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契約者は侵害する!  作者: るなふぃあ
第三章 楽しい思い出……だと思いたい
12/34

作戦

 今日は月曜日。先週までだったらいつものように学校へ行って授業を受けるのだが、今日から二週間ちょっとはその必要がない。というのも、先週の金曜日から俺と唯奈の通っている中高一貫の学校が冬休みに突入したからだ。

 そのおかげで学校の授業に出なければならないから、記憶を取り戻すための時間がないなんてことはない。

「ルナ、ティグリス。今日やることは決まったか?」

 そして現在時刻は午前九時、俺の部屋にて。

 朝食を食べてから、ルナとティグリスにこれからやっていくべきことを決めてもらうことにした。あれやこれやと一時間近く話し込んでいたが、ちゃんと決まったのだろうか。

「ええ、決まったわよ。ルナ、それを真志さんに」

「はい。二十六日までにこのリストに書いたことを全てやり遂げましょう」

 ティグリスに言われてルナがルーズリーフを一枚俺に手渡してくる。

 どれどれ……


 ① 議題系小説を作ること。(短編)

  ※ そのためにテーマを一つ挙げて議論し合うこと。

  → 天国での任務のことはこれで思い出せるはず。


 ② チェスと将棋をすること。

  ※ チェスは私とトノサマでペアを組み、ティグリスと唯奈さんのペアと戦うこと。

    将棋は私とトノサマの一対一。

  → 地獄での出来事、下級悪魔との出来事が思い出せるはず。


 ③ ゾンビに襲われること。もしくはそれに似た恐怖を味わうこと。

  ※ 本当に怖ろしいと感じなければならない。

  → 地獄で私と出会った時のことが思い出せるかも。


 ④ 女に性転換すること。

  ※ コスプレで女の子風になるだけじゃダメ。

    本当の女の子にならなければ意味がない。

    もちろん、ニューハーフもダメ。

  → 地獄の王――シリカさんとの出来事が思い出せるはず。


 ⑤ ティグリスに半殺しにされること。

  ※ 大けがをしなければ意味がない。

    ティグリスの魔法で腹部に穴をあけてもらうといいかも。

  → ティグリスのことをしっかりと思い出せるはず。


 ⑥ えっちぃことをする。

  ※ 相手はもちろん私。

    その後ティグリスにも加わってもらう。

  → これで夜の魔王が復活するはず。

                                      

                                    以上


「ちょっとまてやああああああああああああああああああああああああああああああ」

 なんなんだ、何なんだいったいこれは。

「二つ目までは理解できる。いや、三つ目も実際に襲われる必要がないのなら何とかなるはずだ。だが四つ目以降はどういうことだ! 不可能じゃねえか!」

 俺が喚き散らすとルナが手を横に振った。

「いえいえ、トノサマ。そんなことはありませんよ。確かに四つ目はシリカさんがいないとできませんが……残り二つは可能です」

「どこがだよどこが! おまえ五つ目なんて俺死ぬじゃねえか! 腹に穴開けるんだぞ、腹に穴。痛いじゃ済まねえぞこれは!」

 これに対してはティグリスが答える。

「大丈夫よ、真志さん。ルナが生命維持の魔法を扱うから死ぬことはないわ。それでも恐怖をきちんと味わってもらわないといけないから、痛みだけは感じられるようにしてもらうけど」

「それのどこが大丈夫なんだよ! 痛みを感じるってことは、うっかり転んで膝を擦り剥いたとかそういうレベルじゃねえからな!?」

「トノサマ、チキンですね」「真志さん、それはチキンすぎよ」

「チキンとかいうレベルじゃねえええええええええ!」

 俺が叫ぶと、ルナが困ったような顔をした。

「むー、仕方ないですね。とりあえず四つ目と五つ目は保留にしておくとして……あっ、でも最後のは大丈夫ですよね?」

「どこがだよ、どこが! これも問題ありまくりだ、却下だ却下!」

「むむ、トノサマがすごく後ろ向きです」

「そうね、もっと前向きに考えてもらわないと困るわ。それに真志さん」

 ルナの言葉に頷いたティグリスがピンと人差し指を立てた。

「な、なんだよ」

「実際にこの六つの項目から思い出せることはどれも重要なことよ。これらのことすべてを思い出さないと……契約が解除され、任務が失敗することになるわ。もしそうなってしまったら、あなたは後悔しないの?」

