付与術師、ボスと戦う。②
「それなら、この攻撃、防いでみよ!」
九尾狐はジンに止めを刺すため、九つの尻尾を一点に集中させ、槍の様に迫って来た。そしてジンはその攻撃を真っ向から受けた。
辺り一面に煙が舞う。
九尾狐の攻撃はジンに当たり確たる手応えを感じた。
「……やはりは人の子。妾には到底及ばぬか」
九尾狐は興が覚めたかのように無の表情となり、落胆の息を吐き踵を返す。すると……。
「…………おいおい。何、勝った気でいるんだよ?」
「!?」
九尾狐は目を見開いて、振り返ると其処には、傷だらけになって、立っているジンの姿だ。
「確かに手応えはあった!なのに何故生きておる!?」
「……あぁ。確かにお前の攻撃はしっかりと当たったよ。 だが、俺じゃなくこいつにな!」
「其れは!」
九尾狐は俺の持っている物に驚愕していた。
ジンが持っていたのは……。
「ルーン石!」
デス・スコーピオンを倒した時に出たルーン石だった。あの瞬間、俺はルーン石を取り出すと付与魔法であげた集中力の全てをこの一瞬に集めたのだ。おかげで、一命を取り留める事が出来た。そして、何より一番の目的も達成出来た。奴の攻撃を受けたルーン石は、ヒビが入って行き……。
「人間の力じゃ壊せないが、天災級の一撃でなら………」
割れた。其れにより、ルーン石の効果が発動する。
さぁ……来い!!
【全ての能力が大幅に上昇しました】
頭の中にそんな声が響いた。
その瞬間、俺は魔力が一気に回復するのを感じると同時に力が湧いて来るのも感じた。これなら………。
「まさか、ルーン石を持っておったとは……驚かされたわ。だが、それだけの事、今更、何をしようとも貴様にこの状況を打開するすべは――」
「《身体能力低下》《防御力低下》を付与」
「なんじゃ、体から力が抜けていく……お主、一体なにをした?」
膝をつく九尾狐は俺を見上げる形で睨みつける。
「忘れたか? 俺は付与術師。お前に《身体能力低下》と《防御力低下》を付与した」
「なんじゃと……?だが、お主は既に魔力が…いや、あったとしてもお主の魔力量では妾に付与など出来ぬはずじゃ! まさか!?」
「そうだ。俺の魔力はルーン石のお陰でお前に付与魔法を掛けても無くならないまでに増えた」
其れを聞いた九尾狐は、驚いた表情で俺を見る。
だが其れは俺も同じで、かなり驚いている。俺自身の身体能力も上昇した事によってか、奴に付与を掛けるための魔力が思ったほど消費しない。だが、其れでもまだ此奴の方が格段に上なのは変わらないので、魔力の消費量は多い。
そして、俺は再び、自身に付与魔法をかける。
「!……これは」
俺は自身に付与魔法を掛けると何時も掛けてるよりも、身体が軽く感じる。どうやら、ルーン石の効果で俺の付与魔法の力も上がったようだ。
「これでお前と互角に戦える筈だ!」
「妾と互角じゃと……? 人間如きが図に乗るでない!!」
九尾狐は、九つの尾を俺にぶつけて来るが、先程よりもそのスピードは遅く、威力もだいぶ落ちてる。これぐらいだと、S級の上あたりだろう。だから、余裕とまではいかないが、十分に対応出来る。
「ッ!……これならどうじゃ!」
九尾狐は、上空に飛ぶと、その姿を増やす。その数、約五十。幻術か……。
「「「「「さぁ、妾がどれかお主に分かるか?」」」」」
「このままじゃ、分からないな。だが《聴力強化》を付与!」
「「「「「さぁ、死ぬがいい!!」」」」」
――――ドクン
「……お前だな」
「ッ!?」
俺は、俺に突撃して来る九尾狐の中から、本物を見つけ出すと、剣で切り飛ばす。切り飛ばされると、残りの九尾狐たちは姿を消す。
「なぜ、見破れた!」
「鼓動だよ」
「鼓動、じゃと?」
「お前の分身は所詮は幻。実体は存在しない。その中で唯一心臓の鼓動が聞こえたのがお前だけだった。だからだよ」
それだけ言うと、九尾狐は笑い出す。
「……まさか、そんなことで妾の幻術が見破られるとはな。人の子よ。妾はお主を気に入った。だから見せてやろう、妾の本気を!」
「ッ!」
その直後、九尾狐から大量の魔力が嵐のように吹き荒れた。そして収まると九尾狐は姿を変え、名の通りの姿となっていた。その姿から発せられるプレッシャーは先程のとは段違いだ。
『これが妾の本気じゃ。とくと味うがいい!!』
ガキイイイイイイイイイン!
