付与術師、盗賊と拳を交える。
七大迷宮の一つ、【常闇の遺跡】を攻略した俺は、新たな仲間ステラと共に次なる目的地、武術都市『ブンバム』に向かっている最中だ。
「……む」
ふと、ステラが明後日の方向を見た。
耳をピクピクさせて……警戒するように、九つの尻尾をぴーんと立てる。
「主人殿。何やら騒ぎが起きてるようじゃぞ?」
「本当か?」
こんな所で騒ぎなんて……冒険者か? 其れとも……。
「行ってみよう。何かあったのかもしれない」
「うぬ、了解じゃ!」
ステラの指示の元、その場所に向かうと其処には豪華な馬車とその周りを囲む武装した複数の男達が見えた。
周りには何人もの三人の騎士が倒れており、残りの二人が馬車を守っていた。
取り囲んでいる男たちは合計で三十人。何奴も一目でろくでなしの人種とわかる。
――盗賊。
人を人とは思わず、襲い、餌にする屑。
「テメェら、残念だったな!俺たちに目をつけられるなんてなぁ!」
「不幸過ぎて涙が………なぁんて言うとおもったか!?」
「ぎゃはははっ!いいね!いいね!」
「……お前たち!我々が何者か知っての狼藉か!」
「あぁん? んなの知らねぇよ。ただ立派な馬車だと思ってな」
男達は下品に笑う。
盗賊に取り囲まれている騎士たちは下手に動けないでいる。相手は騎士すらも倒す手練れの様だ。
その様子を、俺達は木陰に隠れて見ていた。
「……盗賊か。かなりの手練れだな」
「そうじゃな。其れに数もそれなりにおる。どうするのじゃ主人殿よ?」
「そんなの勿論助けるに決まってる」
「まぁ、主人殿ならそう言うと思っとたぞ」
ステラは微笑みを浮かべてウンウンと頷く。
「それじゃあ、行くぞ!」
「うぬ!」
俺たちはガサッ、と木陰から飛び出る。
「何もんだ!?」
盗賊も騎士も俺たちの登場に驚く。盗賊たちは反応するが、俺とステラには及ばない。
「ふっ!」
ガンッ、ゴンッ、と俺が拳を振るい、馬車を取り囲んでいた五人が倒れる。
「大丈夫か?」
「……あ、あぁ。それより君達は?」
「そんな事より今はアイツらをどうにかする方が先だ」
「……助太刀感謝する」
戦って分かったが、此奴ら相手ならわざわざ付与魔法を使う必要は無いな。
俺は二人の騎士と残りの馬車を囲む盗賊たちを倒して行く。ステラは………。
「ほれ、踊れ踊れ〜」
「や、やめろ!俺に刃を向けるな!」
「ギャァァァァ!」
幻術で盗賊たちを操っていた。とても良い笑顔で。
…………うん。大丈夫そうだな。
「余所見してんじゃねぇぞ!」
そう叫んで盗賊達が振るう剣や斧を、俺は余裕を持って避け、強烈な一撃を打ち込む。
「ふぅ」
気が付いたら馬車を囲んでいた盗賊は全員………いや、一人には逃げられてしまったが、そいつを除いた全員が倒れていた。
「す、すごい。我々でも手こずっていたのに、あれだけの数を……」
さて、ステラの方は如何かな?
「ふふん!」
ステラはドヤ顔を俺に向けていた。その下は仲間割れの後の惨状だが。しかし、誰一人として死んでいない。ステラが殺さないようにしてくれたのだろう。
今更だが、ステラは、人前に出ると言う事で尻尾と耳は幻術で見えないようにしてある。
「助けて頂きありがとうございます」
騎士の男が俺の元まで走って来ると、礼を言った。
「気にしなくて良い。現に一人逃してしまった」
「いえ、そう言う訳には行きませぬ。あの盗賊は『餓狼団』と言って、最近巷を騒がせているんです。だからあなた方は我々の恩人。あのままでは如何なっていた事やら」
今立っているのが、俺とステラ、そしてこの騎士だけだ。後の二人は他の騎士を治療中だ。今、起き上がっているが、其れでもまともに戦える状態ではない。
あのまま俺たちが来なかったら、確かに『如何なっていた事やら』だな。
それよりも『餓狼団』か……。もしかしたら近いうちに事を構えるかもしれないな。
そんな事を思っていたら馬車の中から一人の少女が出て来た。
その女性は腰まである炎のような紅蓮の髪と同じの色のドレスを見に纏っており、真紅の瞳。
そして、気品あふれる振る舞い。何処かの貴族だろうか?
彼女は騎士の手を借りて馬車から降りて俺らの前まで来た。
「この度は助けて頂きありがとうございました」
「さっきも言ったが気にする必要はない。俺は人として当然の事をしただけだ」
「其れでも私たちが助けられたのは事実です。何か御礼を……。」
「そう言うのは良い。俺は御礼が欲しくて助けたわけじゃない。其れでも、と言うのならば――」
「!」
「アンタがこれからも元気で居てくれる事が俺に対する礼だと思ってくれ」
「は、はい。わ、分かり、ました」
俺の言葉に彼女は何故か透き通るような白い頬を赤く染め、俯きながら答えた。
「……主人殿」
隣ではステラが不機嫌そうに俺を見ていた。何故?
「それじゃあ、俺らはもう行く」
「あ、お名前を!」
「名乗るほどの者じゃないさ」
そう言い残して俺はステラと共にその場を去った。
ちょっとキザっぽかったかな?
「妾は良かったと思うぞ?」
「ナチュラルに俺の心を読むな」
一方その頃、ジンから逃げた盗賊はアジトの洞窟に戻り、事の経緯をスキンヘッドの大柄な男『餓狼団』がボス、ベルザに話していた。
「………それで、テメェはノコノコと帰って来たのか」
「す、すみません……で、でも相手が強く……ガッ!」
ベルザは部下の男の首を片手で締め上げる。男はなんとか逃れようともがくが力は強まる一方。そして……。
「………おめおめ逃げて来る様な雑魚は『餓狼団』にはいらねぇよ」
――ゴキッ!
骨の折れた鈍い音が洞窟に木霊する。先程までもがいていた男は糸が切れたかのように垂れ下がる。
ベルザは事切れた男を放り投げると、どかっと座り込む。
「……相当な手練れの二人組か……だが、こっちには〝コイツ〟がいる」
ベルザはそう言いながら、視線を奥の〝檻〟を見る。
『グルルル……』
その檻の中からは鋭く眼光を飛ばす『何か』が……。
「奴らが向かったのはブンバム。其処では近々〝闘神祭〟がある。そん時に落とし前はしっかりとつけさせてもらうからな」
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