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短編

白線のむこうがわ

作者:

 視線を落とすと、白い雪が溶け、黒々とした土が顔を出していた。

 昨日は今シーズンで最も寒いんじゃないかと感じたが、それは的を射たものだったらしい。

 涼しい声が聞こえた気がしてふと目を覚ました私は身を起こし、カーテンの隙間から窓の外を覗いた。

 遥か上の暗い雲から雪は、まだ追えるほどの遅さではらはらと落ち、向かいの家の屋根にうっすらと層を作っていた。学生時代にも校舎にたまに雪が積もることはあったから見慣れないわけではないのに、私は何故か遠い昔に訪れた北海道と記憶を比べていた。あれは、年明けではなく、年末だったなと。

 何気なしに窓に触れてしまい、すぐに手を引っ込める。外気の寒さを侮っていた。

 暑すぎもなく寒すぎもしない土地で育ち、それから都心に移動したからか、雪が降るほどの寒さは得意ではない。暑いなか長袖を着ることにはとうに慣れたのに、寒い時は本能的に否定的なことを思い出すからか、あまり得意ではなかった。口では、物理的に負荷を重ねることで対策できる、と言っておきながら。

 ここから離れて生きてはいけないなと、つくづく思う。冷たい窓に額をくっつけ、小さくため息をついた。

 ああ、仕事であっても、ここから移動したくない。両親も心配だし。勿論、隣で寝る恋人の気持ちも。そういうことに慣れていない。大事なものが遠くにあると、その大事さには気づきにくくなるだろう。そうだろう。

 誰に問いかけるわけでもないのに、問答して、わたしはようやく布団に戻る。明日の朝には雪は溶けているだろうか。あまり積もりすぎないと良いのだが。

 明日からまた雪の白い線を越えて、夜明けを渇望するのなら。


雪の時に撒く白いじゃりじゃりってなんだったのか思い出せません。

炭酸カルシウム?

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