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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
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夢と友

レイルは〈アルファ〉が食らった魔力から本人の情報を吸い上げるため自分の寮に帰っていた。

魔力とは、本人の精神の分であり、魔力自体に本体の記憶と情報が内包されている。

レイルは魔力を分析・解析するため机の上の魔方陣の上に〈アルファ〉を置く、すると魔方陣は白く発光し始めた。


「・・・解析は2週間後か」


魔力の解析には魔力自体に記憶と情報を防衛する能力がついているため、能力を無効化するのに時間がかかる。

レイルは大体の予測をつけた後、疲れた体を休ませるために横になる。毎日の護衛と今日の感情の高ぶりがレイルの体の肉体面でも精神面でも疲労を蓄積させていたためレイルが眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。

レイルは深い眠りの中で懐かしい夢を見る。



目の前には病気で顔がやせ細っている男。その男の隣には険しい顔をしたレイルがいた。レイルはその光景を見ている。やせ細った男は幼い顔立ちを残したレイルと話をしていた。


・・・レンティア、俺の夢お前に託すよ。


男が発した言葉にレンティアは険しい顔に悲愴の影を含ませる。


・・・はは、なんて顔してるんだよ。大丈夫だよ、遺言じゃない。たださ、俺たちのレンティア=ハザードの夢をお前に守って欲しいんだよ。皆が自由に行使できる魔術がある世界の実現。最初は君に笑われてしまったね。今ではいい思い出だ。


その光景を見ていたレイルはやせ細った男を見ていた。


「ハザード=リンクス・・・」


レイルが呟く。名を呼んだ男は大量に血を吐いていた。


・・・ははは、すこし喋りすぎたかな。でも、レンティア聞いてくれ。僕は魔術の自由行使の夢のほかに1つ願いがあるんだ。それは、僕がいなくなった世界でも続いて欲しことなんだ。レンティアにはそれを見届けて欲しい。僕の願いは・・・ウッ!ゴホッ!ゴホッ!・・・ハァハァ・・・願いは


吐血を急いで拭き取るレンティアの手をリンクスは払った。


・・・レンティア、僕はね攻撃魔法が僕のEスペックで使われて欲しくない。人を傷つけるためにアレを悪用されて欲しくないんだ。レンティア、君の複合魔術も他人にむやみに教えないでくれ。確かにそれは魔術の幅を広げるかもしれない、けど争いも酷くなるよ。僕はそんな風に魔術が使われるなんて見たくないよ。だからレンティア・・・もし悪用されたEスペックがあったら一つ残らず破壊してくれ。お願いだ。


リンクスの言葉に当然だとレンティアは頷く。

リンクスはその表情を見ると安心しきった顔になった。


・・・ありがとう、レンティア。君は僕の最高の親友だ・・・


当たり前だとレンティアは声を搾り出したがリンクスはその声を聞くこと無く安らかな顔で永遠の眠りについた。

レンティアはそれを黙ってみていた。

強く握りしめている手からは血が滴り落ちていた。


胸の痛みが増してきたところでレイルは目を覚ます。


「結局・・・遺言だったよな・・・・あの大嘘つき」


そういうレイルの目からは涙が流れた跡が残っていた・・・。




ミリヤ=ハテナキは校舎とは別の研究棟で氷漬けにされていた男のデータを見ていた。


「男の名前はロク=カムイ・・・九頭竜下位3家の一つカムイ家の問題児か」


カムイ家は上位4家の序列4位のサイジョウ家に仕えている。

序列1位のトウジョウ家にも友好関係にあり下位3家の中では序列1位であった。

一方のホトギ家はホウジョウケに仕えている。しかし、ホウジョウ家では下位3家のことを侮蔑しておりホトギ家には差別意識を持っていた。

このほかにも、トウジョウ家に仕えているミツルギ家がある。


「ロク=カムイは氷の魔術を受けてから魔術の行使が不可能。魔力は存在するけど体内を循環していない。おまけに、氷魔術を使った仮面の男についての記憶は一切なし・・・なんなのよ」


ミリヤはロク=カムイの治療と尋問に立ち会っていた。

彼女はそこでロク=カムイに記憶の混濁と魔術を使えないことを見抜いた。現在ロク=カムイは治療のため護衛兼監視の男たちに囲まれながら医務室で静かに眠っている。


「・・・氷魔術!これさえ分かれば、レンティアに近づけるのに!せめて魔力の波長だけでも解析できれば!」


魔力には個人の情報だけでなくその個人特有の波長を持っている。

魔術の残滓からの波長を解析することでそれが誰のものかまでわかる。下級魔術の場合なら波長の解析は簡単に済むが、上級魔術になると波長は複雑になり解析も難しくなる。


「むむむ~」


ミリヤは一人研究室で仮面が残した氷魔術の欠片と睨みあっていた。


「何でかは知らないけどレイルとか言う人の魔力と似てるのよね・・・。でも、ここらへんの波長は・・・」


ミリヤはレイルのことをあまり知らない。

知識としてあるのは会長と戦い、負けた事だけ。

ミリヤはミンティアレースの時レイルが使った氷魔術のことを知らなかった。




ツキが襲撃を受けた次の日、レイルは医務室にいるゼラードとツキの見舞いに来ていた。


「・・・ツキはどうなんですか。毒の後遺症なんかはありませんか?」


レイルの言葉に医務室の主イリア=マリアネットは


「毒の後遺症はないわ。ただ、すこし魔術の使用は控えたほうがいいわね。魔力の量がいつもの半分の下になってるからね。しばらくしたら休養のために2週間くらい家に帰ってもらうわ」

「わかりました・・・ゼラードのほうは?」

「彼のほうは大丈夫よ。火傷の跡がすこし残ったくらいね。今は経過観察中。何もなかったらこのまま生徒会復帰ね」

「そうですか・・・」

「ん~?元気がないぞ?」

「酷く疲れてるんですよ。今日は忙しくて」

「あんまり無理しちゃいけないぞ!人間元気が1番なんだからね」

「はい、分かってますよ。では、これで失礼します」

「ツキちゃんに会ってあげないの?ツキちゃん寂しいと思うよ?」

「今は寝ているでしょう。それに、嫌われていますからね。このまま立ち去るのが一番なんですよ」


レイルは医務室から出て教室へ向かった。

教室に入ろうとしたところでレイルは切羽詰った顔のリステリアに声をかけられる。


「レンティア!すこし、私の魔術理論手伝って!」

「いきなりなんだよ」

「お願い!もう、審査会まで時間がないの!」

「審査会?」

「新しい魔術の審査会よ!そこで、認められれば魔術の一つとして認めてもらえるの!」

「へーすごいな・・・まあ、協力するか」

「ホント!?ありがと!じゃあこっち来て!」

「は?今からどこ行くの?授業始まるぞ」

「昨日の舞踏会の爆発で教職員は後片付けしてるから午前中は自習よ!」

「そうなのか?」

「そう。だから今から研究棟行って魔術理論の最終チェックするの。だから行きましょう。何してるの!早く!」

「わかった、わかった。行くから」


最近は騒がしい事ばかりだなと思いつつレイルはリステリアと研究棟へと向かった。


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