始まり
世の中の大抵の男は
「パンチラ写真ゲットした!」「ポロリ!乳首ポロリ!」とか、
そんなことに興奮している。
もちろん、俺もパンチラやポロリは好きだ。
見えるか見えないか、ぎりぎりの長さのスカートを期待のこもる視線で見つめて。
風が味方してくれた日なんかは思わずガッツポーズがでる。
ポロリも、本人は気付いていなくて平然としているのをよそ目に
速まる鼓動を抑えつつ、盗み見る。
まぁ、個人的に水着のワンピースからのチラリやポロリが一番好きなのだが。
そんなことはどうでも良くて。
問題はその子の顔、だ。
何気なく前方に回り、
被害者(?)の女の子の顔を見てみれば。
萎える。萌える要素が消え失せる。
女なんか、顔で全てが決まる。
それが俺の考え方。
しかし、残念だが今まで「顔が合格レベル」な女に出会えたことはない。
もちろん、世間一般的にみれば美人だという女は結構いる。
そして俺のハードルが高いわけではない。
俺が求める"可愛い"は、ケバい化粧とかじゃなくて
純情で巨乳で──。
ま、まあとにかく、
気が付けば25年間、彼女なし、セックス経験なし、
そんな残念な男が出来上がっていたわけである。
「あー、めんどくせぇ」
明日から始まる平日を考えると憂鬱になる日曜日。
ただ真彦の場合は明日からの仕事や学校なんてあるわけではなく、
これが通常運転なのだが。
そして薄暗く最低限のものしか置いていない部屋が橙色に染まり始める、16時。
とある目的の為、パソコン前の定位置からトイレ以外には久しぶりに腰をあげ、
のそのそと外へ出掛ける準備を整える。
鼓動だけはこのあとの期待に忙しなく動くが、
いつもの口癖を漏らしつつ、一時間かけて洋服を着る。
だからといって洒落ているわけでは決してない。一つ一つの行動が遅いだけ。
灰色のパーカーに、色落ちしたジーンズ。
だか、それも165センチな上に童顔な彼が着ると様になってしまったりする。
それ故、ボサボサな髪を丁寧に整えればある程度のイケメンになるというのに、
全く興味のない彼はその髪を手で整えつつ、玄関を勢いよく開け……ようとした。
ーガコッ
「うわあああああんっ! いったあああああああい!! 」
閑静な住宅街につんざくような悲鳴が響きわたる。
「……うるせ」
扉の前でしゃがみこんで痛みで悶える女を無視してそのまま強引に開ける。
大体、なんで扉の前にいるんだよ。
「マサくんのばあああか! 」
そう、額を抑えながら涙目で睨んでくるが
不思議なことにそこに可愛さなんて全くないコイツは残念ながら幼馴染だったりする。
「だから、その呼び方やめろって言ってんだろ…」
そうぼやきつつ、邪魔だ、と手で追いやってみるが、微動だにせず。
「えー! だってマサくんだって私のこと、名前で呼んでくれないじゃん! 」
後ろに無造作に縛られたポニーテールを揺らしながらそう言う。
一々、声がデカい。加えてオーバーリアクション。
「それとこれとは別問題だ」
「どこがよ!? 」
「はぁ、もういいからそこからどけ。」
俺には行かなければならない所があるっつうのに全く……。
──もうちょっと待っててね、愛しいルリカ。
「やだ、マサくんが呼んでくれない限りどかない」
……まだ居たのかよ、コイツは。
学校ではバスケ部のエースで、時々見せるこういう拗ねた姿に
頬を赤らめる男子生徒も少なくない。
俺には全くもって、その気持ちがわからないが。
あーあ、なんでこんなに道のりは長いんだ。
一つ深呼吸して、目の前のこの女をルリカだと思い込む。
「後ろから抱きしめたい。だからちょっと通してくれ、咲…。」
顔を紅潮させぼーっとしている咲を、もちろん抱きしめたりなんかせずに
その場に放置して目的地へと急ぐ。
いや別に急がなくてもいいのだが、ルリカがこれからずっと家にいる未来を想像すると、
自然にその足どりは軽くなる。
三次元には可愛い子がいないと悟った俺だが、
二次元には合格ラインを悠々と越す女の子が沢山いる。
今日は25歳の誕生日だ。
普通の家に生まれ、普通の顔を持ち、普通の友達関係をつくり、
普通の大学へ入り、普通の会社に勤めている。
そんな平凡すぎて特に大きな悩みもなくこれからの目標もない故に
これといった趣味も特技もない。
俺には唯一毎日欠かさずやることがある 。
それがエロゲー。
高校の卒業式の帰りに、緊張しつつ買ったエロゲー「巨乳のお姉さん」。
それから約7年。
買い集めたエロゲーは約180本。一ヶ月に2本ぐらいづつ。
しかし、攻略するのなんてどんなゲームでも3日あれば十分だ。
そんな中、最近俺が一目惚れしたキャラがルリカ。
俺の要求に対して、ルリカのツインテールにされた髪は
決して横に振られることはなく、全て縦に振られる。
エロゲの中で、顏を赤らめながらも純情に従い、
その上スタイルも良く巨乳な彼女は
他のどのキャラよりも俺の目を惹きつけた。
はじめまして、茶宮 月姫です。
模索しながらの連載になるかと思いますがお付き合いいただけると幸いです。
感想、評価などしていただけたらとても嬉しいです(*´ω`*)