがそんなことを言ってきやがった。

 ……ムカッ。

「わかったよ。やってやろうじゃねえか」

 周りから『へたれ、へたれ』なんて言われて、黙っていられるわけがない。

 俺がへたれではないことをしかと見せてやる!

「それじゃあ……ん」

「おう」

 ティグリスが咥えたまま差し出してきたポッキーの端っこを噛む。どうだ、これで俺がへたれじゃないことが分かっただろ!

 ちゃんと見たかお前ら、俺が今ティグリスとこうやって……っ。

 と、ここで漸く冷静さが戻ってきた。いや、戻ってきてしまった。し、しまった。つい自分を守るためにやっちまったじゃねえか。

 そ、それに。

「……ッ」

 ティグリスの顔が……口が、ほんの数十センチ噛み進めていくだけで接触してしまう!

 な、なんとかして早めにポッキーを折ってしまわないと。


 かじかじかじっ。


 しかし、俺の胸中を読み取れないティグリスは容赦なく噛み進めてくる。

 ちょ、ちょっと待てティグリス。あぁ、やばい。あと五センチ、四センチ、三センチ。

「そこまでです、ティグリス!」

 がばっと身を乗り出してきたルナにより――ポキッ。

『あ……』

 あと一センチというところで、ポッキーが折れてしまった。そのことに残念そうな声を上げる俺とティグリス……って、残念そうな声?

 いやいやいや、そんなことはないはずだ。むしろぎりぎりでキスをせずに済んだから安心したはず。

 でも、もしあのまま進めば――

「トノサマ! そんなにティグリスとキスしたかったんですか!? 『もしあのまま進めば』って、完全に望んでいるじゃないですか!」

「ぐっ……また俺の心を読み取りやがったな!? ルナ、お前いい加減俺の状況を悪くするのはやめ」

「そう、真志さん。そんなにわたくしとキスしたかったのね」

「ち、違うぞティグリス! 俺はそんなこと一つも思っていない!」

「またまたそんなこと言って。ほら、先ほどの続きをやりましょう?」

 そう言いながらティグリスがまたポッキーを咥える。

「いや、だからそれは」

「こうなったら仕方ありません。トノサマ……ん!」

「ちょ、ルナ!?」

 急にルナが会話に割り込んできたと思ったら――ぱくりっ。

 パフェをひと口入れ、そのまま口を突き出してきやがった!

 だ、だから口移しは無理だって!

「ルナ。おいやめろ、おいルナ――ッ!?」

 がしり。ルナに両肩をしっかり掴まれた。ルナが目を瞑り、ゆっくりと近づいてくる。

「んー……」

「ちょおいやめろ。やめろって。やめろってばルナ!」

 必死に抵抗を試みる。が、しっかりと肩を掴まれているため逃げようにも逃げられない。

 俺の右肩を押さえていたルナの左手が動き、俺の顎を掴んだ。それにより強制的に正面を向かされる。

 そしてそのまま、

「んー……」

「ちょやめ、お願いだからやめ――ッ!?」

 ルナの顔がゆっくり、ゆっくりと近づいてきて――――――――

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