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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
8/30

出会いと受難

ガイアに慰められながら教室に入りレイルは自分の机の前に知らない女子がいることを発見した。


「・・・ガイア。俺悪い事したかな?」

「何でそう思う」

「だって・・・あんな・・・後ろから見てて怒ってるってわかる女性は中々いないよ」

「ああ、そうだな。俺もそうおもう」

「悪いガイア。俺、お腹痛くなってきた。医務室行く」


教室の出口へ方向転換し医務室へ行こうと走り出した。


「待て、レイル」


しかし、ガイアによってその目論見は阻まれた。


「ガイア、俺は今(仮想現実内の俺の)腹が痛いんだ」


そんなレイルの発言にガイアは柔らかな表情でレイルを諭す。


「レイル。お前は明日を掴むんだろう?こんなところで逃げていちゃいけない。お前にはすでに現実の苦しみを味わっただろう?いいのか、そこから逃げて?お前は一生いまと同じようになってしまうぞ。大丈夫だ。お前は何も悪いことをしていないんだろ。だったら、いいじゃないか。正々堂々と自分の席に行け。胸を晴れる人生を歩むんだ」

「そうか!そうだな。分かったガイア。俺は行くよ」

「ああ、行って来い!」


ガイアの言葉に後押しされ、レイルは自分の席に行き、怒っている女子を無視し席に座る。


しかし席に座った瞬間


「あなたがレイル=スコール?こんな情けない顔のやつに私は負けたの!腹立つわね!」

「・・・・誰?」

「私を知らないの?あなた、自分さえよければいいのね!」


いきなりの怒声に意気揚々としていたレイルの心はみるみるしぼんでいく。


(ガイア!助けてくれ!こいつの話が分からない!)


女の話が分からず、とにかくガイアに助けを求めたレイル。

しかし、ガイアはガッツポーズで


(明日を掴め!)


と返事をしてその場を全速力で離れていった。


(・・・今の状況でもう明日を掴めと?明日を掴めというのはあきらめろということなのか?それじゃあ、今までの慰めはすべてあきらめろって事だったのか・・・)


ガイアの言葉の意味が分かり、ふつふつと怒りがこみ上げるレイル。


(ガイア。お前は俺のピュアなハートに傷をつけたな・・・この報いは必ずうけさせる)


目の前で自分にガミガミ言う女を無視し心の中で決意するレイル。

そんな態度が気に入らないのか女はさらに怒っていた。


「ちょっとあんた聞いてるの!こっち見なさい!」

「うるさいな。今はすこし黙ってろ。俺はあいつに・・・」

「っ!なんですって!あなた私の事知らないの!」

「知らんな」

「私は麒麟機巧4家のガーナス機巧の次期当主なのよ!それをあなた!こっちの顔も見ないで!」

「次期当主?」


女の声に反応しレイルはガミガミ言う女の顔を見た。

肩まで伸ばしている髪に透けるような緑色の瞳がレイルの視界に映る。レイルはその顔に見覚えがあった。


「・・・あれ?リステリア?」


突然名前を呼ばれた女は驚きピタッと口を閉ざしレイルを観察する。そして、レイルの顔を見てさらに驚き声を上げる。


「・・・あれ!レンティア!」

「その名前は止めて!てか、お前なんで俺に対して怒ってんの?」


レイルの質問に対しリステリアは胸を張り言った。


「だって!私より魔術論理が同じなのよ。悔しいじゃない!」


そんなリステリアにレイルは懐かしさを感じ取っていた。


「・・・変わんないなリステリアは。あ、そっかリステリアってここの生徒か!ははは、すっかり名前まで忘れてた」

「なによそれ!ひどいじゃない!」

「会ったのが2年前だっけ?すこしは新魔術なんか開発したの?」

「あなたみたいに、いくつも短期間に作れるはずないでしょう!」

「それもそうだな。・・・リステリア、それより君に言っておかなきゃならないことがあるんだ」

「なに?」

「俺、いまな、レイルって名前でこの学園いるの。だから、学園内の時はレイルでよろしく」

「そうなの?わかった」


リステリアは素直に返事をした。そんなリステリアと何か会話が出来ないかとレイルは話を変えた。


「ありがとうな・・・そうだ!そういえば、魔術理論はリステリアが上なんだっけ、おめでとう」


レイルはリステリア感嘆の念を込めて言ったがリステリアは首をかしげた。


「何を言っているの?あなたのほうが上じゃないレンティ・・・レイル」

「だって、ガイアがアレは教師のミスだって」

「教師のミス?何言っているの?そんなのあるはずないじゃない」

「はっ?そうなの?・・・・ガイアめ!1度ならず2度までも」


レイルはガイアに対する恨みが2倍になったように感じた。


「何を言っているのかはよく分からないけど、レンティ・・・レイルあなた新入生歓迎会どうするの?」

「新入生歓迎会?何それ?」

「知らないの?」

「まったく」

「あさってに行われる新入生を迎える儀式みたいなもの。生徒会長が直々に1年勢の仲から1人選んで生徒会からランダムで選ばれた人と戦うのよ。まあ、儀式はそれだけでその後は歌ったり踊ったりの舞踏会みたいになるわ」

