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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
24/30

進まない計画

レイルは次の日早速準備にとりかかる。


「〈ガンマ〉起動・・・これをシンのところへ運べ」


鳥型の麒麟機巧〈ガンマ〉はレイルから渡された長方形の物体と手紙を持ち早朝の霧がかかった空の中を飛び立った。


「さて、通信機も送った。これでシンとの会話はすぐできる。あとはガイアとリリアか。だが、こんな他人の家の事情に首を突っ込むものなのか…」


一抹の不安を心に抱きレイルは学園への道を歩んでいく。


教室に入るとレイルはリリアに遭遇した。

見ると何故か清清しいほどに笑顔だった。

少し不審に思ったレイルだが良いことがあったのだろうと納得した。

しかし、この考えは少し違った。


「レイルさんおはようございます。早いんですね?今日は」

「俺は遅刻ばかりしているわけじゃないぞ?」

「あら、失礼しました。レイルさんはいつも学校には来てはいましたね」

「言葉のトゲが俺の心に刺さるんだけど…なんかあったの?」


おかしい。リリアの言葉に精神的にきつい。

ただの朝の挨拶のはずだったがレイルはそんなことを思った。

何か悪いことでもしたか?と考えたが何もない。

思い悩むレイルにリリア告げた。


「そんなことはありませんよ…そういえばレイルさん顔色悪いですね?まるで、妹か誰かの結婚式に行くような顔して」


結婚式。この言葉でレイルはリリアの態度の大方を理解。

同時にリリアの態度に一層の疑問を持った。


(なんで、怒っていらっしゃるの?俺が言わなかったことに腹を立てたとか?あ、ツキのことを心配してくれているのか)


「…そういうことか。でも嫌味もここまでくると笑えないな。いつ知った?」

「忘れましたか?私は一応ホトギ家の侍女見習いなんですよ?」

「ああ…ホトギ家の当主様はあなたに何か情報を渡したと?そういうことですか?」

「はい。何を思っているのか、実行不可能なことばかり書かれた手紙が寮に届けられていました。最初は何の嫌味かと思いましたよ」

「へえ…」


(シンも結構悲しかったんだな。昔は娘の幸せは一番の幸福って言ってたほどだったし。しかし…)


レイルはこのとき手紙の内容に対して危機感を覚えていた。

昨日のシンの変貌振りからみてシンがレイルに関する情報を何かしら記してしまったのではないかと。だが、シンがさすがにそんなことはないだろうと考え話を進める。


「それで、俺に協力してくれるか?それとも邪魔するのか?」

「ある条件を呑んでくれたら協力します」

「条件?」

「質問に答えてください」

「質問?ああ、いいぞ」


シンから話を聞いているならこの後の展開もたやすいものだろうと思っていたレイル。

答えられることなら何でも答えてやろうと最初は思っていたが、質問が進むたびにだんだん危機感のみが心を支配することになる。


「あなたはレイル=スコールですか?」

「ああ」

「あなたは十六歳ですか?」

「ああ」

「あなたはシンという人間を知っていますか?」

「いや知らない」

「あなたはホトギ家の当主について知っていますか?」

「いいえだな」

「あなたはツキ=ホトギについて何か知っていますか?」

「学生って事ぐらいしか知らんな」

「あなたはシキ=ホトギという人物を知っていますか?」

「いいや」

「そうですか…それでは、最後の質問です。あなたはレン=ホトギという人物を知っていますか?」

「…知らんな」


レイルは内心で冷や汗をかいていた。


(まさか、シン。本当に手紙に書いたんじゃないだろうな?リリアちゃんの質問が何故か際どい!俺の情報流すのは控えてくれと契約しただろうが!)


