埋もれる声
だいぶ進んできましたね
# 第五章 埋まった声
地下へ戻ると、空気がさっきより重かった。
崩れた天井から細い光が落ちている。
砂がゆっくり落ちている。
静かだ。
俺とセツナの足音だけが響く。
通路を進む。
奥の部屋。
そして。
さっきの場所に戻った。
地面に埋まっている訪問者。
黒い体。
顔のない頭。
さっきと同じ姿。
でも。
さっきと違うところがあった。
腕。
指。
**少し外に出ている。**
俺は言った。
「……さっきより動いてないか」
セツナはしゃがむ。
じっと見る。
そのとき。
**カチ**
また音がした。
今度ははっきり聞こえた。
石が擦れるような音。
埋まっている訪問者の肩が、ほんの少し動く。
俺はレベリーンを構えた。
「これ普通に起きるんじゃないか」
セツナは何も言わない。
ただ見ている。
訪問者の体が震える。
砂が落ちる。
そして。
音がした。
「……ァ……」
かすかな声。
空気みたいな音。
でも。
確かに。
声だ。
俺は眉をひそめた。
「喋ってる?」
セツナは訪問者の顔の近くに耳を寄せる。
また音がする。
「……ァ……ジ……」
言葉にならない。
でも。
何か言おうとしている。
セツナは少しだけ顔を上げた。
そして。
「……アジ」
もう一度声が出る。
「……アジ……」
その瞬間。
訪問者の体が少し大きく震えた。
石が割れる。
腕が外に出る。
俺はすぐに刀を構えた。
「来るぞ」
でも。
訪問者は攻撃しない。
ただ。
体を動かそうとしている。
まるで。
**起き上がろうとしている。**
セツナが言う。
「……待って」
俺は聞く。
「何を」
「攻撃しない」
確かに。
訪問者は俺たちを見ていない。
いや。
見ているのか分からない。
顔がないから。
でも。
攻撃しない。
体を少し動かして。
そして。
また声が出た。
「……アジ……リ……」
俺は言った。
「アジーリ?」
訪問者の体が止まった。
小さく震える。
まるで。
その言葉に反応したみたいに。
俺は続けて言った。
「それってこの遺跡の名前か?」
訪問者は動かない。
でも。
また音が出る。
「……セ……ン……」
言葉が続かない。
その瞬間。
訪問者の体が崩れ始めた。
黒い体が砂になる。
指が崩れる。
腕が崩れる。
俺は言った。
「おい」
でも止まらない。
体が全部崩れていく。
最後に。
小さな音がした。
「……チョ……ウ……」
そして。
完全に砂になった。
静かになる。
風もない。
俺はレベリーンを下ろした。
「……何だったんだ今の」
セツナはしばらく砂を見ていた。
それから言った。
「さっき言ってた」
「アジーリ」
俺は頷く。
「それと」
セツナは少し考える。
「セン……」
「チョウ……」
俺は少し考えた。
そして言う。
「……戦士長?」
セツナは何も言わない。
ただ砂を見ている。
そのとき。
上から振動が来た。
**ドン**
俺は天井を見る。
まただ。
また何か落ちてきた。
でも。
さっきより重い。
**ドォン**
もう一度。
遺跡の天井から砂が落ちる。
俺は言った。
「……これ」
セツナも上を見る。
「さっきのより大きい」
三回目の振動。
**ドォォン!!**
天井の石が崩れた。
光が差し込む。
そして。
影が見えた。
巨大な影。
さっきの100メートル訪問者より。
**さらに大きい。**
俺は思わず言った。
「……嘘だろ」
地面が揺れる。
影が動く。
空が少し暗くなる。
俺はレベリーンを握り直した。
「……さっきより」
外から低い音が聞こえる。
巨大な足音。
**ドン**
**ドン**
俺は言った。
「でかいな」
そして。
次の戦いが始まる。




