空絵師
雨が間も無く止む頃、絵疏羅琴の足は急いで自宅を目指していた。傘を左右に強く揺らして、足元に広がる水溜まりなんて気にしている場合ではない。(早く帰らないと、雨が止んでしまう!どうか……間に合って!)バシャバシャとしぶきが脚やジーンズにかかるが、そんなのは後で洗濯、シャワーで解決出来る。自宅の玄関先には、琴の兄妹が待っている。「琴お姉ちゃん、帰ってきたよ!」「早く早く!雨、止んでしまうよ!」「待って……!今、準備……」事は急いで、中に入り、リビングのサッシの前に辿り着く。そこには琴の兄や妹たちが六人待っていた。皆準備に入り、そして琴も兄妹の中に位置を決めた。雨が止んだ。「いくぞ!」長男が声を出した。兄妹たちは気持ちを合わせて持っているクレヨンでサッシの窓に曲線を描いた。綺麗な七本の曲線は、重なる事なく窓に伸びていく。<はいっ!>兄妹全員が一斉に叫ぶと、七本の曲線は窓から雨上がりの空へと移動した。雨上がりの虹が、見事に青い空へと架かった。<大成功!>全員が合わせた喜びの声は、虹のように綺麗に伸びていた。