「ッ!」
鉄と鉄を激しく打ち鳴らすような音が鳴り響く。其れは、俺が九尾狐の振り下ろした爪を剣で受け止めた音だ。
地面がミシリと音を立てて砕ける。
「………《身体能力低下》の付与が掛かってこれだけの威力。凄まじいな」
『まだまだ行くぞ!』
九尾狐からは、続けて尻尾と爪での怒涛の攻撃が繰り出される。
「ぐっ……!」
俺は一本一本いなしていく。しかし、いなしきれず、横腹に一撃喰らってしまった。
『終わりかの?』
どうやら形成はまたしても逆転されてしまっている。手数でもあちらが上、このままでは、折角戻った俺の体力も魔力も無くなってしまう。
『動かぬのなら殺してしまうぞ』
「ッ!」
ブォンと爪で襲いかかって来ると、俺は紙一重でよける。その際、治り切っていない横腹が痛み、一瞬動きが鈍る。その隙を九尾狐が見逃すはずもなく、二撃目が俺に直撃する。
「ガッ……!」
殴り飛ばされたジンは転げ回る。
『……流石の主も今のは無理だったようじゃの』
九尾狐は動かないジンを見下ろす。
ジンは身体を動かそうにも、上手いこと力が入らない。
『主はようやった。妾を此処まで追い込んだのじゃからな』
「……まだ…だ…」
『無駄じゃよ。傷が治っとらんところを見るに、主の付与魔法も切れておる。無論、妾のも』
九尾狐の言う通り、ジンの付与魔法は既に切れていた。しかし、ジンの眼はまだ死んでいなかった。
『主は妾が戦って来た奴の中でも、最も強かった。だからこそ、確実に仕留める!』
ブォンと、振りの一撃が放たれる。しかし……。
『なっ!?』
「……え?」
その一撃は止められた。その事に、九尾狐は勿論、受け止めた本人も驚いていた。
『(妾の一撃を止めるじゃと?有り得ぬ。先程までの此奴ならあり得たが)……なんじゃ、此れは』
瀕死のジンに自身の一撃を止められた事に驚いていた九尾狐は、ジンを見て更に驚愕していた。何故なら……。
『(此奴の周りに、大気中の魔力が集まっておるじゃと?)』
其れは、極小確率の出来事。幾度と強者に挑む彼への褒美であるかのような奇跡の連続。
今、ジンからは荒々しく吹き荒れる魔力が、緩やかに溢れ出ており、そんな彼を中心に大気中に散乱する迷宮の魔力が集まっていく。其れに寄り、彼の傷ついた身体は癒されていく。
「……此れは、力が」
ルーン石のとはまた違った感じ。
だが、この感覚はジンがよく知っている物に似ていた。
『……ルーン石の次はその現象。主は何度、覚醒するのじゃ?』
「……さぁな。俺にも分からないが、一つ言える事がある」
『なんじゃ?』
「負ける気がしない」
俺は地面を蹴り、一瞬で奴の前まで移動すると、そのデカい身体に一太刀食らわせる。
「お返しだ」
『ぐっ…!』
一太刀喰らった九尾狐の身体からは血が流れていた。つまり、この戦いで初めて奴に傷を負わせる事が出来たのだ。
俺は、続けて攻撃するべく、突撃した。
『ッ……これならどうじゃ!』
九尾狐は九つの尾で俺を迎撃しようとするも、俺はその全てを交わし、王手をかける。
『馬鹿な!?』
「一気に決める!」
そして、そのまま俺は九尾狐を切り刻む。
九尾狐は九つの尾で更に迎撃するが、スピードは俺の方が上。捌き切れず、俺の太刀を浴び続ける。しかし途中、剣が折れたが、其れでも腕を止める事なく、撃ち合っていた。
「う……」
徐々に動きが遅くなり、遂には攻撃に耐え切れなくなった九尾狐は獣化が解け、後ろに倒れこんだ。
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