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卒業〜キミと一緒なら〜

作者: 汐野 夢咲
掲載日:2026/03/07

もうお前と一緒にいたくない。

唐突にそう告げて私の元から去っていく彼。理由も

言わず、私もぼう然と彼の姿を見ていることしかで

きなかった。今、私は初めて「失恋」というものを

経験したのだ。

私を振った彼の名は櫻井 和也。中学に入ってから3

年間付き合っていてラブラブな生活を送っていた。

そんな楽しい日々は何の前ぶれもなく終わったの

だ。


高校受験目前のこの時期になぜこんな気持ちになら

なければいけないのだろう。私はただただ外を見な

がら立ち尽くしていた。


「めーいさっ。ボーッと突っ立ってどうしたの?と

っくに帰ったと思ってた」

その声を聞いて我に返る。そこにいたのは親友のあ

かり。小テストの追試を受けていたらしい。

「ううん。なんでもないよ」

「もしかして和也となんかあった?」

図星されて、抑えていた涙が溢れた。あかりが先生

にバレたらまずいから場所を変えようと言ってくれ

た。近くにある公園に場所を移し、あかりに全てを

話した。


「なにそれ〜最低なヤツ〜!高校は別々なんでし

ょ?そんなヤツ、もう忘れなよ!」

「そうだね。ありがと。話したらスッキリしたわ。

早く新しい彼氏見つけよ〜っと」

あかりと話したあと、家に帰ってスマホを開こうと

した。

私のスマホのロック画面は和也との2ショット。

いつまで泣いたらこの気持ちは落ち着くんだろう

か。

ロック画面を変える勇気は出なかった。


私は無事、受験に合格。和也も推薦がきているらし

い。

これで中学生も、和也にも卒業だ。4月から新しい

ステージが待っている。卒業式でも彼と話すことな

く家路に着いた。


高校生活は楽しいものだと思い込んでいた。

「あの日」がくるまでは。あの日以来、学校に私の

居場所はなくなった。でも単位が落ちれば留年して

しまう。私は単位を落とさないためだけに学校に行

っている。

私なんてこの世界にいる意味ないよ⋯誰も私を必

要としない。いなくなっても悲しむ人はいない。今

日は教室に行く気になれず、まっすぐ屋上に向かっ

た。ここから飛び降りれば辛い日々から卒業できる

さよなら。

私は思い切り地面を蹴った。


そのときだった。屋上のドアが勢いよく開いた。そ

して、

「愛咲!」

と聞き覚えのある声がして、速い足音が迫ってく

る。手を伸ばし、私の腕を掴んできた。振り返ると

ここにはいるはずのない人物がいた。

「和也?なんでここにいんの?」

彼は私が飛び降りることを知っていたのだろうか。

いや、彼は別の学校に通っているのでここにいるこ

と自体ありえないことなのだ。私の言葉に彼は思い

もしないことを言った。


「⋯お前に会いたかった」

「はあ?」

私を振ったくせによくそんなこと言えるね。と思い

ながら屋上に戻った。

それから屋上の隅で2人で話をした。


私が高校に入学して2ヶ月後の6月、あの日はやって

きた。昼食を食べ終わり、スマホのロック画面を見

ていた。そこにクラスメイトの高山がやってきた。

「その人、櫻井 和也じゃね?付き合ってんの?」

やばい、見られてしまった。高山はクラス1の問題

児で、目をつけられた人は、ひどいいじめを受けて

いる。次の標的は私か。でも和也とはとっくに別れ

ている。彼との関係で傷つくことはもうないだろう

このロック画面を変えられないほど未練はあるけど


それにしてもなぜ高山は和也のことを知っているの

だろう。考えていると高山が口を開いた。


「こいつ、浮気者だな。こんなヤツと付き合ってる

お前もバカだな」

今、浮気者って言った?言ったよね?その言葉を聞

いた瞬間、怒りが湧き上がってきた。

「和也が浮気なんてするはずない!証拠あんの?」

「大会で一緒になったとき、女子と手繋いでたか

ら」

「いつの話?」

「ゴールデンウィーク。去年の」

「はあ?」


和也と高山は陸上をやっていて、中学は違うけど、

2人とも足が速いことで有名なので、大会で一緒に

なることがあったのだろうと推測する。

だから「お前と一緒にいたくない」と言ったのかも

しれない。でも、

「和也は絶対浮気しないから!」

私は、足早に教室を出ようとした。そのとき後ろか

ら、

「そんなヤツ、信じるお前がバカなんだよ!」

と叫ぶ高山の声が聞こえた。でも私は無視して廊下

を走った。


昼休みが終わり、私が教室に戻ると、

「杉原が帰ってきたぞ〜!」

と高山が言った。クラス全員の視線が私に集まっ

た。目を逸らすように黒板を見ると、

杉原 愛咲は、櫻井 和也と付き合っている!