「そんなのがあったのか・・・選ばれた人は気の毒だな」

「ええ」

「でも会長はどうやって人を選ぶんだ?弱すぎるやつとかじゃ話にならないだろ?」

「何を言っているの。そのためのミンティアレースじゃない。会長はこのレースで誰にするか決めるの。生徒会の人以外で」

「ふーん。そうなんだ」


レイルは興味なさげに返事をする。


「そうなのよ。それじゃレンティアそろそろ行くわ」

「その呼び方は止めてくれ」

「呼びにくいからやっぱり嫌。慣れてるこっちで呼ぶわ」

「ハァ・・・好きにしろ」

「そう?じゃあねレンティア」


そういってリステリアと分かれた。

レイルはその日のツキの護衛を終えて寮に帰った。










次の日の昼頃、ガイアに報復を終えたレイルは顔が2倍に膨れたガイアと昼食を食堂で食べていた時、レイルは呼び出しを食らう。


「なんだろうな?ガイアをこんなのにしたの、ばれたかな?」

「当たり前だ。こんなに顔が変わっているんだ。誰でも気づく。朝だって、俺を見た教師たちは、俺を避けていたぞ」


ガイアの言葉を軽く無視しレイルは呼び出し場所の校舎の屋上に来た。


「なんだろうな?まさか、告白とか?いや、校内放送を使ってるんだしそんなことはないだろ」


レイルが自分で思い出せる範囲の校内での悪行を思い出している最中、後ろから声をかけられた。


「・・・あなたに決まったわよ」


レイルは振り返って声の主を見た。


「何が決まったんだ?ツキ」

「馴れ馴れしくその名を呼ばないで、その名を呼んでいいのはあなたじゃない」

「それはすいません。で、何が決まったの?」

「新入生歓迎会の犠牲者」

「犠牲者?」

「そう犠牲者よ」

「その犠牲者に俺が?」

「そうよ」


犠牲者になった理由を必死で探すが思いつかないレイルは仕方なく理由を聞くことにした。


「理由を聞いても?」

「会長は最後にあなたが使った魔術に興味があるみたいね。あと、その麒麟機巧とか」


その解答にレイルの顔は引きつる。


「・・・明日だっけ?」

「そう、明日の午前中にあるわ」

「相手は?」


レイルはせめて弱い相手などと思い相手の名前を聞いた。


「喜びなさい」


冷酷な笑顔でツキは言う。


「会長よ」


ツキの言葉にレイルは絶望を味わった気分になった。


(・・・あんまし目立つのはまずいな。ミンティアレースとかなら別によかったんだけれどな。大衆の目に付く歓迎会とはな。きっとなんかの間違いだろう。しかし、万が一もあるし・・・明日は休むか)


絶望からの逃避として心の中で明日は休むことにしたレイル。


「・・・あなた、休む気?」

「ははは・・・バレた?」


しかし、その考えはツキにバレバレだった。ツキはそんなレイルを見て後ろの方に声をかける。


「・・・・会長。やはり私では無理です。ご自身で説得してください」

「やっぱり無理だった?」


レイルは声のした屋上入り口のほうを見た。

するとそこには女性の生徒が立っていた。髪は長く凛としてレイルの顔を見ていた。


「こんにちは、レイル君。会長のコナミ=トウジョウよ」

「・・・俺は明日休むことにしました。なので、自己紹介は不要ですよ」

「あらら、そうなの?そう、じゃあ仕方ないわね。でも、もう少しお話しましょう?もしかしたら考えが変わるかも知れませんよ?」

「俺は断固として歓迎会には出席しない」

「う~ん。ツキちゃん、すこし屋上の入り口で待っててくれる?」

「はい。わかりました」


会長の言葉でその場から離れるツキ。


「さあ、これで2人きりね。存分にお話しましょうか」

「俺は明日出る気はありません」

「強情ね。そんなこと言ってると、あのことツキちゃんに言っちゃうぞ」


レイルはなにを言われても問題ないと判断し毅然とした態度でいた。


「何を言われても平気です」

「そう?じゃあ、レイル君はツキちゃんのこと護衛してるってことツキちゃんに言うね」


しかし、むなしいかな。会長の言葉でレイルの態度は毅然としたものからすぐさま慌てたものとなった。


「すいません、待って下さい。どこでそのことを?」

「秘密☆」

「トウジョウ家の情報網で調べましたね・・・卑怯だ」

「卑怯で結構。それで、明日参加してくれますか?」

「・・・・」

せめてもの抵抗として黙秘するレイル。


「ちなみに参加しないと、この事ツキちゃんに言います」


しかし、そんなものは会長の前では効果がなかった。


「くっ!卑怯者!」

「ふふふ。参加するの?しないの?」

「参加・・・します」


あきらめた表情で返事を返すレイル。


「よろしい!いい判断よ」

「確か歓迎会の儀式は勝敗関係ないんですよね?」

「ええ、そうよ。でも、手加減したらだめよ?麒麟機巧の武器ひとつだけだと、お姉さん満足しないぞ☆」

「・・・麒麟機巧まで使えと?」

「もちろん!全力の相手と勝負するのがこの歓迎会なのよ?」

「・・・そうですか」

「それじゃ、明日楽しみにしてるからね!じゃあね」


レイルを残し満足した顔でその場を去るコナミ。残されたレイルは一言


「リステリアに調整手伝ってもらうか・・・」


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