巨影
# 第二章 巨影
地面が揺れる。
ドン……
ドン……
ドン……
遠くの砂が跳ねている。
俺はレベリーンを握ったまま、地平線の向こうを見ていた。
影が近づいてくる。
いや、近づいてくるというより。
**歩いてくる。**
一歩。
ドォン!!
地面が震える。
二歩。
ドォン!!
崩れた建物の壁が崩れ落ちる。
その影が完全に姿を現した。
高さ。
軽く**100メートル**はある。
腕が四本。
頭は歪んでいて、顔があるのかも分からない。
黒い体が太陽の光を反射している。
俺は思わず言った。
「……あれ本当に訪問者か?」
セツナは答えない。
ただ静かにダガーを構えた。
巨大な訪問者が止まる。
そしてゆっくり腕を上げた。
空気が震える。
「来る」
次の瞬間。
**ゴォォォン!!!!**
腕が地面に叩きつけられた。
爆発みたいな衝撃。
地面が割れる。
砂が空に吹き上がる。
俺は後ろに跳んだ。
衝撃波が体を押す。
「……力おかしいだろ」
巨大訪問者が腕を引き抜く。
そのまま横薙ぎ。
**ブォォン!!**
風圧だけで地面が削れる。
俺はしゃがんで避けた。
「そのサイズでそんな振り方するのか」
訪問者の腕がもう一度来る。
速い。
巨大なのに。
速い。
俺はギリギリで避ける。
地面が砕ける。
セツナが動いた。
砂を蹴る。
低い姿勢。
身体を地面に近づけて一直線に走る。
巨大訪問者の足元へ。
そこで急に方向を変える。
右。
左。
また右。
不規則な動き。
まるで蛇みたいに。
巨大訪問者の腕が振り下ろされる。
セツナはその直前で滑り込む。
**ズドン!!**
腕が地面を叩く。
その瞬間。
セツナが跳んだ。
足を踏み台にして。
空中回転。
ダガーが光る。
**シュッ!!**
巨大訪問者の足を切る。
すぐに着地。
そして離脱。
それがセツナの戦い方。
速さと軌道で翻弄して、
**一瞬だけ斬る。**
でも。
巨大訪問者は止まらない。
腕が降る。
**ドォォン!!**
地面が爆発する。
セツナが跳ぶ。
着地。
その瞬間。
もう一つの腕が振り下ろされる。
速い。
さっきより速い。
セツナはギリギリで転がった。
砂が爆発する。
俺は言った。
「四本腕って普通に反則だろ」
巨大訪問者が俺を見る。
一瞬だけ。
動きが止まる。
俺はレベリーンを構えた。
「じゃあ俺もやるか」
地面を蹴る。
走る。
巨大訪問者の足元へ。
その瞬間。
腕が落ちる。
速い。
俺は横に跳ぶ。
地面が砕ける。
石が飛ぶ。
砂が舞う。
俺はそのまま足に近づいた。
そして。
**斬る。**
レベリーンが黒い皮膚を裂く。
**ズバッ**
硬い。
でも切れる。
その瞬間。
体に力が流れ込む。
腕力。
反応。
少しだけ上がる。
俺は言った。
「なるほど」
巨大訪問者の腕が降る。
俺は後ろに跳ぶ。
衝撃で地面が波打つ。
セツナが横から来る。
ダガーを連続で振る。
**シュッ!シュッ!シュッ!**
でも。
刃が止まる。
硬い。
セツナはすぐに離れる。
巨大訪問者の腕が降る。
俺は走る。
腕の影に入る。
そして。
踏み込む。
**ズバンッ!!**
もう一度斬る。
力がまた流れ込む。
俺は言った。
「その腕さ」
巨大訪問者が振る。
俺は避ける。
「結構振り回してるけど」
もう一撃。
**ズガン!!**
足を斬る。
「隙だらけだぞ」
巨大訪問者が吠える。
低い振動。
空気が震える。
その瞬間。
四本の腕が同時に動いた。
「……おい」
腕が全部降ってくる。
地面が砕ける。
爆発。
砂煙。
視界が真っ白になる。
俺は跳んだ。
石を踏む。
崩れた壁を蹴る。
さらに跳ぶ。
巨大訪問者の腕の上に着地。
「上ならどうだ」
巨大訪問者が腕を振る。
俺は走る。
腕の上を。
そして肩へ。
セツナが下から叫ぶ。
「アユト!」
巨大訪問者が腕を振る。
俺は跳ぶ。
空中。
そして。
首へ。
レベリーンを握る。
「その体さ」
落下。
**ズバァァン!!**
刃が首を裂く。
黒い液体が飛ぶ。
巨大訪問者がよろめく。
地面が揺れる。
俺は着地した。
巨大訪問者がゆっくり崩れる。
ドォォォォン……
砂煙が上がる。
静かになる。
俺はレベリーンを振った。
黒い液体が落ちる。
体の中に力が流れている。
さっきより強い。
さっきより速い。
俺は言った。
「でかいだけだったな」
セツナは何も言わない。
ただ巨大訪問者の残骸を見ている。
砂が風で流れる。
崩れた体の中から。
石の破片が見えた。
セツナが拾う。
古い文字。
俺は聞く。
「読める?」
セツナは首を振る。
でも一つだけ分かる文字があった。
小さく刻まれていた。
**戦士団**
その下。
**戦士長**
そして。
**アジーリ**
俺は言った。
「またその名前か」
セツナは石を見つめたまま言う。
「この場所、たぶん」
「昔の国の跡」
風が吹く。
砂が舞う。
遠くで空が歪む。
また何かが落ちてくるかもしれない。
俺は空を見上げた。
そして思った。
この戦い。
まだ。
始まったばかりだ。




