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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【アビゲイル】守りに入ります【漫才】

作者: 江保場狂壱

安倍登志夫あべ としおでーす!」

後藤繁ごとう しげるでーす!!」

「「ふたり素敵なアビゲイルゥゥゥゥ!! アビビビビビビビビ!!」」

挿絵(By みてみん)

 安部は七三分けの三十歳ほどの小男で、後藤はスキンヘッドにロイド眼鏡をかけた巨漢。

 二人とも黒いスーツに、アゲハ蝶のようなネクタイをしめていた。

 挨拶と同時に両手を突き出し、決めセリフを吐く。これがアビゲイルの前口上だ。まるで光線でも出すかのような勢いが大事なのである。


 安部は両腕を構えて亀が首を引っ込めたように顔を隠す。もしくは某筋肉超人の防御にも似ていた。その様子に後藤は疑問を抱く。


「君いきなり顔を隠してどうしたの? 不細工な顔を晒すのがつらくなったのか?」

「不細工じゃねぇよ、失礼だろ!! お前の顔こそ隠した方が世のためだぞ!!」


 切れだす安倍に、後藤は呆れていた。やれやれと肩をすくめる。


「世のためって、いったい俺が顔を出したらどうなるんだよ?」

「お前の顔を見た女たちは、一斉に恐怖でおもらしするんだよ!!」

「そんなに怖くないだろう!! 俺の顔を何だと思っているんだ!!」


 今度は後藤が切れた。拳を握り、地団太を踏む。安倍と並ぶと巨人が地震を起こしているように見えた。


「怖いというより、お前の顔が美しすぎて、女性が恐怖するんだよ!!」

「なんだよそれ!! というか俺の顔が美しいってなんだよ!!」

「君の顔はエルヴィス・プレスリー並みで、道行く女たちは感動の恐怖に失禁パレードしちまうのさ!!」


 安部は腰を低くして漏らす仕草をした。後藤は照れ臭そうになったが、すぐに真顔になって怒鳴る。


「というか話を脱線しすぎだわ!! お前は何で顔を隠したんだよ!!」


 話を戻そうとする後藤。安倍は胸を張って答えた。とても偉そうでイラっと来る。


「決まっているだろ、俺は守りに入ったんだよ」

「守りって、何から守るんだよ」

「人生の敵だよ」


 安部は両腕で顔を隠す。亀のように丸くなっていた。


「人生の敵って誰だよ。意味わかんないよ」

「俺の女房を寝取るチャラ男とかいるだろ? 特にお前は寝取りが大好きじゃん。履歴書にも他人の女房を寝取るのが趣味って書いてたじゃんか」

「書かないよ!! なんだよ趣味が寝取りって!! 俺は寝取られる側のほうだよ!!」


 後藤切れる。安倍はどや顔であった。


「寝取られるって、お前の女房は人様に寝取られるほどの価値あるのかよ。むしろ質屋に預けてそのまま質流れにした方がいいんじゃないか?」

「誰が質屋なんかに預けるか!! というか人の女房を思いっきりディスりやがって!! お前のほうも似たようなものじゃないか!!」

「いやー、それほどでも」


 切れる後藤に対して、安倍は照れ臭そうに笑った。太陽のような笑顔である。


「誰もほめてないよ!! というかお前はそんな奴を警戒しているのかよ!!」

「他にもいるよ。人の女に手を出しまくる竿おじさんとかね。君も好きだろ竿おじさん。小学校の授業で、将来の夢は竿おじさんと胸を張って作文を読んでいたじゃないの」

「読んでないよ!! なんで竿おじさんになりたいんだよ!! 寝取りとどこが違うんだ!!」


 ぎゃーぎゃーわめく後藤。息を切らして肩を震わせていた。

 そこに安倍がポンと後藤の肩を叩く。


「いいかい、竿おじさんは夢があるんだ。女子校の用務員になって、女子生徒たちを体育館の倉庫に連れ込み、ハッスルハッスルすることができるんだよ。俺は高校時代に今の女房に拉致されて、ハッスルハッスルさせられたけどね」


 てへぺろと安倍はベロを出して照れる。まったく可愛くないので人を苛立たせる笑みだ。


「いやいや、それは犯罪だろうがよ!! というかお前高校時代にそんなことしてたのか!! 体育の時間が終わっても教室に戻ってこなかったから、何やってるのかと思ってたよ!! しかも女房の方が誘っていたのかよ!!」

「そうだよ~。あいつはスクール水着に身を包み、バスバスシッコシッコと時期の外れた体育祭を開催しましたよ」

「いやお前、テレビに放送されているんだぞ!! 奥さんが見たら絶対切れるだろうが!!」


 すると着信音が鳴り響いた。安倍はスマホを取り出すと、誰かと話し出す。

 そしてスマホを切って、懐にしまうと、頭を下に向けた。


「いやー、今の女房からですわ。帰ってきたら徹夜でフルマラソンの刑と宣告されましたよ。ここ最近ご無沙汰でしたから、鼻息荒くして興奮してましたね」

「おまえそういうことを口にするなよ!! お前の家庭事情なんか知りたくないんだよ!! というか女性の抗議電話がひどくなるぞ!!」

「おう!! 来るならこいや、くそばばぁども!! 文句を言うやつはすべて俺が殴り飛ばしてやるぜ!!」


 そう言って安倍はファイティングポーズを取った。ボクシングのようにパンチを打つ。


「お前さぁ、そんなこと言っているとディレクターさんやスポンサーさんも怒ってテレビに出られなくなるぞ。それでもいいのかよ!!」

「いやー、それは困りますよ。だって俺たち最近売れ始めているでしょう? なのに無謀な冒険をして仕事をなくしたら家族を守れなくなるじゃないですか。奥さんと小学生の子供の三人暮らしなんですよ。金がかかってしょうがないし、収入が減ったら困るんです」

「だったら控えろよ!! というかお前が守りに入ったのはそれが理由なんだろ!? 最初からそれを言えよ!!」


 安部は胸を守るようにくねくねしている。後藤は切れた。


「だって口にするの恥ずかしいんだもん♪」

「何かわいこぶりっこしてんだよ!! 男のなんかみたくないよ!!」


 パンと安倍の頭を叩く後藤。いててとジェスチャーをする安倍。二人はそろって頭を下げる。


「「どうもありがとうございました!!」」

 再びアビゲイルを描くとは思いませんでした。

 安部登志夫は安部なつみさんと古川登志夫さん。

 後藤繁は後藤真希さんと千葉茂さんから取りました。

 容姿は安部は榎本健一で、後藤は古川ロッパです。イメージボイスは安部は中村悠一さんで、後藤は杉田智和さんですね。


 相馬かなでさんに低評価されるために、下ネタを連発しました。守りに入るより攻めますよ。

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― 新着の感想 ―
守りに入りつつも、 マシンガントークの連発が素敵ですね。 少しシモ成分が強いけど、 個人的にはこれくらいの方が面白く感じました♪
∀・)相変わらず面白いっていうかすごい。会話文と地の文がうまく絡み1つのハーモニーもとい1つの作品をうまく奏でておりました。もふもふ王国の漫才もそうでしたが、ここまで付き合いが長いと愛着も湧きますね。…
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