プロローグ
毎日、コツコツ書ければと思ってます。
小さな黒玉。魔王が吐き出したそれは、先程までの見るからに恐ろしい魔法とは違う。あれはもっと危険なものだ
「流石は魔王ってか、簡単には負けてくれないな」
「簡単ってタケル右腕無いじゃん」
「なんだよ、左腕があればマヒルは抱けるぜ」
「帰れたらね。流石に考えたげる」
「じゃあ、意地でも帰らねーとな」
2人が軽口を言いながらカスミにならんだ。緊張すると軽口を言い合うのはいつもの事だ。転生前は受験の前とか、タケルの試合の前とか、マヒルのピアノの発表会の前とか、そういえば私がイチロウに告白する前にも2人は言い合っていた。本当に大好きな2人。
「マヒロにタケル、今までありがとう」
言うとカスミは2人に結界を張り前に進んだ。『エクスカリバー』は1日に一回しか使えない。そんな事わかってる。もし使えば自分の魂ごと捧げられ自身は消滅する。そんな事わかってる。既に魔王につかった、そんな事わかってる。
カスミは両手の親指と人差し指で四角を作ると、四角を狭めていく。範囲より貫通力。黒玉の後ろに魔王がいる、まとめて貫く。
目が熱い、鼻血も出ているかもしれない。四角の中には膨大なエネルギーが蓄積されていて、気を抜くと拡がってしまう。
黒玉は少しずつ大きくなっている。いや黒玉の中から無数の指が生え、中から押し広げようとしている。
あれはダメだ、出てこさせてはダメだ。指がてでからは黒玉は着実に押し広げられている。
カスミは『エクスカリバー』を放とうとした。
「死んじゃうだろ」
懐かしい声とともに、背後から腕が回ってきて、四角に構えられた両手を優しく包み込んだ。
「あとは俺がやるよ」
◇◇◇
「多くの者達が転生の秘法で異世界から呼ばれた。そして遂に勇者カスミと剣王サトル、賢者マヒルにより、魔王は倒された」
「毎回短くなってない?今日はとっても短い」
「もう飽きた。読むのに飽きたし、この話を口にするのにも飽きた」
じいちゃんとの話が思い浮かんだ。シロウは事あるごとに、じいちゃんに魔王の討伐譚をせがんだらしいが、あまりにしつこいので、じいちゃんはある事ない事をシロウに教えていたと母がいっていた。
棺桶に入れられたじいちゃんは微笑んでいる。あの微笑みはよく知っている。シロウの裏をかいた時の微笑みだ。あの微笑みを浮かべてシロウの木剣を叩き落とし、頭を叩かれた。小さな頃はそれでよく泣いたもんだ。
「そんなに泣くな、男が泣くのは3回だ。生まれた時、母が死んだ時、そして俺が死んだ時だ。だからシロウはあと一回だな」
そんな事を言っていたじいちゃん。じいちゃんのおかげで僕はもう泣けなくなったじゃないか。
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