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11.レベルアップ!


「さてさて~……。湖に影響は無いようで何よりだったね~」

「そう……ですね?」


 激闘から一息つくために、俺たちは湖のほとりに腰掛ける。

 結局神聖っぽいオブジェクトは根こそぎ破壊され、中央の湖部分以外は一面焼け野原だ。最初に景観が綺麗だと思った俺の気持ちを、今すぐ返して欲しい。


「あはは~。まぁ命の危機だったしね~。仕方ないよ~」

「お前もカムワロと同種かよ……」

「女神だしね~」


 なんというか。

 女神、やりたい放題だった。

 理由をつければ何をやっても良いと思っているのだろうか。


「カムワロとは微妙に違うよ~アタシ」

「そうなのか? 俺にとっては、同じように見えるんだけど」


 主に攻撃方法とか。

 パワーも魔力(?)も桁違いじゃん。


「あ~、一定の強さ以上になると、同じ風に見えちゃうかもねえ」


 言ってトライオンは、姿を人間体に戻す。うん、戻してくれて非常にありがたい。露出が多いのも目に毒だが、それよりも何よりも、ドラゴンをちぎっては投げしていた禍々しい四肢を見るのが、怖くもあったのです。

 色気と恐怖が同時に混在してるとか、一人ホラー映画みたいなヤツだ。


「え~っとね~……。けっこう戦闘スタイルは違うんだよ~。カムワロは基本、でかいからさ~。待ちの姿勢なんだ~。その分アタシは小回りが利くから、スピードで制圧するってカンジ~?」

「うーん……、言われてみれば、そうなのか?」


 しかし、でかいからって。

 すごいシンプルな理由だな。


「しかしそうか……。あの白い空間の体格が、実際の姿なんだよな……。俺たちと一緒に行動してるときのカムワロは、あくまでも人間の姿だと」

「何とも言えないところなんだけどね~。

 人間界のルールに無理やり『存在(すがた)』を適合させてるだけだから、人間サイズも、それはそれで本来の姿だよ~」

「ううんややこしい……」

「何にせよカムワロの戦闘スタイルは、パワー重視で何もかもひねりつぶすってところだね~」


 俺からすると、トライオンも十分パワータイプな気がするけどな。基本一撃で沈めてたし。


「けっこ~色々違うよ~、アタシとカムワロは~」


 トライオンはそう言うと、すくっと岩から立ち上がり、こちらへ歩み寄ってきた。


「ほら。髪も短くしてるしね~」


 薄い色合いの毛が近くに寄る。柑橘系のような甘い匂いがふわりと香り、ややどぎまぎしてしまう。


「そ……、その言い方だと、髪の長さは自在に変えられるって感じなのか?」

「そだよ~。髪だけじゃなくて、細かい部位なら、多少の『設定』は変更可能なんだ~」


 腕の本数とかねと言って笑う。

 うん。腕の本数は細かくないと思います先生。


「髪は、短いのが好きでさアタシ~」

「ふぅん」

「おっぱいに髪の毛当たるのイヤなんだよね~」

「そうなのか」

「ビンカンだからね~。このあたり~」

「……そうなのか」


 そうなのですか。

 ついじっと見てしまう。

 確かに……。おっぱいすげえ……。

 服の上からなのに、彼女の双丘からは、弾力と柔らかさが伝わってくる。

 やばい……。カムワロみたいに激しい性格ではない分、俺の緊張感も若干薄くなっている。そんな心の隙間に、無防備さとか無警戒さがエロスとなって入り込んできた。端的に言うとめっちゃムラムラしてきた。

 アレだ。教室の端とかで、めっちゃ無防備に、胸元とか足とか開いてくつろぐギャルを見たときみたいな。


「他の部分はどうだろうね~」


 俺の心情を知ってか知らずか、トライオンは足をぱたぱたさせながら手ごろな岩に座る。一度スイッチが入ってしまった俺からすると、一挙手一投足に煩悩が付随してくる。

 たぷたぷの乳! むちむちの足! もちもちの二の腕にぷるぷるの唇! 助けて理性!


「角とかもけっこ~違うよ? ほら」

「お、おう……」


 うっひょおおおおお!⁉ 近い近い近い‼

 身長差があるため、俺の視線の部分には丁度彼女の角がある。鹿のような枝分かれした頭部横の角と、額から鋭く伸びた二本の小角がよく見える。

 そして。その分距離が近い。ゼロ距離と言っても良い。

 突き出たおっぱいが当たりそうになっているし、彼女なら当たったとしても気にしないだろう。だから恐ろしい。

 こんな煩悩状態でおっぱい当たって見ろ? 無理だぞ。抑えられないぞ。俺の中の獣があっちイッたりこっちイッたりで大変なことになるからな⁉


「目もね~、地味にオッドアイなんだよね~」

「おほぉん⁉」


 物理的に顔が近い。ポッキーゲームを開始するくらい(したことないけど)の距離だ。そしてもう彼女の体温を感じられるまでに、接触と言うか密着している。これはもう、もう、もう俺のエナジーが、不用意に漏れ出て、しまいそう――――