しかし、櫻井 和也には別の彼女がいる!

こんな浮気者と付き合っている杉原 愛咲はバカだ!

と黒板一面に書いてあった。これを書いたのは高山

だろう。


この日から、いじめが始まった。机の上に「死」と

書いてあったり、クラス中から無視され、いないこ

とにされたり。辛い日々が続いていた。もう、こん

な生活終わりにしたい。それなら、この世からいな

くなればいいんだ。そう思って今日に至る。


和也は泣きながら話す私に、真剣に耳を傾けてくれ

た。

「そっか。辛かったよな。高山、最っ低なヤツだ

な」

私は和也に1番聞きたかったことを聞いてみた。

「なんでここにいるの?」

和也は目を閉じ、深呼吸をした。


「愛咲に会いたくて転校してきたんだ」

「私に?」

「そう。一緒にいたくないって言ったのは、俺の学

校が遠いから、会えなくなるのが辛かったからなん

だ。浮気なんてしてないし、むしろ寂しかった」


やっぱり和也を信じて良かった。高山は私のスマホ

のロック画面を見て私をいじめるために作った話だ

ったんだ。安心していると、和也が話し始めた。

「俺、大会でいい成績出せなくてさ。推薦されたっ

ていうプレッシャーがあって。なんのために俺は陸

上を始めたんたんだろうって。愛咲と別れて初めて

気づいたよ。俺は愛咲がいなきゃなにもできないん

だなって」


私はもう一度スマホのロック画面を見た。

「この写真、俺もロック画面にしてるよ。俺たちに

とって大切な写真だもんな」


話していると、また屋上のドアが勢いよく開いた。

担任の先生に見つかったのだ。

「櫻井、杉原、ここにいたのか。授業も出ないでな

にしてたんだ?」

和也は、先生に私が高山にされていることを全部話

してくれた。すると先生が、

「そうだったのか。辛かったな。高山にはちゃんと

指導しておくからな。今日のことは許してやる。早

く教室戻りなさい」

「はい!ありがとうございます!」


教室に戻ろうとしたとき和也は言った。

「今日の昼休み、高山に言ってやるよ。もうやめろ

って」

「え!そしたら和也が標的にされるよ!」

「大丈夫。愛咲のためならなんでもしてやるよ」

「ありがと和也。大好き」

私は和也に抱きしめられた。

「俺たち、より戻そう。あのとき悲しませてごめん

な。俺も大好きだよ」

「もちろん。私もそうしたいって思ってたから」


私たちは教室に戻り、授業を受けた。隣同士という

こともあり、みんなからの視線をすごく感じたけど

和也がいたからどうってことなかった。


昼休みになり、高山がやってきた。今日は全員教室

に残っていた。私たちのことが気になるのだろう。

今日で最悪な日々から卒業だ。高山が口を開いた。


「久しぶりだな、浮気者。元気してたか?」

「ああ。元気だったよ。それにしても浮気者って呼

び方は気に入らないな。俺は一度も浮気したことな

いのに」

「はあ?俺はこの目で見てるんだぞ!」

「あれは俺の姉ちゃんだ。手なんて繋いでないし、

それはお前が杉原、いや、愛咲をいじめるために作

った話だろ?」


「違う」

「いい加減にしろ!」

和也がいきなり大声で叫んだ。

「愛咲はお前からいじめられるのが嫌で屋上から飛

び降りようとしてた。それを俺が止めたんだ。話を

聞いたら、いじめられてる。他の子も何人かやめて

った子がいるって言った。もうやめてくれ!」

すると高山は、和也に拳を見せ、殴りかかってき

た。私はとっさに目をつむり、衝撃に備えた。周り

の人も悲鳴をあげている。


そのとき、

「なにしてる!」

担任の先生が教室に入ってきた。高山の手を取り、

進路指導室に連れて行った。

高山がいなくなり、教室は元に戻った。みんな高山

を恐れていたのだろう。

「和也くん言ってくれてありがとう」

和也は、みんなから感謝された。


高山は、いじめていた理由を、泣いている姿が面白

かったからだと話したという。

放課後、和也と一緒に帰っていると、

「また、高山がなんか言ってきたら、俺が守ってや

るからな」

と和也が言った。

「ありがと。よろしく」

と返すと、照れながら、

「辛い日々からは卒業しても、俺からは卒業すんな

よ!」

「それ、どういうこと?」


「俺から離れんな」

「当たり前じゃん」

私はずっと彼から卒業しないつもりだ。

                  おわり

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