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始原世界の中で  作者: 神原 拓
第1章 世界の始まり
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舞踏会の出来事 後編

「そんな顔いてるなんてレイル君はおもしろいね」

「っ!・・・会長」

「やっほ~」


コナミはトウジョウ家特有の赤い髪に紅いドレス姿で立っていた。


「会長。話って何ですか?」

「もうその話?もう少しおしゃべりしましょうよ」

「なるべく早く終わらせたいんですよ」

「ツキちゃんの護衛のため?」

「・・・そこまでわかってたんですか」

「ふふふ。今ならツキちゃんは大丈夫よ。ゼラードが監視してくれてるもん」

「そうですか・・・」

「長い話は嫌いそうね。じゃあ、単刀直入に言いましょう」


さっきとはうって変わりコナミの顔が真剣になる。


「大事なお話しそうですね」

「ええ。とても大事な話よ。まずレイル君、あなたはホトギ家に雇われた護衛よね?」

「はい。そうです。それが?」

「ホトギ家はホウジョウ家に仕えることに不満はない?」

「決められたことですから。仕方ありません」

「ホトギ家の当主の片腕切ったのがホウジョウ家でも?」

「・・・なんですって?」

「知らないの?ホトギ家当主はホウジョウ家からツキちゃんを守ろうとしたの。刺客が何人も送られたらしいわ。当主はそれらをホトギ家の精鋭で護衛していたみたいだけど、度重なる襲撃で疲弊して護衛団は壊滅。当主はホウジョウ家から目をつけられて腕を切り落とされたわ。知らないの?」

「・・・初耳です」

「そう・・・まあ、今日レイル君に話したいことはこれじゃないけど」

「他に何が?」

「ホトギ家の当主にこれを渡して頂戴」


渡されたのは紙の束、表紙は白紙で何なのかはわからない


「これは?」

「秘密よ。まあヒントあげるなら、あなた達の自由になるためのものかな」

「なんだそりゃ・・・まあ、それをシンに渡せばいいんですね」

「ええ。お願いね」


紙の束を渡したコナミは表情を緩めた。


「さてさて話も終わったし、レイル君私と踊らない?」

「まあ、いいですよ」

「よし、下行こっか!」


レイルはコナミに引っ張られながら下へ行く。ツキの監視も忘れずに。




レイルがコナミとダンスをしている時、ツキは度重なるスカウトマンと踊りの誘いを断ることで四苦八苦していた。


(なんでこんなに多いのかしら。毎年毎年よく飽きない人達ね)


ツキは何とかすべて断りきり、誰もいない2階へで休むことにした。そして下で踊る人を見ていた。


(・・・レイルがコナミ会長と踊ってる。案外と踊りは上手なのね)


ツキは踊るレイルに対してそんな評価をしていた。


後ろに襲撃者がいることも知らずに・・・


襲撃者は右手に持つ刃物でツキを刺そうと忍び寄る。

後一歩でツキを殺せる距離までちかづいたところでツキは異様な気配に気づいた。


「だれ!」

「くそ!このまま!」


襲撃者は刃物をツキに突き刺そうとする。

とっさに回避したツキだが刃物はツキの左腕に刺さった。

その刹那右腕に痺れを感じた。


「これは毒!?」


刃物には毒が塗られていた。毒は徐々にツキを蝕む。


「はははは!やった!やったぞ!これで俺は!」


ツキを刺した人物は狂喜しながらその場を去ろうとする。しかし、そこにゼラードが駆けつけた。


「遅かった!ツキさんに怪我までさせてしまった!まず、ツキさんに怪我をさせた貴様を確保する・・・重力術〈倍加〉」


ゼラードの重力術により男は行動の制限を受ける。


重力術〈倍加〉重力を魔術で操作する。重力をかけて体を重くしたり重力を減らして軽くすることも出来る。


「くそ、重力術だと!ぐぐぐ・・・ここまで来て!火術〈紅〉!焼かれろ!」


叫び声のような大声とともに巨大な火玉がゼラードを狙う。


「詠唱なしだと!」

「当たれや!」


詠唱無しの魔術にとっさの判断が遅れ、火玉がゼラードに命中。同時に大きな爆発音が舞踏会場に響いた。


「く・・・そ」


ゼラードは火玉を直接受け重力術を解除してしまう。なんとか立っているが、足元はおぼつかない様子であった。


「はははは!じゃあな。2度と会わないだろうけどよ!」

そんな捨て台詞をゼラードに吐き、襲撃者はゼラードの前から姿を消した。




爆発音が響いた時、レイルはすぐさま音源を察知し二階に向かっていた。後ろにはコナミも追従している。


(今の爆発音・・・ツキは無事か!?)


