一方で、元パーティーメンバーたちは……。②
「今日こそは【常闇の遺跡】を攻略するぞ!」
二日後。私たちは再び【常闇の遺跡】にやって来た。
だが、私は自信満々な彼らと違い、不安でいっぱいだ。はっきり言って、ジン君がいないこのパーティーでは【常闇の遺跡】はおろか、中難易度の迷宮を攻略出来るかも怪しい。
「前回はあの無能がいて五階層まで行けたんだ。ならあの無能亡き今、サクサクと進める筈。行くぞ!」
本当の無能はアンタたちでしょうが!
私は口から出かかった言葉をなんとか飲み込む。
「………ねぇ、迷宮に入る前に状態異常耐性のポーション飲んどこ。この迷宮は瘴気で溢れてるから」
「あ?そんなのいらねぇよ。前ん時も飲んでねぇし、今回も、大丈夫だろ」
其れはジン君がいたからよ!ジン君がいない今、ポーションを飲まないと貴方たち直ぐに動けなくなるでしょうが!!
「そうそう。アタシらを舐めすぎよ」
「もしもの時は私が皆様を癒します」
舐めてるのはアンタたちでしょうが!
本当、私がパーティーを離れている間に此処まで酷くなるなんて……。ジン君も大変だったんだろな………。
「いいから」
「チッ!分かった分かった。飲めば良いんだろ、飲めば」
そう言って、グルドは私からポーションを分取る。他の四人も不服そうに受け取って飲む。
誰の為にやってるのか分かってんのかな?
「……それじゃあ、気を取り直して行くぞ」
始まる前から既に、私の精神的疲労がピークに達していた。
もう、嫌………。
迷宮攻略を始めて、およそ五時間。私の怒りは頂点に達しようとしていた。
「おい!何してやがるカール!魔法はまだか!?」
「ちょっと待ってよ! 詠唱がまだ終わらないのよ!」
「はぁ!?いつもならもう終ってんだろが! ふざけてんじゃねぇぞ!!」
「真面目にやってるわよ! リリィ!ダンとバリーの治療はまだ!?」
「今やっています!ですが、傷が塞がらないんです!」
「アンタこそ真面目にやんなさいよね!」
私が戦っている後ろで、この口論だ。
今、私たちがいるのは三階層で、うちのバカリーダーが罠に引っ掛かりB級魔物のヘルハウンドの群れを引き寄せた。其れを今、私一人が捌いている。
私以外の前衛である戦士と拳闘士は、無鉄砲に突っ込んで重症を負い、其れを治癒士が治している。魔法使いは未だに魔法の詠唱が終わらず、突っ立てるだけ。そして前衛の筈のリーダーも命令するだけで、何もしていない。
私からしたら、アンタの方がふざけてるでしょうが!
自分の尻ぐらい自分で拭きなさいよ!!
ヘルハウンドはいくら倒しても湧いて来る。正直、終わりが見えない。そして、最悪な事にヘルハウンドの群れが出口を塞いでいる。だから出ることも出来ない。だが、このままでは先に私の体力が尽きてしまう。こうなったら……。
「リリィ!二人にこれ掛けて!」
私は懐から小瓶を二つ取り出すと、リリィに投げ渡した。
「此れは、最上級ポーション! なんで貴方が!?」
「そんなの今はどうでもいいから早く其れをかけてて!」
リリィはポーションを二人にかけると、二人の出血が収まり、傷は塞がっていく。此れで、いずれ目を覚ますだろう。
「……グルドはダンを、カールとリリィはバリーを」
「何を……」
「……チャンスは一度。一気に道を切り開くから」
私はグルド等に指示を出す。彼等は助かる希望が見えたのか、素直に聞いてくれている。いつもこれならどれだけありがたいか。
「行くよ! 〝天斬〟!!」
私は自分の中で最も射程距離の長い技をヘルハウンドの群れに放った。光の斬撃はヘルハウンドの群れを真っ二つに斬った。他のヘルハウンドたちも風圧で飛ばされる。
「今のうちよ!走って!!」
私たちはヘルハウンドたちが怯んでいる間に切り開いた道を突っ走る。そして、無事、ヘルハウンドの群れから抜け出せた。
「……なんとか逃げ切れた見たいね」
私はヘルハウンドが追ってきていないのを確認すると安堵の息を吐く。
「くそっ! なんで俺たちが……。前までは簡単に勝てた相手なのに! カール、お前のせいだぞ!」
「はぁ!?なんでアタシなのよ!!」
「お前、魔法使いのくせになんで魔法を使わねぇんだ!お前が魔法を使っていれば彼奴ら雑魚ごとき余裕だったんだよ!」
「しょうがないじゃん!詠唱が終わらなかったんだから!! 其れにそんな事言ったらリリィだってそうじゃない! ダンとバリーの傷を治せなかったんだからさ!!」
「私だって同じです。いつも通りにやっている筈なのに治りが遅かったんですよ!」
仲間割れを始める彼等。そして、その矛先は遂には私に向く。
「そもそも、ソフィア! アンタ、最上級ポーション持って居たならなんでもっと早くに出さないのよ!」
「そうです!まさか貴方一人で独占しようとしていたのですか!?」
「お前がもっと早くに出していたら彼奴らにも勝てた筈だ! この敗北はお前のせいでもあるぞ!」
自分たちの落ち度を私のせいにしようとする彼等に私の怒りが頂点に達し……いや、爆発した。
「……私のせい?ふざけないで!!私は貴方たちが殺されないように必死でヘルハウンドの群れを相手にしてたのよ!最上級ポーションだって滅多に手に入らない物なのよ! そう簡単に使えるわけないでしょ!それに、こんな状況に追い込まれたのはグルドが罠に掛かるからでしょ!それなのに自分は後ろから命令するだけで何もしていなかったじゃない!」
そもそも、一番の原因は貴方たちがジン君を追い出した事。それさえなければこの迷宮攻略だって出来たかもしれないのに……。
「撤退するわよ」
「は、何言って……」
「この状態じゃもう無理よ」
「無理ってなによ!一回躓いただけじゃない」
「その一回の躓きで私たちは死にかけてるのよ。それなのにこの先の魔物をどうやって相手にするのよ。此処はまだ三階層。魔物は奥に行くに連れて強くなっていくのよ?このままじゃ命がいくつあっても足りない」
私は懐の帰還石を取り出して、割り、私たちは迷宮を脱出した。
こうして、【常闇の遺跡】の攻略は大失敗に終わる。
【常闇の遺跡】が消滅したと知らされたのは、其れから三日後の事だった。
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