付与術師、大会に出る。
ギルドを出た俺はステラとの戦闘で消耗した武具の新調と補充をするべく、ステラを連れて、街を歩き回っていた。いたのだが……。
「いや、なんでどこも〝準備中〟なんだよ!?」
七件目の『準備中』を目の当たりにし、俺は思わず突っ込みを入れてしまう。
武具を買おうと店を探してはや一時間。何処も準備中の看板がかけられていて閉まっている。
「主人殿、今ので七軒目。恐らくもう何処も開いておらんじゃろな」
「……そうだな。今日は宿をとって休むか」
ハァ……。明日には開いてるかな?
そう俺がしょんぼり肩を落としていると、
「――な、なぁ!」
「ん?」
ふいに誰かに声をかけられ、俺は声のした方を見やる。そこにいたのは、十歳くらいの少年だった。
俺らに何か用か?
俺は怖がらせないよう目線の高さを合わせて尋ねる。
「俺たちに何か用か?」
「そ、その、兄ちゃんたちは武器を探しているんだよな?」
「あぁ、そうだが。君は?」
「俺はルーク!其れで兄ちゃんたち、俺の兄ちゃんの店に来ないか!」
この少年、名をルークと言うらしい。
「お兄さんの?」
「うん。俺の兄ちゃん、武器の店やってるんだ」
「良いのか? 君のお兄さんも準備中なんじゃ?」
「兄ちゃんの店はしっかり営業してるぞ!」
「そうなのか」
其れはありがたい。
俺はルークの申し出を受け、案内してもらうことにしたのだった。
着いた所は剣とハンマーが交差しているマークの小さな店だ。因みにステラだが、疲れたらしく来る途中に宿を取って、そこで休んでいる。
「此処が、兄ちゃんの店だ!」
「此処が……」
「兄ちゃんただいま!」
ルークは勢いよく扉を開けると中に入って行った。俺もルークに続いて中に入って行く。
入ると、俺を見るのは無駄な筋肉が無いしっかりとしたガタイの見た目の若い男性だった。この人がお兄さんだろうか?
「帰ったか。ルーク、この人は?」
「兄ちゃんこの人はね、お客さんだよ!」
「おお!マジか!」
お兄さんはルークの言葉を聞いた途端に目を輝かせて俺を見る。
「俺はイザク。この店をの店主だ。お前は?」
「ジンだ」
「ジンか。もしかしなくても冒険者か?」
「あぁ。其れで今日、この街に来たんだが何処も店が閉まってて」
「まぁ、そうだろうな。何たって一週間後には〝闘神祭〟があるんだ。何処も客なんて構ってる場合じゃねぇんだよ」
「闘神祭?」
俺は初めて聞く言葉に首を傾げる。
「あぁ。二年に一度に行われるもので、ブンバム中の武具店の中から最高の武器職人を決める大会だ」
「へぇ。そんなのがあるのか。確かにそれじゃあ客の相手なんかできる訳ないか」
「だが、ただ良い武器を作れば良いって訳じゃない。俺はたち鍛冶師が作った武器を、組んだ冒険者が使うことではじめて成立する祭りさ」
あぁ。だからこの街には他と比べ冒険者が多かったのか。それなら、彼らも出るのだろうか?
「其れに此処だけの話し、今年の闘神祭は例年とは一味違う」
「何が違うんだ?」
「今年の闘神祭にはティア王女が観に来るみたいなんだ」
「ティア王女が!?」
俺はイザクから出た名前に驚愕する。
ティア・クリスティ。彼女は、クリスティ王国の第ニ王女だ。俺も噂で名前だけは聞いた事がある。
「だが、何故一国の王女が闘神祭に?」
「なんでも、ティア王女はその優勝者を自分の近衛騎士に、その武器を作った職人は王族のお抱え職人と言っているらしい」
「それじゃあ、イザクも出るのか?闘神祭」
「………残念だが俺は出ねぇよ」
「え?」
驚いた。見た感じ、この店に置いてある武具はどれもかなりの仕上がりで、一流の物ばかり。これだけの腕があれば優勝も狙えると思うのに。何か理由が………?
