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漬物石、蜂蜜沼に溺れる。~輝きを失った外科医と、光を見失ったピアニストが奏でる再生のコンチェルト~  作者: 暁 美雲(あかつき・みくも)
第三楽章 運命なんて

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03-06.


いやいや私、絆されるな。

なるほど、そうは見えないけれど、ナオも相当酔っているらしい。

いや、からかっているに違いない。

だったら教えてあげるわ。


「さっき話したからわかるでしょう? 私なんて重くて……ほんと、ヘビー級より重いんだから。狙われたら最後。しつこくてうざったくて、20年付き纏うわよ? だから、冗談でもやめたほうがいいわ」

「へーえ、いいね」


いいって何? 普通引くでしょ。


「ねえナツミ、俺が言ってること、ジョークだと思ってる?」

「当たり前でしょ。だいたい、付き合ってもいないのに嫁って何よ。あり得ない」

「お見合い結婚なんて、付き合わずに結婚するんでしょ?」

「ナオと私はお見合いなんてしてないじゃない」

「じゃあ、面倒くさいけど、一回お見合いしてからにする?」

「どうしてそうなるのよ! しない!」

「でもナツミ、恋人は要らないんでしょ?」

「そうよ」

「じゃあ、黙って待ってても俺が恋人になるチャンスはないってことだ。ほら、だから真っ直ぐ俺のお嫁さんになってもらうのがいいかなって思ったんだよ。ねぇナツミ、好きになるのは結婚してからでもいいよ?」


ニコニコ笑うナオは……

そうだ、昨日もそうだった。馬耳東風。

ちっとも響かなくて、糠に釘打ってる気分なんだけど……。

あぁ、もう……。


「ねぇ、さっきから何なのよ。冗談もいい加減にして」

「冗談じゃないのにな」

「わけがわからないわ……」


冗談じゃなかったら何だというのだろう。


「ナツミと俺はね、ちょっとしたきっかけで昨日と今日を一緒に過ごした。それでナツミからいろいろな話を聞いて、俺にとってはすごく大切な時間になったんだ。ナツミはどうだった?」


……どうだっただろう。

駅で白馬の被り物をしたナオとぶつかるという、珍妙な出会いから始まった私たち。

そこから、こうしてナオに苦しい胸の内を明かしたこの時間までを、私は順に思い出していく。


「楽しかったし、苦しかったし……嬉しかった……かな」

「お、ハッピーな気分のほうが1つ多い。やったね」


なるほど、そう捉えるか。

至極前向きな考え方が素晴らしい。

ニコニコと笑うナオを見てると、私もつられて笑ってしまう。

……いやいや、何をニヤニヤしてるのよ、私。

ついさっきまで失恋して大泣きして、わけのわからないナオにちょっとイライラしてたくせに、どこがハッピーなのよ。


「ねぇナツミ、今日より後は俺たち、会う約束をしていないでしょ? 俺はね、ナツミのことを探って会いに行くようなことは、しないようにしようと思ってる」

「……えっ……そう……なんだ」

「何、その残念そうな顔」

「べ、別にそんなことないわ」


図星だった。

……いや、ちょっと待って。図星って何? 

いまいち掴み所がなくて、わけのわからないふわふわ年下男に、私は一体、何心を抱いているというのだろう。

誓って恋心ではないことは確かだ。

するとナオが私の正面に立つ。


「自然な流れに任せて、もしもそれでもまた会えたら……もう、そういうものなんだろうなって思ってくれない?」


ナオの問いに、意味がわからず首を傾げる。


「自然な流れ? そういうものって?」

「お互い会いたいなっていう気持ちでいっぱいになって、それで偶然会えたら……一緒にいる運命ってこと」


一緒にいる……運命? 

心臓がドクンと鳴って、ちょっとキュンときた。

……え? だからキュンって何よ。

たった2日しか会ってない相手に絆されすぎだ。


「なっ、何言って……運命なんてそんなのないわよ! からかわないで! どうせ、もう会えないもの」

「どうしてそう言い切れるの?」

「それは……」


私は明日には日本にいない。アメリカに戻るから。

そう言えずに口ごもる。


「でも『会えたらいいな』って考えて過ごしてたら、少しだけ毎日が楽しくならない?」


物凄く離れたところに住んでいるのに、偶然にもナオに再会する? 

限りなく可能性は低いのに、それを楽しみに毎日待つの?


「楽しくならない。きっと苦しくなるだけだわ」


そう答えると、ナオは首を傾げた。


「苦しいって、どうして?」

「……どうせ会えないから」

「へーえー。俺に会えないと苦しいってこと? ……嬉しいな」


そう言われてカッと顔が熱くなった。


「ちっ、違う! 特別な意味じゃなくて、友達としてってことよ。変に期待して待つのは嫌いなの」


それに『一緒にいる運命』だなんて、まるで運命の恋人のようだ。

好きな相手でもないのに……。

ナオの意味不明さにだんだん腹が立ってきた。

するとナオは、この2日間で見せたことのないような真面目な顔で私を真っ直ぐ見つめる。


「ナツミと俺は、きっと会えるよ。だからもしもまた会えたら……その時はそういう運命だから、おとなしく俺と恋愛してって言ってるんだ。それで……俺と一緒に進むことを考えて?」


少し低くなった声とナオの表情にドキッとする。

……急に男らしくするのはやめてほしい。

照れなのか苛立ちなのか、瞬く間に私の顔は熱を帯びる。


ナオの猛攻(*´艸`*)♡

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― 新着の感想 ―
ナツミさん、ナオの猛攻撃にもう落ちちゃってー «٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク ナオに全て包み込んでもらって欲しいな(*´˘`*)
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