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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
26/30

苦悩のガイア

リリアはレイルに協力することを了承した。

しかし、リリアはレイルがレンである時のみに有効という条件をつけた。

レイルも自分の正体がレンであることをツキに話さないことを条件とした。

その後レイルは計画の概要をリリアに話し解散した。


(あと1人誰か協力者が必要だな。リステリアに戦闘能力は無いし、弱い奴も困る。場数を経験している誰かが…やっぱりガイアが必要か)


レイルはガイアの協力を得るために再度ガイアに接触した。


「ガイア!頼む!お前しかいないんだ!」

「その話は断っただろう。すまないが無理なんだよ」

「そこを何とか!」


無理を押し通そうとレイルは必死にガイアに食い下がる。


「少しは察してくれ!俺だってな…くっ!」


ガイアは強く否定の言葉を残しレイルの前から逃げるように消えた。


「…やはり、あの表情。家の事情とはいえあんな顔はするものなのか?…調べてみるか」


レイルは何か個人記録の載っているものが無いのかをリリアに聞いたところ。


「レイルさん。あなたはそんなものを何に使うんですか?」

「ガイアっていう男のことについて調べたいんだよ。ダメかな?」

「…ガイアですか。あの人に協力を求めようと?無理だと思いますが・・・」

「ん、なんか知ってるのかいリリアちゃん?」

「…これは話してもいいのでしょうか?う~ん」


悩みながらリリアは唸っていた。


「リリアちゃん少しでも良いから今は情報が欲しいんだ。少しでいい、教えてくれないかな?」

「う~ん…では、2つだけガイアに関する手がかりを教えます。まず、ガイア=クライシスという名前は本当ではありません。そして、ガイアの姉を除いた家族は既にこの世には存在していません」

「それは…」

「私が言えるのはここまでです。後はガイアの姉について調べるのをお勧めします。では失礼しますね。あ、レイルさん。個人情報の載っているものなら生徒会にありますけど偽装ばっかりですから当てにしない方が良いですよ」


リリアはレイルにその情報を与えて去っていく。

レイルは情報を検証し始めた。


(はは、リリアちゃんは優しいな。さて、ガイアの家族は存在しない…ガイアの本名は他にある。しかし、ガイアは複雑な家庭事情で俺に協力できないといっている。そして、あの苦渋に満ちた表情、情報がもう少し欲しいな)


レイルは更なる情報を求め教職員の持つ個人記録データの存在を思い出した。

この学園に入学する前にシンの資料で見た記憶があった。


(あれは確か一つの記録魔術に一括で保存してあるんだったかな。じゃあその魔術に鑑賞すればガイアの個人情報が少しは分かるか?確か記録魔術は永久的に魔力を供給しなければいけないから大量の魔力を込めた魔力石が必要なはず、それに生徒などに絶対に触れられない場所にあるはず。ならば、職員室か?いや、情報を悪用しない教師ばかりではない。悪用するような奴もいるはずだ。ならば、あの校長からある程度信用のある教師をsがセ倍いのか?…時間がかかりすぎるな、もっと効率よく探す方法はないか?魔力探査機なんかあれば良いのに。リステリアに無いか聞いてみようかな?まあ、多分無いだろうけど)