そして、解答を聞いたリリアは少し考えこんだあと笑顔でレイルにこう言った。


「すいません。レイルさんには協力できません」





レイルはリリアに協力を断られたことに軽いショックを受けた。が、まだガイアがいると気付きガイアに協力を頼もうと行動した。

――しかし、4時間目の自然学には思いどうりにならない現実に苦痛を覚ええることになる。


自然学の講師の話を聞き流しながらレイルはガイアとの会話を思い返していた。


「頼むガイア協力してくれ!」

「すまないな。俺も助けてやりたいんだが、無理だ」

「なんでだ!」

「少し俺の家の事情が複雑でな。親の命令で学園からは出れないんだよ」

「お前そんなの!……いや、すまなかった。こんな話して」


レイルは反論する際にガイアの表情を見た。

本当にすまないといった苦渋に満ちた表情。

それがレイルの頭に強く印象に残っている。


(今考えただけでもガイアのあの表情は妙なものだった。何かあるのか?まあ、今はそれを置いておいて、協力者はシンだけで実行役は俺一人か…かなりきついな)


レイルは憂いの表情で空を眺めた。

時間はすでに放課後。

いつの間にか授業のすべてが終わっていた。

放心ていたレイルには時間の流れはまるで流星のように感じられた。

しかし、そこから何とか立ち直りレイルは研究室に向かう。

ある下準備を重ねるために。


「リステリアこれの微調整頼む。ただし、誰にも見られないようにな」

「これって魔術烙印じゃないの!?どうしたの?もう作らないって言ってたじゃない?しかも、氷術の回路が入ってるわね。なにするつもり?」

「すまんな。今は答えられん。終わったら話す。あと、金はちゃんと払うからしっかりと調整してくれよ」

「…分かったわ」


リステリアは金を払うといったレイルに緊張を走らせる。

レイルにとってはこの程度の微調整は自分でできる。

それにもかかわらず、リステリアに任せたということがレイルに何かあったということを容易に想像させた。

それを踏まえてリステリアはレイルに問う。


「レンティア、あなた何か危険なことしようとしてないわよね?」


この言葉にレイルはただ一言を笑顔で言った。


「いいや何もないよ」


無理をしているな。レイルはそう思った。



リステリアに調整を任せたレイルは寮へと帰る。

自分の部屋に入り、机においてある〈ガンマ〉に運ばせたものと同種の長方形の金属を手に取る。そして、〈パンドラ〉をはめ魔力を流した。すると、長方形の金属から男の声がした。


