幼女の寝顔
「なぁ、なんで女子校から離れるんだ?」
少し後ろを歩くルリカに尋ねる。
俺はあの女子校で裸の女子高生達とイチャイチャするはずだった。
それだから、此処に来た。
それなのに何故、鬱蒼とした森を歩き続けているんだろうか。
こんな森には女子高生どころか、人間の気配すら全くない。
もしこの先、生物に出会ったとしても、それはきっと異世界らしい不気味な生物だろう。
「なんでって…。あ、もしかして不安になられたのですか?」
顔をこちらに向けたルリカは、首を少し横にたおす。
「あぁ。」
もしかしたらこのゲームは森の中で不気味な生物や獣にヤられるエロゲーだったのかもしれない。
ルリカについてはなにからなにまで知っている自信があるが、
内容にはあまり興味がなかったせいであまり調べていなかった。
ただ、ゲームパックに女子校が描かれているからと、
すっかり女子校でハーレムという王道パターンかと決めつけていた。
「大丈夫です、勇者様なら。だって勇者様ですから。」
そう言って俺の両手を包み込み、真っ直ぐな目で見つめてくる。
さっきとはまるで別人のルリカ。しかしこの変化にもそろそろ慣れてきた。
ルリカがこのキャラになったのは約26分前。
例の女子高生に、例の貼り付けた笑顔で見送られ、
女子校の校門をくぐった時。
脳内に響く声がした。若い男性のような声だった。
きっと世間一般にイケボと呼ばれる声だろう。
『START!』
その声が、これまたとても良い発音でそう言った。
ただ、先程にも言ったが脳内で、だ。
脳に直接響くような…。
今までに体験したことがない感覚だから上手く説明できないが、
例えるならばひどい頭痛の時、
脳を直接トンカチかなんかで殴られたような感じがしないだろうか?
そのトンカチが声になった、まぁそんな感じ。
そして、トンカチ頭痛よりもずっと痛い。
俺もさっき声がしたときはしゃがみこんで、頭を抱えていた。
ルリカの変化はその時。
START、が聞こえた瞬間、今まで俺よりも前を歩いていたルリカはさっと後ろに下がった。
そして、歩き方も内股気味。
不満そうに下がっていた口角も上がり、優しい微笑をたたえる。
───そう、俺がよく知っている「ゲームのルリカ」だった。
考えごとをして歩いていたのがいけなかったらしい。
足が何かに引っかかる。
「……あぶねっ」
躓き、前のめりになった姿勢を慌てて立て直す。
何かが落ちていた。いや、正確には寝ていた。
ソレを一言で言うならば……幼女。
花柄のワンピース。緑色のスニーカーに白い靴下。
みるからに柔らかそうな茶色いウェーブした髪の毛。
血色のよい真っ赤な唇。小さな鼻。ふさふさの睫毛。
俺は決してロリコンではない、ロリコンではない…が…。
可愛ええええええええええ!!!
ハスハスしたいペロペロしたいハムハムしてぇぇぇ!!!
二次元にきて良かったああああ!!!
無意識に頬が緩んでいたのだろうか。
いつの間にか隣に来ていたルリカは顔を輝かす俺を見、そして安らかに眠る幼女を見て、少し俯き悔しそうに顔を歪めた。
でも、それは一瞬のことで。
顔をあげたルリカは、いつもの完璧な優しい微笑みだった。
「可愛いらしい女の子ですね。」
そう言いつつ手をのばすと、その幼女の柔らかそうな髪を撫でる。
おい、俺よりも先に幼女に触れるなあああ!
「なぁ、一緒に連れてってもいい?」
妬みの意を込めてルリカを睨みながら、そう尋ねる。
きっとこの幼女は森で遊んでいる内に迷子になって、そしてそのまま疲れて眠ってしまったのであろう。
周りをぐるりと見渡してみたが、あるのは見飽きた木、木、木……。
幼女の家や親などは見当たらない。
このままでは早かれ遅かれ、一人寂しく死んでしまうに違いない。
こんな可愛い子を死なすわけにはいかない。
……もっとも、この幼女と一緒にいたいという願望もないこともないが。
「勇者様がそう言うのであれば、仕方ありませんよね…」
肩をおとしつつも、そう言ったルリカ。
その答えに安堵しつつ、一刻も早くこの得たいもしれない地面から離したくて、
安らかな寝顔を壊さぬよう、そっと、でも素早く、幼女の首の後ろと膝裏に腕を通して抱き上げる。
俗にいう、お姫様抱っこというやつだ。
その姿をルリカが傷ついた瞳で見ていたなんて知る由もない俺は、
足取り軽く元の道を再び歩き出した。
はらはらと落ちてくる木の葉が、祝福する薔薇の花のようで。
赤くなりかけた太陽が、情熱的な俺の心を表しているようで。
そんな柄にもないことを考えて、一人で恥ずかしくなる。
「よいしょっと。」
照れ隠しのためもあって、幼女を抱え直した。
それからしばらくして、赤かった夕陽が顔の半分を隠した時。
「………!!」
やっと森が終着点を教えた。
そして視界に入るその場所は……………見慣れた街だった。
昔、俺が遊んだ街。
俺が、育った街。
そして、俺が生まれた街。
今にも消えそうな電灯が細々と照らす、人に踏まれて出来た雑草の横たわる道。
みーん…みーん…と寝遅れた蝉の独唱。
草と土の匂いを運ぶ、頬を掠める優しい風。
文字数の変動が大きくてすいません。
近いうちに統一する予定ですので、もう少々お待ちを。
更新を待っていてくださった方、本当にありがとうございます…!
私生活の方も余裕が出てきたので、更新スピードあげられると思います。
それでは、今日はこの辺で。
貴重なお時間をありがとうございます。