その1
「僕には案外深い悩み」の続編です。
前回の終わりに、夏休みに入ったら、仲の良いメンバーで海に行く約束をした「僕」は、再びある問題に直面し、悩み始めるのでした。
「や〜、困ったなあ…。」
自分の裸が風呂場の鏡に映っている。
いつもの見慣れたそれだけど、さっき気づいてしまったことがある。
普段、自分がどれほどいい加減に体を洗っていたのか、思い知らされる出来事。
それは…両方の乳首に「毛」が生えていることに、つい今しがた、ようやく気がついたのだった。
一体、いつ生えてきたんだろう?
そんな、昨日今日でここまで長くはならないはず。
なのに、僕は今の今までまるで気づいていなかった。
何故?
今日、たまたま気づいたのは、「女子も一緒に海に行く」から。
浜辺で上の服を脱いだ際、自分の体を否応がなしに、その場にいる様々な人の目に晒されてしまう。
全く知らない人達ならば、そこまで気にする必要はないのだけれど、どうしても気にしちゃうのは、一緒に行くのが男同士だけではなく、「女子」も混ざっているから。
男達だけなら、ホント、全然気にしていなかったと思う。
だけど、今回は「女子」も一緒だから。
「女子」だよ!「女子!」
ただの女子だけならまだしも、「いつでも会いたい」って思って、会える時は会う約束を取り付けた、坂口メグちゃんが混ざってるんだもの。
坂口メグちゃん。
まだ、ただの「メグちゃん」とは恥ずかしくて言えないけど、フルネームの「坂口メグちゃん」なら、かろうじて言える、様に、なった。
ちょっと練習したから。
じゃなくって、海に行くメンバーに普通の女子だけじゃなく、気になってる女子が混ざってる、そこが一番の問題。
だもんで、脱いだ姿を見せても大丈夫かと、確認作業中に見つけてしまったのが今回の「毛」だ。
大人の男の人ぐらい堂々とした「毛」ならいざ知らず、僕のはほんの申し訳程度。
僅か3〜4本の話だ。
遠目だと目立たないのかもしれない。
けれども、これはどうなの?
僕の傍、2メートル以内だったら…確実に見つかってしまうであろう「毛」
くすくすくすと笑われた上、「ニッキって、乳首から申し訳程度、毛が生えてるんだね。」なんて言われようものなら、僕は、僕は、高速で砂浜に穴を掘って隠れたい。
バカだ!
それは十分わかっているさ。
わかっていても、なかなかどうして。
僕は鏡に映る自分の体と睨めっこ。
さあ、どうする?
抜いてみたらどうだろう?
毛を手で摘んで引っ張ってみる。
イタタタタタタ。
あれ?すんごく痛いや。
じゃあ、T字の剃刀で…
いやいやいやいや、間違って乳首の先端をガッとやっちゃったら、血の海になっちゃうよ。
どうする?
あ!
いいこと思いついた!
僕はすぐさま脱衣所の洗面台にある、お父さんの鼻毛切り用の小さいハサミを使うことにした。
これで、毛を切ればいい。
そうだ!そうしよう!
早速、乳首の毛を少し痛いけれど、ピーンとなる様に引っ張った。
そうしなければ、間違って乳首の先端を切ってしまいそう。
そうなると、また血の海になっちゃうよ。
ゴクリと唾を飲み込むと、僕は失敗しない様、神経を集中させた。
大丈夫!大丈夫!
イケる!
絶対に成功するから!
何度も自分にそう言い聞かせる。
そして、いよいよ…チョン。
切れた!
乳首に傷をつけることなく、上手く出来た!
僕は風呂場で1人、歓喜に沸いた。
わ〜い!わ〜い!とひとしきり盛り上がった後、まだ、反対側も残っていることに気がついたのだった。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。前回の「僕には案外深い悩み」の続きから始まりますので、まだお読みいただいていない様でしたら、ぜひ、お読み下さると、物語がより深く理解できるとおもおいますので、どうぞ宜しくお願い致します。