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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
18/30

胎動する思惑

ツキがシンの部屋を漁っていた時の同時刻、部屋の主であるシンはホトギ家の君主であるホウジョウ家の屋敷の客人室にいた。シンは客人室に置かれている物品を眺めながらつまらなそうな顔をした。


(毎回毎回・・・いつも思うが、ホウジョウ家とは裕福なものだな。こんな役にも立たない見栄えだけの品々にいったいどれだけの価値があるのだ。こんなことだからホウジョウ家は優秀な人材の育成が出来ないのだ。まったく、勢力を伸ばすために非戦闘用だったはずの魔術烙印にまで手を出す始末・・・来たか)


「我が遅参、許せ。すこし厄介事が起きたものでな」


悠然とした態度でシンの前に現れた男にシンは舌打ちをしていた。


(こいつはまたよく太ったな・・・そんな体型ではいざという時に行動できないだろう。君主ともあろう方がこれとは、ホウジョウの未来が見えてくるな)


シンは内心でホウジョウ家の未来を垣間見た気がしたがホトギ家の主として来ている今はそんなことは不適切だと考え、思ったことをばっさりと切り捨てた。


「いえいえ、ホウジョウ家の現在の状況を見れば遅れてくるのも仕方のないことでございます。むしろ、遅れてでも君主様自ら出迎えるこのような振る舞いこそすばらしいことだと思われます」

「そうかそうか、素晴らしいことか。このような事は他の上位家では行われていないのだろうな。どうせ下っ端にこのような仕事は押し付けているのだろう。ふむ、我がホウジョウ家の礼儀を他の奴らにも見せつけたいわ」

「いかにも、その通りでございます」


シンは目の前のぶくぶくに太った男の機嫌をとりながらも内心で腐っていくホウジョウ家に嘆いていた。


(重要な話し合いではどの上位家も当たり前のように君主が話をすることをこの男は知らんのか?他の上位家の状況も知らないこの男が本当に他の勢力を倒すために動いているのか?そもそも情報など集めないようなこの男がどうやって魔術烙印のことを知ったのだ?・・・どれにしてもこの男が無能であることには変わりないか。ああ、ホウジョウはいったいいつからおかしくなり始めたのだろうか)


ストレスが溜まっていくのを感じたシキは用件を済ませようと話を進めた。


「して、今日の用件は何でございましょうか?先の件の戦力増強のための人員をホトギ家から出せということでございましょうか?」

「まあ待て、話を急ぐな。なに簡単な用件が2つあるだけだ。ただし拒否は出来んがな」


シキは愉快そうな顔で言う君主の言葉を聞いていやな予感が脳裏をよぎった。第6感ともいえる確証の無いに等しいものだったが、シンはそれがホトギ家にとってもシンにとっても不利益なものであると感じた。そしてその予感は言葉の悪魔となってシンを貫く。


「なに、1つ目はホウジョウ家の戦力が整ったからサイジョウ家に宣戦布告するというものだ。そこで宣戦布告としてサイジョウ家に夜襲を仕掛ける。運がよければサイジョウ家は全滅じゃ!その特攻としてまず最初にホトギ家に前線に出てもらいたい。頼むぞ、我がホウジョウ家はホトギ家に期待しておる」


この言葉を聞いてシンは顔を曇らせる。


(仮にホトギ家が夜襲に失敗してもホウジョウと関係がないとするための下準備か。ホトギ家の戦いを見て戦力を割くかどうか決めるつもりだな。ついにここまで腐ったかホウジョウ家!いままでは互いに依存しなければいけなかったために敬意が存在したが、依存に頼らなくて済むようになったら使い捨てか。汚いだ手口だ)


こう思ったところで目の前の現実は変わることなく、シンはせめてもの抵抗として沈黙した。しかし、その姿をみてもホウジョウ家君主の態度に一片の変化も無く、ただ機械的に次の話へ進んだ。