レイルは全速力で走り爆発のあった2階へたどり着く。

そこには、顔がひどく青ざめたツキと、体中に火傷があるゼラードの姿があった。


「ツキ!おい、大丈夫か!・・・毒か!」

「毒なら水術で追い出すわ。レイル君!ゼラードを」

「分かった!」


レイルはゼラードに近づき火傷の程度を調べる。


「こっちも水術で何とかなるな」


レイルが〈フゾク〉を起動させ水術で治そうとしたとき、ゼラードが意識を取り戻しかすれた声でレイルに伝えた。


「レイル・・・ツキさんを襲った男は・・・今・・逃げたばかりだ・・・顔に傷が・・あった・・今なら間に・・・合う・・・・私にかまわず・・・追いかけろ」

「・・・分かった」


レイルは水術で応急処置まで済ませ、男の後を追おうとした。

ゼラードはその姿を見ながらレイルに言った。


「気をつけろ・・・相手は・・・無詠唱で・・・魔術を行使・・・した」


その言葉にレイルは驚愕するが、平静を装いながら男を追いかけた。


(無詠唱だと!レンティアでのEスペックを利用されたということか!アレを攻撃のために使った・・・)


レイルの驚愕はすぐさま怒りへと変わった。

しかし、静かに冷静に頭を働かせ激情を片隅に追いやる。

レイルはコート内にある〈パンドラ〉を起動させた。


(許しはしない・・・Eスペックを・・・あいつの夢を汚す奴に生きる価値はない)


そして、レイルは男を発見した。すぐさま回り込み男と対峙する。


「なんだお前は!」

「・・・・」


レイルは男の言葉を無視し構える。


「あはははは!あの女のことで来たのか!?馬鹿な奴だな!火術〈紅〉!」

「・・・確かに無詠唱」


男の声とともに巨大な火玉がレイルに放たれる。しかし、レイルは〈パンドラ〉をつけている右腕を前に突き出し一言。


「氷術〈雪花〉・・・凍りつけ」


レイルの言葉とともに火玉は消え去った。


「ああ!?なんだ!消えた!?それに、いきなり寒くなりやがって!」


男がそういった刹那、男は首から下すべてが凍りついた。男は軽いパニックになったがすぐさま魔術を唱える。


「ああ!?くそ!なんなんだよ!火術〈紅〉!」


しかし、男は叫ぶが魔術は発動しない。


「無駄だ。その氷はお前の魔力を凍らせたんだからな。頭はこれからのために残しておいたがな」

「くそ!火術〈紅〉!・・・発動しろよ!」

「右腕の指輪。火術〈紅〉だけの烙印しか押されてないようだな。お前はハザードの夢を汚した・・・貴様にそれを渡した組織ごと潰してやろう」

「はっ!俺は何にも言わねえぞ!あはははは!残念だったな」

「なにも貴様がしゃべる必要はない。R・Hシリーズ〈アルファ〉起動」


コート内から1匹の狼が出てくる。その姿は大きく銀色で金属の彫刻のように思わせる。そしてレイルはただ一言狼に命令した。


「〈アルファ〉こいつの魔力を食え」


狼は男の魔力が凍っていない頭に噛み付く。途端に男は悲鳴を上げた。


「ぎゃあああああああああああああああ」

「うるさい奴だ・・・死なないだけましだと思え」


レイルは絶叫を無視しそのまま〈アルファ〉に魔力を食わせ続ける。

男の顔は血で赤く染まっていった。


「・・・そのくらいでいいだろう。後で検証する。戻れ〈アルファ〉」


命令された狼は体を溶かし銀色の長方形の金属になった。

レイルはコート内から仮面を取り出し顔につける。

狼が金属になるとほぼ同時に教職員と生徒会が駆けつけた。

彼らは頭が血だらけの体を凍らせた男とその横で仮面をかぶった全身が漆黒の男を見る。漆黒の男は凍りついた男の右腕の指輪を氷の上から叩き壊し生徒会・教職員の目の前から悠然と姿を消した。

仮面の男が消えた後、教職員は凍りついた男に水術を施した。

火術も施し男の氷も溶かしていく。

その男が治療されている間、レイルが壊した指輪の破片を持って生徒会会計のミリヤ=ハテナキという人物は考えていた。


(この男を凍らせたこの魔術・・・壊していったこの指輪・・・そして、頭が血だらけの男・・・)


2年魔術理論成績・実技成績上位者ミリヤ=ハテナキ。

努力家であり武術の達人で、レンティア=ハザードを崇拝するミリヤはレイルが使った氷術に興味を感じた。


(レンティア=ハザードのオリジナルの水術と風術の複合魔術〈氷術〉!コレが使えるのはレンティア=ハザードとそれに関係する者たちだけ!これを追えばレンティア=ハザードに近づける!)


ミリヤの顔に微笑が広がる。


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