第8“青い天井”
ピッ、ピッ、ピッ、
そんなような音が頭で響いて、おちおち寝てもいられない。
目をゆっくりと開ける。ボヤけて何も見えない。
なんとなく、ここはオレの部屋ではない気がする。なぜか? 天井が綺麗で青いから。
そのうち、目も慣れてきて、今、自分がどういう状態かを把握した。
酸素マスクされ、手足は暴れないように締め付けられ、点滴が無数に射たれ、頭の上の心拍を測るやつがうるさい。
いわゆる、集中治療室だろう。周りもビニールで囲まれ、誰一人としてこの部屋にはいない。
寂しいな。もし、このまま1人だったら、オレは平常でいられるのだろうか? いや、いられないだろう。気持ちが滅入って自殺するだろうな。
自殺と言えば、オレはなんで死にたいとか思ってたのか。現実が嫌になった? 人が嫌になった?
ちょっと待てよ。オレがここに来て、一番始めに出会ったのが桃だな。あの日は確か白のレースだったな。
で、『あたまいてぇ、』が第一声だったか。
それで、『大丈夫よ。ピンピンしてるから』今思い出してもムカつく。あの時ムカついたから転けさせたら、スカートがめくれたんだっけ。どうでもいっか。
『どうして病院にいるんだ?』
『え! えっとねぇ……』
そう聞いたらうろたえて、目を泳がせてたな。オレが不振な目で見ると、ため息をつきやがって、『屋上から落ちたのよ』そう聞いた。
そのあと新聞で、【屋上から飛び降り自殺】の見出し見て、『オレ、自殺したんだ』て、なったんだ。
そうか、そうか。勘違いとかそこらへんの感じか。それで毎日のように死にたいとか言ってたのか。オレ、バカだな。
何人に迷惑かけたんだ? もうわからねぇな。病院内では暴れまくって、何かあるごとに自殺未遂。最後には部屋に閉じ込められて。
でも、なんで桃はオレから離れなかったんだ? 一緒にいるだけで被害被ってんのに。それでも今までオレの専属でいた。オレに気があんのか? そんなわけないか。
疲れた、もう一眠りでもするか。
オレは目をつむった。静かに、今はただ休むために。だが、桜は刻一刻と咲き乱れていき、そのうち華やかに散っていく。
何かを誘導しているように。誰かを導いているように。桜は咲いていく。
咲いたら、どうなるかなんて、考えてもなかった。ただ単に毎年咲いていく桜が、人の人生を変えるなんて。
オレはぐっすりと寝れた。夢で母さんと会った。笑ってたな。なんつってたか思い出せないけど。
そして、目を開けたら、そこにも笑顔があった。
「おはよう!」
ムカつくぐらい元気な桃に舌打ちをする。
「おはよう」
オレは気付く。体の自由がきく。
桃がせかせかと身の回りのビニールを取っている所に足を掛けた。見事にすってんころりん。今日は黒みたいだな。
「痛いわね! なにしてんのよ!」
オデコが真っ赤な桃。半泣きで怒ってる。見てたらおかしくなって、オレは腹から笑った。
「な! なによ!」
「いや、別に、」
笑いが止まらない。桃もオレの笑いにつられて笑い始めた。
病室の空気がキラキラと光った。