『本当に繋がるのだな。こんなものがあるのか』


声の主はシンであった。


「無線機って言うものだ。学園のものを元に俺が作った。シン、早速だが話に入る。まずツキの結婚の話はどうなった?」

『…現在進行形で準備中だ』


むっとした声でシンが言う。

ああ、まだ怒ってるなとレイルは感じ話を変えた。


「そっか。では、こちらの報告からいきますか。まず、こちらの実行部隊は俺一人だ」

『1人?リリアはどうした』

「やっぱりシンだったのか。リリアちゃんは協力してくれないということになっている」


この返答にシンは急に諭すような口調になった。

まるで悪いことをしたのはレイルであると言うかのように。


『レン、お前リリアを怒らしたりしたのか?いつも礼儀正しいリリアがツキに関わることに協力しないことはないはずだ』

「いや、質問に答えただけだ。怒らせたことはないはずだ」

『その質問はお前のことについてか?』

「まあ、そんな感じだったな。あとはホトギ家のこの人物を知っていますかみたいなのとかだった」


なぜそんな質問をするのか?とレイルは思っていたがすぐにその答えは判明する。


『…レン。実はな、私は手紙の内容にレンがレイルであることを書いてしまった』

「はっ?じゃあ、リリアちゃんは俺の正体知ってて質問なんかしたのか?」


衝撃の発言にレイルは頭を抱える。

やはり知っていたのかという気持ちもありしまったとも思ったがもう過ぎてしまったことだった。


『多分そうだろう。だがレイル。お前はそれになんて答えたんだ?いくらリリアでも質問の答えが不十分なくらいで協力を断ることはないはずだ』

「俺ホトギ家のことは全く知りませんと解答した…」

『っ!?なんて命知らずな!あのリリアを前によくそんな嘘をついたな!ホトギ家の者が言っていたら怒りで次の日は…いや、言わないでおこう』


リリアの知らない一面に少し怖くなったレイルだった。

シンの言葉が後押しとなったのかレイルはリリアをどうにかしようと決心する。しかし、その裏にはリリアへの恐怖心が見え隠れした。

必死に自分に快適な学園生活を送るためだと納得させるレイルだった。


「その言葉から若干恐怖心が湧いてくるな…リリアちゃんどうしよう?」

『どうにかして協力してもらえ。まあ、土下座すればすぐに許してくれるさ。右足骨折くらいだろうが』

「それ許してないぞ!」

『まあとにかくリリアは協力させろ!これは当主としての命令だ!』


力強くはっきりとしたその命令にレイルが逆らう理由は無かった。

むしろこの命令にはある程度の必要性を感じていた。

人数が少ない現在の状況でのホウジョウへの反乱は失敗する方が高い。人数は多いに越したことは無かった。


「わかったよ。それで、こちらの作戦もある程度決まった。ただそのためには…」


作戦の具体的な内容をシンに伝えている途中に突如として歯切れが悪くなるレイル。


『何だどうした?何か言いにくいのか?大抵のことならこちらで補助できるが?』

「いやそうじゃなくて…なあシン、ホトギ家の秘伝は使っちゃダメか?」

『なに、秘伝だと!?お前使えるようになったのか!』


シンは無線の向こうで驚いていた。同時にこうも思う。


(ホトギ家に伝わる秘伝は過去にレイルに基礎だけ教えたがあれをものにするとは末恐ろしい奴だ)


しかし、そんなことを思われているとは知らないレイルは必死で秘術の使用許可を求めていた。


「頼む!あれがなきゃ今回の作戦は根本から崩壊するんだ。大丈夫、ホウジョウケに術の正体は悟らせないし誰にも俺の姿は見せない」

『ならいいのだが、あれは使うのにコントロールが難しいぞ』

「その点も大丈夫。何のために俺が旅に出たと思ってるんだ?もう制御も完璧だ」

『分かった。許可しよう。ただし、それがツキに見られたら、分かっているな?』


その言葉の意味をレイルは理解した。


「ああ、俺の正体がばれて俺達の護衛の契約は解消だろ?」

『いや、それにこちらからある条件を出す』

「ある条件?」

『その話はこの件が無事にすまなかった場合の条件だ。今聞いても仕方がないだろう。本題に話を戻そう』

「あ、ああ…じゃあ、こちらからの頼みが一つある」

『なんだ?』

「この件が済んだら俺は学園を去るつもりだ。だからそのために俺の学園にいた情報を一切として残さないで欲しい…頼む」

『・・・』


この言葉にシンは閉口する。

そうなるのも仕方ないなとレイルは内心で思いながらシンの言葉を待つ。


『・・・分かった。それで、決行日はいつだ?』

「派手にやろうと思ってな。この日にちだ」


レイルは苦笑しながらその決行日をシンに伝えた。

その決行日を聞いたシンは驚きの声を上げる。


『そんな日にやるのか!人も雑多にいる中だぞ、大丈夫なのか?』


この言葉にレイルは大丈夫と答えて無線を切る。

そして、机に向かいR・Hシリーズの微調整を始めた。

その夜は微調整で時間が過ぎていく。


微調整の最中ツキの泣き顔が不意に浮かんだ。

うーん。最近は話に会話形式を多用することが多くなりました。

説明文は長くて読みにくいとの判断からなのですが大丈夫でしょうか?

登場人物の口調や性格はある程度分かるようになっているとは思うのですが…

あとは、場所などの細かな説明も加えていこうかと考えてもいます。


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