レイルは半分期待してリステリアのいる研究所を訪ねた。


「お~い、リステリア!急にすまないな。どうしても欲しいものがあって」

リステリアは飛行術式の詠唱短縮と持続の問題の解消に頭を悩ませていた。そこに、レイルが無理やり時間を入れ込んだためにリステリアはややご機嫌斜めであった。


「欲しいもの?」

「ああ。あのな…すまん、そんなに嫌そうな顔をしないでくれ。お前が忙しいのは分かってるから」

「別に嫌な顔なんてしてないわよ。ただ、面倒なことなんだろうなと思っただけ」

「それは裏を返せば嫌だということだろうが。まあ、お願いを簡単に言うと魔力を探知できるような物ってない?できれば、持ち運びができるようなやつ」


レイルの頼みにリステリアの反応は冷ややかなものだった。


「そんな便利なもの何て無いわよ」


そっけない返事を返し、すぐさま自分の研究に戻ろうとするリステリア。

レイルはそんなリステリアに必死で食い下がった。


「リステリア!頼む!探知機みたいなのどこかにないか?情報だけでもいいから!頼むよ」


レイルの執拗な食い下がりにリステリアはだんだん怒りがこみ上げる。


「ああ、もう!レンティア!私、寝てなくて少し感情が不安定なの!探知機なら多分ミリヤ先輩の方が知ってると思うわ。多分、研究所のどっかにいるはずよ。詳しいことはあの人に聞いて」


そう言ってリステリアは自分の研究に没頭し始めた。

レイルは礼を言いミリヤを探しはじめる。


レイルは実験棟の2階、多目的ホールにてミリヤを見つけた。


「ようやく見つけましたよ」

「レ、レイル君!?ど、どうしたのかな?」


声をかけられたミリヤは挙動不審な態度でレイルの方を向いた。


「ミリヤさんどうかしたんですか?あれ、今隠したそれはなんですか?」

「え、いやあの…なんでもないわよ!うん、何でもないわ!ところで、何の用事かしらレイル君?」

「あ、そうでした。ミリヤさん、魔力の探知ができるような物ってなんかありませんか?」

「魔力の探知!?」


レイルの言葉にミリヤは内心冷や汗を流していた。


(魔力の探知機って私が今後ろに隠してるものじゃない!もしかして、レイル君もあの氷魔術の結晶を狙ってるの!?それに、何で私に魔力探知機の事を聞いてくるのよ!誰にも探知機のことは話してなかったのに~!)


無言になってしまったミリヤを見てレイルはないのだと判断した。


「ミリヤさんもダメか。やっぱり、そんなものなんて無いのか」


(レイル君はいったいなにを探しているの!?)


ミリヤは危機感を抱きながらレイルが探しているものを確認するために聞いてみた。


「レイル君はその探知機があったら何をするの?探し物?」

「ええ、少しばかり言えないような物を探していて」


(言えない様な物!?やっぱり、氷魔術の欠片!?)


ミリヤの気持ちに闘争心が湧いてきた時、レイルが言葉を続けた。


「でも、それは魔力の塊で探すのが難しくて…ああ、探知機あれば楽なのに」


(やっぱり!)


ミリヤは魔力の塊を氷魔術の欠片と断定。そして、強い競争心と独占欲が働いた。


(レイル君よりも早く先に手に入れなくちゃ!)


そう心に決意した時、隠してあった探知機に手が触れた。


「あっ!」


重そうな物体がミリヤの後ろで自由落下をはじめる。

ミリヤにそれを止める手段は無く、探知機は床に落ちた。


(しまったあぁぁぁ!)


ミリヤの心の中で大絶叫が響き渡る。


「ん?何か落ちましたよ?これ重いな」


レイルが落ちて転がってきたものを手に取りミリヤに渡そうとしたが、ミリヤは放心状態であった。


(うぅ、まさかライバルに対してこんな失態を晒すなんて、私ってダメ人な間じゃない・・・)