「さてさて、2つ目はさっきのよりももっと簡単じゃ。おぬしにとっても実にめでたい話となろう。それはなお前の娘が・・・・」


シンは2つ目の用件を聞いた。しかし、その内容はシンにとってとても許容できるものではなかった。シンは2つ目の用件を楽しむかのように笑って言う目の前の男に殺意が湧いた。しかし、脱力感も同時に襲ってきたためにシンはその場で放心状態になった。

その姿を笑いながら見るホウジョウ家君主は高笑いしながら退出した。

後に取り残されたシンの顔に表情は存在しなかった。







ツキは5日後に天道学園に戻っていた。

次の日には学園に行こうと思っていたが思った以上に魔力が回復しなかったためである。

ある程度回復してからツキは学園に戻ることにした。

ホトギ家と教師には魔力は十分戻ったという虚偽の報告をして。

現在昼休み。

ツキは生徒会のリリアにレンのことを話し、レンの捜索に協力してもらっていた。そして、今二人は分厚い本を開きながら生徒会室にいた。


「こっちに該当者はいないわね。そっちはどう?」

「こっちには8人いますけど出生が明らかですね」


二人は個人情報の載った生徒会の厳重保管資料を見ていた。


「いままでの調べたのあわせて怪しい人物は5人ね」

「高等部1年の外部入学者はこの本で最後でした」

「この5人のうち2人は私が知ってるわ。あの二人はレンじゃないわ。髪が私と同じ白だもの」

「この人、多分はずして大丈夫です」

「じゃあ、残ったのはこの二人ね。コマク=リュートとレイル=スコール・・・」

「まさか、レイル=スコールがレンとは思いませんが・・・」

「レイルの方は怪しいわ。あの男はレンと似た雰囲気が時々ある」

「そうですか。それでは、クラスも一緒なので私がレイルさんを見張りましょう」

「お願い。私はこのコマクについて調べるわ」


二人はそう言い生徒会室からでて分かれた。








「5時間目の授業は・・・実戦形式の模擬戦闘術かよ!勘弁してくれ」


一人肩を下げ憂鬱な気分を漂わせるレイル。


「元気出せよ!いいじゃねえか。相手はいつもあのグレイシア先生だろ」

「ふざけんなよ!魔力無しであの人に勝てるわけねえんだよ!もう、何回敗北を味わったことか!俺の体はぼろぼろだ」

「まあ、アレは見てて気の毒だよな・・・」


ガイアはグレイシアとの戦闘のことを思い出す。

一方的に遠距離から魔術を放ちレイルが近づいたところをトラップ魔術で痛めつける戦法に腹がたつが実践的だったことに感心もしていた。


「俺に麒麟機巧を使うことさえ許されれば俺はもう少しまともに戦えるのに!」


レイルは麒麟機巧をこの授業で使うことを許されていなかった。

魔術同士の戦闘を前提に進められる魔術戦闘の授業では武器を持つことは論外だった。

純粋な魔術同士の戦い。

その中で自分の闘いのスタイルを発見し確立していく中でレイルは1人魔術が使えない落ちこぼれとしてグレイシアの相手をしていた。

しかし、レイルには麒麟機巧を使うことも許されること無くレイルは素手で戦いを挑んでいた。


(でも対魔術近接格闘とかは使わないほうが良いよな。ホトギ家独自の戦闘スタイルだし、秘伝だもんな。・・・何より、近づけないし)


