第9話 ダンジョンモンスターが怯えている
-side カルム-
「おおーー!これがメタルダンジョンかー!」
「すごいー!」
メタルダンジョン1階層。俺と妹ソフィアは初めてみる光景にとてもはしゃいでいた。
天井も壁も床も、ぜんぶ金属でできていて、灰色の鋼が果てしなく続いているのに、どこか神殿のような荘厳さがある。壁には青白い光を放つ鉱石が埋め込まれていて、きらきらと反射している。
「圧倒されてしまうな」
「気持ちはわかるけど、ここもダンジョン内だからね。戦いは既に始まっているわ」
「景色に惑わされず、油断せずに行こうぜ!」
思わず、景色に気を取られているところをアイリスさんとレオンにアドバイスされる。
確かに、魔物がどこに潜んでいるかわからない今、景色の情報は無視するべきだろう。
少し勿体無いと思うが仕方ない。
「注意しながら先に進もう」
「はーい!」
シフォンは分かっているのか分かっていないのか、呑気に元気よく返事する。
まあ今はいいか。そのうち、ダンジョンの危険性を知って学んでいけばいい。
それから数分間。俺たちは注意しながら歩き続けた。
しかし、魔物は全く現れない。
「なんか、おかしくないかしら?魔物が一向に出ないんだけど?」
「イレギュラーが起こっているんだ。こんなもんだろ」
「それにしても……」
アイリスさんは違和感を感じているようだが、レオンこれくらいは想定内だと言う感じのようだ。
俺も疑問に思ったので、再び探査レーダーを使う。
今度はより近距離のモンスターを正確に測るためのモードだ。
「おー?周りには結構いるみたいだよ?」
「まじか!」
「やっぱりね」
「でもなんでだろう?襲う気配がないどころか、全くその場から動く気配はないみたいだ」
「試しに、こちら側から魔物に近づいてみようぜ」
「分かったー」
疑問に思った俺達はレオンの提案でテキトーにターゲットを決め、そこへ向かって歩くことにした。
「ありゃ?」
すると、すぐに違和感に気づいた。ターゲットと俺との距離が縮まらない。
俺達も移動しているが、ターゲットも移動しているのだ。
「もしかして、逃げてる?」
「ダンジョンのモンスターがか?」
「うーん?そんなの聞いたことがないわねえ」
「「もしかして、これは……」」
「……?」
レオンとアイリスさんが顔を見合わせている。二人して、何か思い浮かぶことがあったのだろうか?うーん、なんだろう?冒険者としての経験も、ダンジョンを潜った経験も浅すぎて全然分からない。
ちなみに、一般的に、野生のモンスターは相手の強さを察知して逃げる能力があるので、レオンやアイリスさんクラスが護衛についているとそもそもモンスターが襲ってこないという場合が多々ある。
それに対して、ダンジョンモンスターは野生に比べて相手の強さを察知する能力があまりないポンコツが多いので、どんな冒険者でも比較的遭遇するものなのだ。
「おっかしいなー」
疑問に思った俺は、別のターゲット、また別のターゲットと定めて実験したが結果は同じだった。
「あーだりー。俺が1匹捕まえて来ようか?」
「それがいいわね」
「うん、お願い」
痺れを切らしたレオンが1匹追いかけて、捕まえてくれることになった。
本来、魔物を捕まえるという行為は危険なのであまりしないが、まあ、Sランクのレオンなら大丈夫だろう。ここは1階層の魔物だし。そう思って頼む。
「捕まえてきたぜ!」
「はやっ!」
1、2分後、レオンは魔物を脇に抱えて帰ってきた。
あれは……メタルスライムだ。金属を食べることで、体が金属になったスライムである。
しかし、ブルブルと震えていた。
「な、なんか随分と怯えているようだけど」
「あーそうだな。俺が捕まえた時はそうでもなかったんだが、ここへくる途中でどんどん震えが加速していってな」
「やっぱり、そうなのね」
「……?アイリスさん。思い当たることがあるんですか?」
「ええ」
「俺もあるぜ」
「レオンまで?」
なんだろう?と考える。しかし、やっぱり何にも思い浮かばない。
「分からないです。なんですか?」
「なあカルム」
「「なにやらかした?」」
二人がズイっと顔を近づけて問い詰めてくる。
「ええ?俺?」
まさかの冒険者とかダンジョンの経験とか関係なし?
普通に武器作っただけなんだけどなー。なんかやっちゃったんだろうか?
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