「ミリヤさん?あの、これどうすれば?結構重いんですけど、これなんですか?」


レイルは自失呆然のミリヤの目の前で手に持っている物を検分しはじめた。

すると、機械の下の方にラベルが張ってあるのを見つけた。


「魔力探知機・試作01 実験調査用?…ミリヤさん。これは?」

「えーと、あのね。それまだ試作品だから、あの、まだ範囲もそんなになくて…」


歯切れ悪く実用性の皆無を伝えようとしたがレイルは満面の笑顔でそれを聞いていた。


「ミリヤさん!これ貸してください!」


説明の途中でいきなり深々と頭を下げて頼み込んだレイル。しかし、


「それはダメ!」


ミリヤの強い否定で返された。


「え!なんで!?あ、俺これのモニターやりますよ!だから貸してください!」

必死の形相で切迫した状況を伝えようとしたレイルだが、ミリヤは頑なに貸し出しを拒否した。


「モニターは必要ないから!とにかくダメ!これであの欠片をあなたに見つけられたら、きっと、私は!」


ミリヤは暗黒の未来への扉が開いたような気がした。

レイルに貸し出し自分よりも先に氷魔術の欠片を持っていかれる絶望が待つ未来。

それはミリヤにとってレンティアに届く道しるべを失うようなものだった。

心の半分が自分の悲観すべき未来を想像したとき、憎き対象であるレイルが口を開いた。


「欠片?何を言ってんですか?」

「えっ?」


予期せぬ言葉にミリヤの頭は真っ白になる。

空っぽになった頭の中にこの後レイルが言った言葉が入っていく。


「俺が探してるのは巨大な魔力の塊ですよ。欠片なんて求めていません」


ミリヤの思考は再始動し、レイルの言葉を噛み砕いて解釈していく。

レイルの言葉の意味が理解できていくうちにミリヤに安堵の表情が宿った。


「そうなの?…良かった~」

「何かと勘違いしてたみたいですね。では、これは借りても良いですか?」

「何を探すかを明白にするならね」

「・・・」


ミリヤは興味本位からレイルの探し物について聞いてみた。

レイルは黙ったが仕方がないと考え探しものの事を言った。


「この学校の魔術であろう記憶代演算魔術、通称で言うと光術〈業〉ですよ」

「それって、個人記録が入っているやつ?」

「そうです。場所知っているんですか?」

「場所は知らないけど、確か待機状態から起動するには特定のパターンの魔力が必要だったはずだったかな?あ、あとそれ起動してるところ見つかれば退学よ」

「それは分かってますよ。さすがに起動まではしませんよ」

「そう。それなら貸してあげるわ」


レイルは探知機の使い方を教えてもらい、そのまま魔術の場所を調査した。

そして、すぐに場所は見つかったが思いもよらぬ関門が待ち受けていた。


「ここなんだけど・・・考えたなこれは」


レイルは校庭のど真ん中に立っていた。

地面には魔術への干渉するための詠唱が書かれたものがうまく隠されていた。


「これで、仮に魔術を発動できたとしてもここで詠唱を続けなければ魔術がすぐに待機状態になる。操作して情報を引き出すためには光術を使って魔術に干渉しなければならないけど光術で干渉するためには2つの定められた場所で発動しなければならない。操作に3人必要なのがこの魔術の不正利用の防止対策か」


レイルは少し悩んだ末にある解決方法を思いついた。


「〈フゾク〉は全部で12個。多分、足りるかな」


レイルはフゾクを起動させた。


「〈フゾク〉光術〈折光〉を発動。2機は詠唱場所にて俺の合図とともに光術を行使して・・・いや、ナノマシンを経由して直接俺の頭にリンクした後、ガイアの情報を入手せよ。俺が光術で干渉する」


光術〈折光〉周りの光を折り曲げ自分の存在または特定の存在を視覚から除外する。


レイルは折り曲がった光の空間の中で詠唱を開始した。

意識の半分を詠唱にまわし半分を〈フゾク〉と共有。

光術を行使して干渉した。


(光術〈明〉を起動してと…これが情報か。すごい量だな)


干渉した〈フゾク〉の情報がレイルの頭に流れ込む。レイルは要らない情報を切り捨て必要な情報だけを取り込んだ。


(情報多くて頭痛い!急な情報取得に頭が耐え切れないか。ナノマシンに保存しよう)


レイルは頭痛をこらえながらも情報を取得していった。

そろそろ終わりだなと思い始めた頃レイルはとある情報を見つけた。


(これはなんだ?他の個人情報と違ってここのところだけ文献についての情報が入ってる?中身は…)