レイルがそう考えている横でガイアが思い出したように話しかける。


「そういや、今日の授業は確か2組のところと合同だった気がするぞ?」

「2組って・・・・確か、魔術格闘センスがずば抜けてなかったっけ。そんなところと合同で実践形式の魔術訓練かよ・・・まあ、魔術の使えない俺には関係ないがな!」

「はっはっは!落ちこぼれの発言だな!」

「はぁ・・・認めるよ。しかし、2組って確かツキがいたな」

「ああ!学年1位がいるぞ!ああ、なんと待ち遠しいものだ」

「え?なに?お前なんかツキになんかいかがわしい気持ち抱いてるのか?」

「馬鹿か!強者と戦うんだぞ!自分自身の限界が実感できるいい機会じゃないか!・・・というよりレイル?何故、俺に対して殴りかかろうとしている?」

「ん?え、ああ本当だ。いやー(ツキに近寄る)悪い虫だと思ったんだ」


レイルは自分が殴りかかろうとしていることに若干驚きながら手を引っ込める。


「レイル。そろそろ時間になるぞ。第2演習場へいこうぜ」

「ああ、そうだな」


レイルとガイアは駆け足で第2演習場に向かっていく。

その2人の少し離れたところで話を聞いていた人物が一人。


「レイルさんはあんまり怪しくは見えませんね・・・」


ツキにレイルがレンかもしれないということで密かに観察をしているリリアがいた。


「ツキ様はレイルさんにレンという方と時々同じ雰囲気を感じるといいますが・・・もう少し観察してみましょうか」


リリアは先を行く2人の後に気づかれないようについていった。




「到着!」


ガイアの爽やかな一言が清清しいまでに空に響く。


「おいガイア。これはどういうことだ?第2演習場じゃないのか?」


目の前に広がるのは無人の演習場。


「はっはっは・・・・すまん。今日どこでやるんだっけ?」

「このアホ!お前今日も同じ場所だと思ってたんだろ!よく考えてみたらこんな狭い演習場に2組の生徒が入れるはずねえ。クソ、俺とした事が!まさか、ガイアの言動を信じるとは、なんて失態を!」

「仕方ないだろ。俺は興味の無いことは忘れるんだ」

「まったく都合のいい頭だな・・・さて、馬鹿との話はここまでにしてほんとに何処でやってるんだ?ああ、そうだリリアちゃんならきっと知ってるはず」

「俺達以外誰もいないのにどうやって聞くんだよ」


レイルはにっこり微笑み第2演習場の森の中の方を向く。


「さて、隠れてないで出てきてくださいよ。そして、何処で授業やってるのか教えてください。でないと、俺達補習になっちゃいますよ?」


丁寧口調でレイルが話しかけるが森の中は沈黙していた。


「なあレイル。誰も居なさそうだぞ?」

「・・・ガイア。そこに見える木燃やしちゃって」

「いいのか?・・・・火術〈紅〉!」


ガイアは指定された木を燃やす。

するとその木から飛び出る人影があった。


「・・・酷いですね。まさか、火であぶりだすとは」


出てきた人物はリリア。

ガイアは本当に人が居たことに目を丸くしている。


「出てこない人が悪いんです。さあ、教えてください」

「・・・第3演習場です。あそこで合同訓練が行われています。今頃の時間帯ではもう授業は始まっているでしょう」


その言葉にガイアが反応する。


「なに!?もう始まってるのか!第3演習場だったな!」


そういうとガイアは走って第3演習場の方へ行ってしまった。


「せっかちな人ですね」

「ガイアだからな。最初はあんな戦闘狂だとは思わなかったんだけどな」

「あなたは行かないんですか?」

「今すぐに行っても俺は何にもすることが無いからね。魔力なんて無いし」

「いつも使ってるじゃありませんか?」

「機械の補助で使えるように見せてるの。本当はあれ魔術じゃないよ」


レイルとリリアはいくつかの会話を交わしながらゆっくりと第三演習場に向かった。


「レイルさんの麒麟機巧は何処で買ったのですか?あんなものは市販されていませんよね?」

「ははは。あれは親友のツテで買ったのさ。そいつは麒麟機巧に顔がきいたからね」

「良い友人を持っているんですね」

「リリアちゃんだって良い友人が居るじゃないか」


そんな話を続けながら2人は授業という名の戦闘訓練が行われている第3演習場に到着することになる。


第1章のホウジョウ家滅亡編の悪役がようやく登場・・・長かった。

現在1章が終わっていないのにもう2章の構想やらを組み立て始めています。

おかげで1章と2章の話がごちゃごちゃに・・・

1章を終わらせるまでにあと2~3話・・・・いや、もう少し必要だと思います。といっても執筆中に思いついたいい考えなどがあったら、すぐさま小説に取り込んでしまうので当てにはなりませんが・・

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