「お、イった~」

「ふぁふぃっ⁉ イ、イッてないですよ⁉」

「いやイケたイケた~」


 距離が近いまま、トライオンはそう言って俺の背中の方へと手を伸ばした。

 手は背中――――を通り越して、背後の空間へ。


「……ん? 空間?」


 胸元に当たるおっぱいの感触もそこそこに、俺は背後でぬちゃぬちゃという不穏な音をキャッチする。


「……何してる?」

「探し物~。……お、」


 やっぱりイッてた~と呟きながら、俺の背後の空間から、何かをにゅぽんと取り出した。


「はい聖剣。あげる~」

「聖剣⁉」


 え、何、どういうこと⁉

 驚きつつ目の前の物体を見ると、


「だってココ、聖剣が眠る湖だもん~」

「聖剣の……って、えぇ……、そうだったのか……」


 なるほど? 言われてみれば確かに、神聖なオブジェクトっぽいものもあったし、空気もやたら澄み切っていた。……さっきの戦闘で全てが台無しになったけど。


「アタシ、そういうの担当なんだよね~」

「そういうのっていうのは……、武器を渡したりする?」

「そ~。なんて言えばいいかな~……。勇者が冒険していって、ある程度い~カンジになってくるじゃん~?」

「あぁ……。なんつーか、重要な敵を倒したり、重要な国と関わったり、重要な仲間が加入したり、とか?」

「そそ~。わかりやすく言えば、レベルが上がったときね」

「ふむ」

「それでそんなタイミングで~、ココ、トーギッツの湖に導くんだ~。んで、聖剣渡すの~」

「軽いなぁ……」


 そう言えば『導きの』女神でしたネ。……とんでもない強さだったから完全に忘れてたけど。


「ちなみに~、土地のガイド役がカムワロで~、こういった物品(アイテム)を渡すのがアタシの仕事ね~」

「そこも役割あるんだな」

「あるよ~。だって、世界ガイドは流石にアタシじゃあね~。純正の女神でないと~」


 トライオンは謎の事を言いながらも、こちらへ聖剣を「は~い」と渡してくる。

 俺は疑問を頭に残しながらも、それを一応受け取った。

 見た目ほどの重みは無く――――というか、むしろ全く無く、ともすれば握り損ねて落としてしまいそうだった。

 長さは一メートルちょいくらいあるのに、重さは小型USBメモリくらいしか無いような……。これも、女神パワーなのだろうか。

 そんなことを思っていると。身体の中がちょっとだけ温かくなるような、熱を感じた。

 そういえばトライオンとの会話が終わった判定になるのか。経験値がどうとか言ってたな……。


「おぉレベルが上がったっぽい……って、ナニコレ⁉」

「おお~。初レベルアップ、おめ~」

「い――――、いやいや! そんなネトゲくらいのノリで言われても⁉」


 ステータス画面を慌てて表示する。しかしそんなもの、見なくても分かった。

 それくらいに、自分の『中身』が変貌を遂げているのが実感できる。


「――――うぉ」



 勇者 ユウスケ

 身長 169cm  体重 78kg


 レベル 988

 体力 567573  腕力 34097  速度 184911

 知力 36232   魔力 30890  運  9879



「なんだこの数値‼‼‼‼‼‼⁉」

「おお~」


 驚愕する俺を他所に、ぱちぱちと手を叩くトライオン。

 いや暢気すぎだろ……。めっちゃおかしなことになってるんだが⁉


「ト、トライオン……! トライオンさん……⁉ こ、これってどういう……?」


 俺ががくがくと震えながら聞くと、彼女は腕組みをして「う~ん」と首を傾げ、マイペースな口調で答えた。


「ユ~スケは~……、スピ~ドタイプみたいだね~」

「そういうことではなく!」


 違うよ! ここまできたら、もうスピードがどうこうとかの話じゃないんだよ!

 微差だよそんな数値は! いや、文字化けしてるヤツが居る以上、まだまだ上はあるんだけどさ!


「あぁちなみに知力値なんだけど~。それたぶん、戦闘中に効率的に動くことが出来るようになるってだけで、自頭が良くなってるわけではないから勘違いしないようにね~」

「いらない情報!」

「え~? いるよ~。これでいっそう効率よく、逃げることが出来るじゃん~」

「……ここまでの身体能力を持ってしても、俺の行動は逃げる一択なんだな」


 トライオンは「あはは~」と笑い、伸びをする。


「それじゃあ、サクサク行こうか勇者様~」

「なるほど……。これで名実ともに、勇者ってわけだ……」


 レベルも上がって人知を超越して、伝説の剣とやらも手にしたしな。

 しかし驚くことに、異世界に来てからまだ一日も経過していないのだ。どれだけ展開がスピーディーだというのか。





「ちなみにこの剣って、どうすればいい?」

「慣れないだろうけど腰に差すか背中に担いどいて~」

「なんか、ギター持ちたてのバンドマンみたいになったな……」

「武器扱う人なんて大抵そんなもんだよ~」





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