レイルはその情報を頭に入れずに読んでいく。


(リル手記についての研究と報告?えーと、女神は実在したものと思われその痕跡が多数遺跡から発見。中にはリル手記に出てきたものと同様の武器もあり。同様に人間についての存在もあったものと確認された。しかし、悪魔についての物的証拠はいまだ発見されず。また、遺跡内部には多数の生き物が入れ物につめられていた。調査員の一人が入れ物を調査したところ1匹の未確認生物の存在を確認。約1000年前の生物と思われる。その生物は人間ほどの背丈があり4足歩行の生物。爪があり体は黒い。凶暴性があり調査員をおそったためやむなく殺害。リル手記に出て来た生物と思われる。結果からこの大陸にあるすべての都市で伝わっているあの物語は過去に起きたことを伝承しているものと思われる…以上。リル手記の報告書?宗教都市のか?しかし、今は必要ないか)


レイルは要らない情報として切り捨てた。

必要な情報はそろえたと思い魔術から意識を切り離し詠唱を中断。


「さてさて、後は情報の吟味ですか」


光術〈折光〉は解かずにレイルは意識をナノマシンに集中した。


(ガイア=クライシス。両親が何者かに殺害されており今は姉と双子の姉とともに暮らしている。姉の名前はヒヨ=クライシスで、独特の魔術と武術を使う。ガイアは重力術と土術に特化しておりそのほかの魔術は基礎魔術のみ使用可能。双子の姉の方は…これといった情報無し。これでガイアは全部だな。次はこのヒヨ=クライシスさんですか。えーと、この学園に今は無い特待制度を使ったのか。成績は優秀で6年前に卒業。高い能力が買われナンジョウケに仕える。現在はヒヨ=ナンジョウとして軍に入隊…両親についてはホウジョウケに殺されたとかかれているな。ガイアの時には何者か、なのにこっちではホウジョウケ?なんでだ?この人物についての情報は無いのか?…あった。光術と闇術を駆使して真似のできない幻術を開発。現在使われているどの催眠系魔術よりも有効…違うこれじゃない。でも他には無いな。じゃあ今の自分の知識と混ぜて考えるか)


レイルはナノマシンの演算機能を使い記憶の整理と知識の共有を始めた。


(まず、ガイアは家族の事情で俺に協力できない。家族だから多分姉のことだろう。その姉はナンジョウケに仕えている。ナンジョウケは今現在は九頭竜の中でもっとも勢力が分かりいくい所だ。多分ホウジョウケと関わりは持ちたくないはず、ならばガイアの姉はかかわりを持つなと命令されたはずだな。それで関わりを減らすためにガイアに学園から出ないように言いつけをしてある。ガイアは結構律儀だからそれを守っているのか。じゃあ、ガイアを協力させるにはどうすればいいか?てっとりばやいのが姉からのいいつけを撤回することなんだけどな。姉のいいつけ…ナンジョウ家の命令…ナンジョウ家)


レイルは深い知識の海へ自身を投げだした。

時間の概念をなくしたレイルの頭の中ではガイアの情報のみが縦横無尽に湧き出す。

しばらく、考えているうちにレイルはあることを思い出した。


(そういえば、リリアちゃんは元ナンジョウ家だったな。リリアちゃんに頼んでもらえば…いや、ナンジョウ家との関わりを断ったからホトギ家にいるんだったっけ。それじゃあ、ナンジョウ家の時期当主のフリをしてもらうか。確か、ナンジョウ家には俺らと同じくらいの年の次期当主がいたはず…ふっふっふ、ガイア覚悟しろよ)


すこし時間に余裕がでてきたので今回は2話続けて投稿してみました。

しかし、どうも今回の『苦悩のガイア』は話が早い気がします。

もう少しじっくり書くべきだったか?と反省しています。


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