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付与術師、大迷宮を攻略する。

俺は目が覚めた。


 

「……何とか生きてるな」



 俺は自分の身体を見渡す。無傷とまで行かなくともほぼかすり傷程度しか負っていない。



「……付与魔法のおかげで助かった」



 俺の職業は付与術師。人や武器など、あらゆる物に魔法を付与出来る。当然、追放される前は彼等にも付与していた。まぁ、あの様子からして忘れられて居ただろうが。そして今回自分に掛けて居たのは『防御力上昇』と『細胞活性』、『状態異常耐性』だ。これらのおかげであの高さから落ちてもかすり傷程度でいられ、この場に居ても瘴気の影響を受けなかった。この傷も直ぐに治るだろう。



 それよりも一体どれだけの時間が経ったのだろうか?

 俺は辺りを見渡す。周りは岩だらけ。



 俺は一体何階層まで落ちて来たんだ?



 もし下層ならば、一刻も早く移動しなければならない。



 そう思った矢先に前方から気配を感じた。



 何かが来る……。



 そして、現れたのは……。



「……おいおい。冗談だろ?」



 人の倍以上の巨体で三本の尻尾を持つ蠍だ。



「……S級魔物の『デス・スコーピオン』……こんな所で出現していい魔物じゃないだろ」



 デス・スコーピオン。毒を持った蠍で、その三本の尻尾から出される毒は猛毒。その毒をちょっとでも浴びると、皮膚が爛れ、じわじわと身体を蝕む。



 まさか早速此奴に遭遇するとは……。



「…見逃してくれるかな?」



 俺の願いは虚しく、毒液と言う返答か返って来た。



「ッ!……まぁ、逃がしてくれる訳無いわな!」



 俺は間一髪の所で交わして、『アイテムボックス』から剣を取り出す。そして、そのまま俺はデス・スコーピオンの胴体に剣を振りかざしたが……。



「固…ッ」



 やはり、デス・スコーピオンの外殻に剣の刃が通らない。デス・スコーピオンはそのまま真ん中の尻尾から毒液を放射する。



「…あっぶな」



 俺はその毒液を紙一重で避ける。その際に、衣服に少し毒液が付着してしまった。その部分は一瞬で溶けた。



 やっぱそう簡単にはいかないか……それなら!



「まず俺自身に《身体能力強化》を付与。そしてデス・スコーピオンに《防御力低下》《身体能力低下》を付与」



 俺は自身にはバフを、デス・スコーピオンにはデバフの魔法を付与した。此れでまともに戦える筈だ。



「ハァァァァァァ!!」



 俺は先程より動きが鈍くなったデス・スコーピオンに切りかかり、右腕の関節部分に刃を立てて、切断した。



 右腕を切断された事により、デス・スコーピオンは俺を完全に敵と見做す。そして、左の尻尾の標準を俺に合わせ、そのまま針をミサイルの如く飛ばして来た。



「ぐっ!」



 俺はその針を真っ二つに切ると、その針の中から毒液がばら撒かれた。俺はその毒液を上半身にモロにかかってしまう。しかし、付与魔法のおかげで何ともなかった。だが、上の服と剣が全部溶けてしまった。



「こんにゃろう、俺の服を溶かしやがって……」



 奴は其れが面白かったのか、残っている左腕の大バサミをカチカチさせてる。心なしか尻尾も嬉しそうに動いている。


 

 このクソサソリ殺す!



 俺はアイテムボックスから短剣を複数取り出し、その取り出した短剣をすかさず、デス・スコーピオンに投げ付ける。そして、短剣が奴に当たった瞬間、爆ぜた。



「キシャァァァァァァア!!」



 絶叫しながら、尻尾をぶん回すデス・スコーピオン。俺が奴に投げつけたのは付与魔法《爆破》を付与した短剣だ。当たった瞬間に爆破する仕組みで、その威力は中級魔法ぐらいの威力しかないが、防御力が低下している今の奴には効果は有るだろう。その証拠に奴の硬い外殻にひびを入れる事が出来た。 



 デス・スコーピオンは怒り狂ったかの様に右の尻尾から肥大化した針が放たれる。俺は避けようとするが、その前に針が破裂し、散弾のように広範囲に降り注がれる。その針を俺は避けながらデス・スコーピオンに接近する。そして、近付いたところで、短剣を針に投げ付ける。針に当たった短剣は爆発し、一気に針を爆破した。爆風で視界を遮られたデス・スコーピオンは俺の気配を探る。



 だが、残念ながら幾ら俺を探しても見つからないよ。



 俺は自身に追加で《気配遮断》を付与し、奴の頭部に着地した。そして、俺の手には《爆破》が付与されている短剣。



「此れで、終わりだ」



「キシュア!?」



 驚愕の声を上げるデス・スコーピオンを無視し、俺は頭部の剥がれ落ちた外殻の隙間に短剣を突き刺した。そして、爆破する前に俺自身はその場を離れる。離れる為ジャンプした瞬間、爆破した。俺は爆風で飛ばされる。

 


 煙が晴れると其処には、頭部が破裂して、息絶えているデス・スコーピオンが。デス・スコーピオンの死体は光りに包まれ消滅する。消滅するとその場所に二つの石が。一つはデス・スコーピオンの魔石、二つ目が……



「ルーン石!?」



 其れは希少なアイテム、ルーン石だった。ルーン石は破壊すると所持者に恩恵を与えると言う魔法の石。その恩恵はランダムで何が出るかはわからない。そして何より、ルーン石は並の力では壊す事は出来ない。当然、俺が壊せるはずが無い。でも、捨てるにはもったいないので取り敢えずはアイテムボックスに片付けて置く。


 

「しかし、まさかS級の魔物が出るとは……」


 S級の魔物は稀に高難易度の迷宮のボスとして出て来る事がある。しかし、此処はまだ通常エリア。つまりこの迷宮のボスはS級の魔物と言う事になる。だが、もしかしたら………。


「止めよう。今は取り敢えず脱出する事だけ考えよう」


 正直、この迷宮から一刻も早く脱出したい。だが、残念ながら、脱出する為に必要な『帰還石』は手元にない。


 帰還石は、迷宮攻略には必須のアイテムで、割ると迷宮の入り口まで転移する事が出来るマジックアイテムだ。そして、その『帰還石』はグルドらに全て盗られてしまっている。あれ、全部俺の自腹なのに………。


 だから、この迷宮を脱出する為にはこの迷宮を攻略するしか手はない。



「気を引き締めていかないとな……と、その前にこの格好を何とかしないとな」



 俺はアイテムボックスから予備の装備を取り出し、露となる身に包む。そして準備が整った俺は迷宮調査を開始する。


 『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら幸いです。

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