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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
19/30

正体と怒り

「皆かなり疲れてるね・・・7組はガイア以外全滅みたいだ。どんだけ厳しい訓練してたんだか・・・」


第3演習場の壁に寄りかかり息も絶え絶えになっている7組の生徒達。しかし、2組の生徒にはまだ余力が残っているようにも見えた。


「皆さんお疲れですね。私達も授業に参加しましょうか」


リリアはグレイシアのもとに行き自分達が遅れたわけなどを説明し授業に参加した。

レイルは疲れている7組に混じって戦闘を回避しようと試みた。

しかし、レイルはやはりグレイシアに捕まった。


「レイルよ。お前が私から逃げようとするのは何故だ?」

「はっきり言いますとこの学園に教師によるいじめがあるからです」

「それはいけないことだな。どこの奴だ」

「俺の目の前にいます」

「・・・・覚悟は良いな」

「どうして!?」


レイルは悲鳴とともにグレイシアと戦闘訓練がはじまった。だが、遠距離から一方的に攻められレイルはあっけなく敗北する。

それが、3回続くとグレイシアは2組と7組の戦闘を中止させる。


「いてて、まったくこれはいじめだろ。それにしてもなにすんだ?」


ぼろぼろの服で立ち上がるレイル。しかし、その顔にはまだ余裕を感じさせた。

グレイシアは2組と7組を整列させる。


「お前達には今から2組と7組の代表同士で戦闘を行ってもらう。今から名前を呼ばれるものは前に出ろ。そして、両者の戦いを見て学習しろ」


そういうとグレイシアは生徒の名前を呼ぶ。

呼ばれた生徒は返事をして前に出る。

グレイシアの合図と共にお互いの全身全霊をかけての魔術戦闘がはじまった。皆一様にレベルの高い戦いに集中していたがその中で一人例外がいた。


(・・・暇だ。人の戦いとか興味ないよ。俺が呼ばれることは無いだろうし。さっきから聞いてると上位者の名前ばっかりだから関係ないな。お、ツキが戦うのか・・・・秒殺かよ)


ツキは相手に手加減無しの水術をぶつけ相手を戦闘不能にした。

戦いにもならずに決まった勝敗に当たり前の決着だとでも言うようにその場を立ち去るツキ。

グレイシアはその生徒を医務室へ運ばせ次の生徒の名前を呼んだ。


「レイル=スコール・コマク=リュート」


レイルは自分の名前が呼ばれたことに少し驚いた。


「え、俺?なんで?」


不思議に思いながらレイルは前に出る。

相手のコマクはレイルをいぶかしげに眺めたが、興味仮なくなったかのように目をそらす。


(なんか、気に食わない顔してんな。いかにも、俺を見下してる顔してるし。そういえばホウジョウ家もあんな顔してるってシンがよく言ってたな~)


レイルはコマクの顔を見て印象に残ったことはその態度だった。

明らかにレイルのことを舐めきっているような冷ややかな目をして、大きく開いた口を三日月のように広げている。

その表情は笑みに似ていた。見ていて不快感があったが、レイルはそれは自分が先入観で決め付けているからだろうとその印象を消去した。やがて、互いに構えグレイシアの合図で戦闘が始まった。

すぐさま、レイルは距離をつめる。しかし、コマクは一定の距離を保ちレイルを近づけなかった。そして、距離をとりつつ詠唱を行う。


「重力術〈加〉」


術が発動し、レイルの体重が増えた。

重力術〈加〉は相手の重力を大きくして相手の行動を制限する。

その効力は絶大でレイルは素早い動きができなくなった。


「重力術かよっ!」


レイルは自分の体が重くなっていくのを感じる。

重力術は基本的に魔力が多いとその効果も上がる。

この場合ではコマクの魔力量と重力加重が比例していた。

レイルの重力加重はどんどん大きくなりレイルは立つことが精一杯な状態にまで重力を上げられた。


「グッ!重い!」


レイルは足を震わせながら何とか地面に立つ。

そんな様子をコマクは離れたところから見ていた。


「火術〈紅〉」


そして、火術〈紅〉を発動し中距離から一方的に攻撃する。

攻撃がレイルにあたったのを何回か確認した後、コマクはその憎憎しい笑みを広げレイルを見ながら喋り始めた。


「滑稽だな。愉快だな。会長と戦ってたときは強そうだたが武器がないとここまで弱いのか。あっはっは!」


レイルは火術〈紅〉の集中砲撃を喰らい続けているためそんな言葉など耳に入らなかった。


「火傷が酷い。少し冷やしてやろう」


コマクは水術〈聖水〉を発動しレイルに水玉を浴びせる。

水玉が火傷に強い衝撃とともにあたる。


「ぐっ!お前!」

「うん?ああ、足りないのか?」


コマクはそういうと魔力を込めた水玉をレイルに向かって放つ。

魔力が込められたことで威力が上がりレイルに激痛が走る。

一方的な展開に見ていた生徒達はレイルに対し疑念が沸いた。


なぜ、魔術を発動しないのか?


レイルの魔力が存在しないことを知るものは少ない。

この世界において魔力とは生まれて持つ自分のエネルギーである。

生まれながらにしてそれを持つこの世界では魔力がないものはかなり特殊であった。



レイルは度重なる攻撃でイライラしていた。


(詠唱しているはずなのに何故にこうも魔術発動時間の差が短い!隙を見て距離もとれない。これはまるで魔術烙印を使っているみたいじゃねえか!)