「ぅ……」

 後悔しないわけがない。

 契約が解除され任務が失敗するだけでなく、ルナやティグリス、天国や地獄での出来事を思い出せないまま終わればきっと後悔する。それだけは間違いない。

 でも、

「せめてやり方を考え直してくれ。頼むからもう少し難易度を低めにしてくれ。実際、今思い出せていることはそんなに難しいことはしなかったはずだ。カレーの話なんてただ食べただけだし、着ぐるみパジャマにしてもルナが着ているのを見ただけだ。そこまで実際に起こった出来事に近づけなくても思い出せるはずなんだ」

「んー、わかったわ。四つ目以降に関しては思い出す方法を考え直してみるわ」

「仕様がないですね、トノサマがそういうのでしたら考え直しますよ」

 どうやら俺の必死な説得に二人は納得してくれたようだ。

 これでいくらかは難易度が低くなるだろう。さすがにこのルーズリーフに書かれた内容をそのまま実行するのは問題がありすぎる。

「とりあえず、なんだ。せっかく考えてくれたんだからできるやつから実行していこうか」

「そうね、また考え直していたら時間がかかってしまうわ」

「ティグリスの言う通りです。それじゃあトノサマ。初めにどれをしますか?」

「そうだなぁ……」

 ルナに問われて俺はルーズリーフに再度目を落とす。

 今できそうなことと言えば、初めに書かれてあるチェスや将棋をやること、二番目に書かれてある議論し合って短編小説を作ること。そして三番目のゾンビに襲われるような体験をすることだ。

 三番目のやつは実際に襲われる必要がないわけだから、それに似た体験、いわゆるゾンビ映画などを見ればいいだろう。

 思い出すべき項目は全部で六つ。となると、なるべく時間のかからないものから順に終わらせていく方がいいよな。

「それじゃあ初めにチェスと将棋をやってしまおう。その後にこのゾンビのやつだ。ちょうど今そういう系の映画が近くの映画館で上映されていたはず」

「わかりました。じゃあまずはチェスからですね。ところでトノサマ。チェスや将棋のセットは家にあるんですか?」

「あ、そういえば……両方ともないな」

 ということは買いに行かなければならないだろう。もしくは、そういうのをやっている店でも行けばいいのかもしれないが――

 今時あるのかなぁ、そんな店。

「さすがにないと思いますよ」

 俺の胸中を読み取ったルナがすかさず答える。だよなあ。あるわけないよなそんな店。

「ネットでわざわざ調べるのも面倒だし。じゃあ近場のおもちゃ屋さんで買うとしよう」

 それにチェスや将棋のセットが家に遭っても困ることはないしな。

 と、俺が立ち上がろうとしたところで、ティグリスが一つ提案した。

「それなら買い物をするついでに映画を先に見てしまってはどうかしら」

 なるほど。それの方が効率はいいよな。

「それじゃあそうしようか。行ったり来たりするのも面倒だし。そうと決まれば早速映画を見に行こうか。その後買い物をして家に戻ってきてチェスと将棋だ」

 よし、これで今日の予定は決まったな。なるべく早く買い物を済ませて今日中にできる限りのことをやっておきたいところだ。あの後半の項目に対しては考え直さないといけないだろうし。

 異論はないらしく、ルナとティグリスが頷いた。

「分かりました。今日はそれで行きましょう」

「そうね。それじゃあ外出する準備をしないといけないわね。ちなみに上映時間は?」

「ちょっと今はわかんないな。この後すぐに調べておくよ。その時間に合わせて家を出ようか」

「わかったわ」

「了解ですっ。それじゃあ準備をしてきますね」

 と言って、ルナが先に部屋を出て準備をしに行く。

「後で時間を教えてちょうだい。わたくしも借りている部屋に行って準備をしてくるから」

「おう、わかった」

 ティグリスもそう言った後、俺の部屋を出ていった。


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