付与術師、ボスと戦う。
迷宮を彷徨って五日が経過し、次で目覚めた位置から丁度二十階層になる。この五日間、本当に大変だった。A級魔物の群れに遭遇するは、S級のデビルベアに襲われるはと、色々な魔物に襲われた。だが、其れも終わりだ。俺の目の前には階段ではなく、転移門がある。
通常、階層の行き来は階段だが、唯一ボスの部屋だけは違う。ボスの部屋には転移門で行く。そして、その転移門がここにあると言う事は、次がいよいよボスの部屋。
迷宮は基本五十階層までしかない。つまりは此処は四十九階層となり、俺はあの大穴からニ十五階層分落ちたとなる。
いや、付与魔法があるからってよく生きてたな俺……。
まぁ、其れはいいいとして、次がボス戦だ。俺は準備を整えると、転移門に乗った。すると、俺の体は光りに包まれた。
やがて、光りが収まり俺は目を開く。視界に写ったのは夥しい程の奇怪な文字が施された壁画。そして、その中心に凛と佇むのは振袖を着た九つの尾を持つ、腰まである金色の髪で澄んだ青い瞳の麗人。
「人の子よ……此処に何用じゃ?」
彼女の放つ気配で分かる。彼女は今まで戦って来た魔物の中でも別格。彼女の前では、あのデス・スコーピオンでさえ可愛く見えてしまう。そう感じてしまう程、彼女は異常だ。そして、同時に、頭の中にある単語が横切った。
――――天災級。
最高ランク、S級を超える魔物につけられる階級。その魔物は存在そのものが天災であり、その力は国をも壊滅させると言われている。
そんな化け物が今、目の前に……。
「俺は冒険者のジン。この迷宮を攻略する為に来た。その為にお前を討伐する」
「ほぉ。其れは妾が『九尾狐』と知っての狼藉か?」
九尾狐だと!?
俺は彼女の正体に驚きを隠せないでいる。
九尾狐とは伝説の神族の一角であり、その力は計り知れないとされる種族。だが何故、神族が迷宮に………。
「目障りじゃ―――」
その瞬間―――。
「死ね」
「ガッ……」
俺は壁に叩きつけられていた。
何が起こった……? 攻撃されたのか…?
俺は気付いたら既に、壁に叩きつけられており、背後の壁が放射状に粉砕された。そして、肺の中の空気は強制的に外に出され、身体が砕けそうな痛みに俺は苦悶の表情を浮かべ、剣を支えに膝を着く。俺は自身に《防御力上昇》を付与している。にもかかわらず、このダメージ。あの威力の攻撃を何発も与えられたら確実に死んでしまう。
「………マジで、ヤバいな」
だが、恐らく問題はこれだけではない………。
「《防御力低下》《身体能力低下》を付与」
俺は九尾狐にデバフの魔法を付与する。
「付与魔法か……しかし妾には効かんみたいじゃぞ?」
やはりダメか……。
俺は奴に魔法を付与出来ない。
そもそも付与魔法は誰にでもかけられるわけではない。かけるにしても其れ相応の魔力が必要なのだ。そして、対象が俺より強ければ強い程、大量の魔力を消費する。故に、俺の今ある魔力量では奴に魔法を付与する事が出来ない。
それだけ、俺と奴には圧倒的なまでの力の差が存在しすると言う事だ。
(だが、其れが何だと言う)
どちらにせよ、何もしなきゃ死ぬだけだ。
「《動体視力強化》《集中力上昇》を追加で付与!」
これで、奴の動きを目で追える筈。
そして、俺は身体が治ったのを確認すると、剣を構え、奴に斬り掛かる。案の定、九尾狐は迫って来る俺に自身の尻尾をぶつけて来た。先程の攻撃もこの尻尾でか………。
「何度も効くと思うな!」
追加付与のおかげで、何とか奴の動きが見え反応することが出来ている。だが避けているだけでは行けない。攻撃しないと奴を倒す事は出来ない。だが………。
「そんなやわな攻撃、妾には通じぬぞ?」
「ッ!」
奴に攻撃を仕掛けようにも素早く、避けられてしまう。そのほかにも、奴の毛が固く、当てられたとしても攻撃が通らない。
「これならどうだ!!」
俺は、デス・スコーピオンとの戦いで使用した《爆破》が付与されている短剣を残り全てを奴に投げつけた。
「今度は飛び道具とな」
しかし、奴はその短剣を全て、尻尾の風圧だけで弾き飛ばした。飛ばされた短剣は全て奴に当たる事無く爆発してしまう。
「綺麗な花火じゃの。で、次は何を見せてくれるのじゃ?」
「……これでも無理なのか」
あれだけの数の短剣でも無理なら、もう撃つ手がない。
「ほれほれ、避けなければ死ぬぞ」
「ッ!」
俺は、繰り出される攻撃を避ける事しか出来ず、付与魔法も時間が来ては解け、また付与する。これの繰り返しで、ジリ貧状態になっていた。
そんな状況が続いていき、俺の体力は徐々に低下して行く。その一方で、奴はノーダメージと来た。そして、此処でまたしても、付与魔法のタイムリミットが来た。しかし、もう一度掛けようにも、残り一回分の魔力しか残っていない。俺の心は今までに感じた事のない恐怖が襲った来た。
其れは死に対する恐怖。
俺は生まれて初めて死の恐怖を感じている。
どうやら俺は、今まで自身の力を過信し過ぎていたようで何処かで、俺ならと思っていたようだ……。
「ははっ」
だが、実際どうだ? 手も足も出ず、無様に膝をついているではないか………。
いやはや、井の中の蛙大海を知らず、とはよく言ったものだ。世界には、こんな化け物がまだまだいると言うのだから。
「九尾狐よ。俺は弱い!付与魔法しか取り柄のないただの冒険者だ!」
俺は真っ直ぐに九尾狐を見る。
「だがな、弱いからそこで終わりじゃないんだよ。弱いなら、弱いなりに足掻いてやる!」
「ほぉ?この状況でまだそれだけの減らずくちを叩くか。良かろう! それなら、この攻撃、防いでみよ!」
九尾狐は俺に止めを刺すため、九つの尻尾を一点に集中させ、槍の様に迫って来た。
俺はアイテムボックスから、ある物を取り出すと、自身に《集中力上昇》を付与する。
チャンスは一度。失敗すれば死ぬ。
俺は、その攻撃を真っ向から受けた。
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