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夜桜  作者: kazuha
11/12

第11“夜桜”

 早朝五時四十分。オレはまだ闇が覆っている世界を見渡す。後数分で少女が来る。遊ぼうと言ってくる。いいよ、そう返して窓から出る。あれなに、きっと桜の木を指差して言うだろう。そしたら、

「桜の木。もう、満開だよ」

 もうすぐ桜の花が咲くよ。そう言う。きっと発作は起きない。そう、願う。

 風がイタズラに桜の花を舞い散らす。空はまだ、瑠璃色の絵の具を抱えていた。

 幻想的とも言える風景。天国がそこにあるような、おかしな感覚に苛まれる。オレはいつから、美しいものを、素直に美しいと思えなくなったのか。

「かめやまおにいちゃん、あそぼ」

 オレは驚いた。がすぐに、その少女の幼い、絶望と言うものを知らないような笑顔を見た。

「いいよ」

 そう。計画通りに。オレは窓から外に出る。ひんやりとした感覚が足にきた。

「おにいちゃん、きれいだね」

 少女が(おもむろ)に上げた腕の先は、あの桜の木だった。

 オレは戸惑う。しかし、計画を遂行しなければ。

「そうだな。もうすぐ桜の花が咲くよ」

 様子を伺う。特になんともならない。

 やっぱりだ。

 しゃがんで、この言葉を言わなければ大丈夫だ。

「ねぇ、いこ」

「あぁ、」

 ゆっくり、ゆっくり、あの木の下に向かっていく。

 そのうち、朝日が淡く、ほっそりと照りだし、桜の木が後光で眩しく光る。

 刹那、

【桜は満開だよ】

 は?

【あははは、あはははは!】

 なにが、なにが。

【あはははは! あはははは!】

 大きく見開いた目はオレをまっすぐ見ていた。真っ黒な瞳が、こっちを。黒に吸い込まれそうな。

【ギャァァァァ! ア゛ァ! ガァ!】

 防衛本能なのか、オレは彼女を押し倒し、暴れる体を、寝技で押さえつける。

「おい! 陣内!」

「わかっている」

 薬を打つ。

【ギャァァァァ!】

 しかし、治まる気配がない。

「ち! 早くおなじやつ何個か持ってこい!」

 桃が走り出す。

「おい、明日香!」

【ギャァァァァ!】

「明日香!」

【ギャァァァァ!】

「明日香!」

 音がなりやんだ。急すぎた。静寂が、不安をそそる。

【亀山お兄ちゃん。桜は満開だね。綺麗だね。また、あそぼ】

 口から血を噴き出す。

「おい!」

「どけ!」

 陣内がオレを吹っ飛ばす。

 明日香に心臓マッサージを試みていた。しかし、すぐに止めた。

 陣内が明日香の手首を指で触る。口から血を取り除き、顔を近づける。ポケットからライトを取り出して、目に光を当てる。

 終わって立ち上がったときに、桃が戻ってきた。

 注射器を落とし、膝から折れていった。

「午前六時七分三秒、死亡を確認」

 オレは、










 取り返しのつかないことをしてしまった。











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