もとより魔術同士の戦いのためやられることは覚悟していたが、執拗な魔術攻撃とあざ笑うかのようなコマクの顔にだんだんと平常心を失った。

右に避けようとも魔術が飛んでくる。左に逃げようにも結果は同じ。距離をとっても遠距離での戦いにレイルが勝てる要素は無かった。

攻撃の際の魔術のタイムラグが存在しないことに疑問を感じ始めるレイルは地面にあった石を魔術をかいくぐりながらコマクに投げつけた。ものすごい勢いで空気を切る石はまっすぐにコマクに飛来した。狙いは頭のど真ん中、吸い込まれるかのように向かう石は予想どうりに当たるかのように思われたが


「小賢しい。土術〈壁〉」


突然地面から現れた土の壁に阻まれた。しかし、この光景を見たレイルは驚きに見舞われていた。


(今、あいつは詠唱したか!?)


殺気の出来事を回想し感情が揺さぶられるかのような感覚に襲われたレイルは足を止めてしまった。そこにコマクのさまざまな魔術が矢継ぎ早に襲ってきた。


「しまった!」


後悔が頭をよぎるがレイルは襲ってくる魔術をその身に浴びた。

粉々になりそうになる感覚がレイルを襲う。

度重なる魔術にレイルの体は自己防衛としての治癒能力を限界まで引き上げた。

攻撃を受けてもナノマシンが修復してくれるので怪我は問題ない。

しかし、何度も襲ってくる痛みには慣れない。

激痛の中レイルはコマクが言ったある言葉を聴いた。


「我がホウジョウの技術は素晴らしいものだ。我がここまでの魔術を駆使できるとは・・・」


レイルの忍耐力は徐々に薄れており、この発言によりついに限界を迎えた。攻撃を受けながらレイルはコマクを睨みつける。


「ホウジョウ?そうか、お前ホウジョ家の人間か・・・じゃあ、今までの魔術、魔術烙印の改造をしたのを使っているな?」

「魔術烙印を知っているのか?ふん、その通りだ。だがそのことをここで言ってもらうのは困るな。どれ痛めつけて喋れなくしよう」


コマクは魔術烙印に込めた魔力量をいままでの量より倍にした。

発動する魔術には殺傷性まで付属するほどの威力が込められる。


「そうか、そうか・・・・魔術烙印の乱用、お前の身を持って償え」


声と共にレイルはこの魔術を打破すべくナノマシンの電気を最大限発生させ体の各部に流し込んだ。

体すべてのナノマシンを意識と統合させていく。

体からは発生した電気のあまりが青白く火花を出しながら地面に落ちていく。その様はまさに雷神のようであった。

あまりの突然の変化に周りの生徒もコマクも驚きを隠せない。


「は?何だよそれ!?」


コマクは焦ったような声を出す。


「ホウジョウが黒幕なのは分かっていた。しかしホトギ家ホウジョウに依存する理由があったために潰せなかった・・・が、今はそんなことも関係ない学園の中だ。殺さなければ何もが許容される・・・・」


レイルはそういうとコマクの目の前から姿を消した。


「はっ!?なあ!?」


突然の消失に戸惑うコマク。


「遅い・・・」


レイルの声が聞こえたかと思うとコマクの腹を激痛が襲う。


「ぐぅっ!?」


コマクは腹の痛みで地面に倒れこむ。しかし、倒れこむ途中で体が浮いたような感触がコマクを襲う。そして、数秒後にまたしても腹部に激痛。そして、それと同時に電流が好みの体を襲う。


「があっ!?」


短く悲鳴をあげるコマク。しかし、その悲鳴の後コマクは悲鳴も出せないほどの速さで体に痛みが襲い始める。

その光景はまさに異様。

生徒からはレイルの姿はいまだ見えず青白い光が通ったかと思うとコマクの体がへこんでいく。へこんだ数秒後に痛みがコマクを襲うがその痛みの伝達速度より速くレイルが攻撃する。電流がコマクの体に流れ込みコマクはしびれてうまく動けない。

そして、その光景が数十秒続いた後コマクの後ろにレイルが現れる。その姿は圧巻。レイルの周りには青白い稲妻が体から地面に落ちていく。大気は小刻みに震え、レイルの表情は普段のものではなかった。


「お、お前!」


コマクはレイルの体を見てさらに驚いた。

レイルの体には多少の出血の後があるものの怪我と呼べるような痕が無かった。


「む、無理だ!あんな魔術の中無傷だなんて!」


激痛に体が悲鳴を上げながらコマクは叫ぶ。

レイルはその言葉を無視して電気の発生をとめた。

青白い光は収縮していきレイルの体からの発光が消える。

周りにいた生徒はその目を大きく開き今起きたことを何とか理解しようとして皆一様に固まっていた。

その光景を見ながらグレイシアは終了の合図をだす。


「そこまでだ。ツキ、コマクを医務室へ連れて行け。レイルは・・・このままリリアと対戦しろ」


少しの沈黙の後、はっと気付いたツキは言葉に従い水術でコマクを医務室へと運ぶ。

その間にレイルは平常心を取り戻したように普段どうりを装った。

怒りはまだ収まらぬままだったが、レイルはグレイシアの言葉にいつもどうりの雰囲気で抗議した。


「その言葉は俺に連戦しろということですか?不公平ですよ先生」

「つべこべ文句を言うな。貴様は私の前であんなものは使わなかったな。私を舐めているのかそれとも謙虚なのかは知らないが私に隠してた罰だ。まったく私と全力で戦わないなど不敬意もはなはだしい」

「そんなのあんたの個人的なことなんじゃないか!?」


レイルの抗議もむなしくレイルはリリアとの連戦に挑むことになる。

その結果はリリアに距離を離され遠距離中級魔術を放たれ体力が尽きてしまい惨敗するというものだった。



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