俺がそう考えている時だ。
――からんっ。
「――邪魔するぜ。イザクはいるか?」
突如がらの悪そうな男たちが店内に姿を現す。
その瞬間、イザクさんが庇うようにルークを自分の後ろに隠した。
「相変わらずしけた店だな。テメェの親父の時とは大違いだな」
「……何のようだ?此処はお前みたいな奴が来る所じゃないぞ。ギリク」
「その態度も相変わらずだな。で、いい加減この店を明け渡す決心は着いたか? 其れとも、あの鉱山か?」
「何度同じ事を言われようと親父の残したこの店やあの鉱山をお前に明け渡す気は無い!」
「だが、此処んところずっと経営状態は悪いだろ?」
「………どの口が。お前らが客足を遠退かせたんだろうが!」
「さぁて、何のことやら」
この男、気に食わないな……。
「早いとこ明け渡した方が身のためだぞ。お前らの親父見たいな最後が嫌なら尚更――イッテェぇぇぇ!!?」
「お前たちが父ちゃんを!!」
ギリクの脛を棒でおもいっきり殴るルーク。その目には大粒の涙が浮かんでいた。
「このガキ、よくも!」
ギリクの取り巻きの男の一人がルークに拳を振りかざす。しかし……。
「子供を殴ろうとするなんて、どう言う神経してんだ?」
「あ……ギャ…う、腕が……」
俺はルークを殴ろうとする男の腕の掴む。その際〝少し〟強く握り締めてしまい、腕から変な音が聞こえて来た。このままでは折れてしまうと思い、手を離した。そして、代わりに奴の胴体目掛けて回し蹴りを打った。
「……ふごっ!」
俺の蹴りを喰らった男は外まで飛んで行った。
扉が開けっ放しだったのが、不幸中の幸いだ。
「お前たち、不愉快だ。外で伸びてる男を連れて去れ」
「ふ、ふざけんな!? この俺にこんなことをしてただで済むと思うなよ!?」
ギリクは先程のルークの攻撃が余程痛かったのか、未だ涙目で此方を睨む。
「勝手にしろ」
それだけ言うと、ギリクは悔しそうな顔で外で伸びてる男を連れて去って行った。
「……巻き込んじまって悪かった」
男たちが去った後、イザクは俺にそう頭を下げてきた。
「それよりも、何故、あんな奴らに目をつけらて?」
俺が控えめに尋ねると、イザクさんは肩を竦めて言った。
「………この店は親父が残してくれた物なんだ。親父は、この街で一番の鍛冶師と謳われていてな。無論、闘神祭では毎回優勝していたんだよ。だけど………」
イザクさんの握る拳から血が滲み出る。
「……其れをよく思わない連中に親父は嵌められたんだ」
「嵌められた? 一体誰に?」
「……ギリクたちだ。二年前の闘神祭の事だった。闘神祭に出た親父とパートナーの冒険者は優勝が決まってすぐに不正の罪に問われた」
「なんで……」
「ドーピングだよ……。 薬が、親父の工房から出て来たらしんだよ。 そしてそのまま親父は不正の罪に問われた。勿論親父は反論したさ……」
「親父は……? それって」
「パートナーだった冒険者がその罪を認めたんだ。親父にやれって言われたって言ってな」
「まさか……」
「……あぁ。その冒険者はギリクの息のかかった冒険者で、最初から親父を嵌める為の罠だったんだ。其れで、大勢の前で不正が認められ、神聖な大会で不正を働いたとされた親父は鍛治師としての人生を閉ざされた。 それだけにはとどまらず街の人たちからは罵倒の嵐。親父自身気にしていなかったが、次第にその矛先はルークとお袋に向いた」
「……ルークと母親に?」
「毎日のように傷付いたルークとお袋を見かねた親父は、俺たちにこの店と鉱山、謝罪の遺書を残して自殺したよ」
「!?」
「そしてお袋はショックで身体を壊して、今もベッドの上だ……」
言葉が出て来なかった。この兄弟の過去がこれほどまでに暗く、悲しいものだったなんて。
「……すみまない! 思い出したくない事を思い出させてしまって」
俺は二人に向かって深く頭を下げる。
俺の軽率な発言で二人の心の傷を広げてしまったかも知れない。
二人はそんな俺を見て慌てだす。
「おいおい! 頭を上げてくれよ!」
「そうだぜ!? ジンの兄ちゃんは俺の恩人なんだ! 頭を下げられちゃこっちが困るよ!」
「それでもだ。俺に何か出来る事があれば言ってくれ。可能な限り力を貸す」
俺の言葉に二人は顔を見合わせてうねると、ルークが何かを思いついたようで、口を開く。
「なら、一週間後の闘神祭、兄ちゃんの作った武器でジンの兄ちゃん出てよ! 兄ちゃんは父ちゃんの一番の弟子なんだ! だから、そんな兄ちゃんの武器でも優勝出来たら父ちゃんの無実は証明されると思うんだ!」
ルークの提案に俺とイザクは目を見開く。
「ルーク、其れは駄目だ」
「なんで!?」
「これ以上、俺たちの問題にジンを巻き込むわけにはいかねぇ」
「でもよ! 兄ちゃんはこのまま父ちゃんが馬鹿にされたままでいいのかよ!」
「だが……」
「イザク」
「………ジン」
「やらせてくれ。俺が絶対に闘神祭で優勝し、その無念を晴らしてやる」
「本当!!」
「あぁ」
俺が頷くと、ルークはパアァと笑顔を向けて来た。そして俺は視線をルークからイザクに向ける。
「……本当に、いいのか?」
「あぁ。 だから、俺を頼ってくれないか?」
その言葉にイザクは俺に向かって頭を下げて叫んだ。
「頼む! どうか俺たち家族の、親父の無念を!!」
「任せろ!」
こうして、俺はイザク兄弟の願いのもと、闘神祭に出ることを決めた。
「それじゃあ早速作るぞ……と、言いたいところだが」
「どうした?」
なにやら困った顔をして、イザクが言い淀む。
何か問題があるのかもしれない。
「……何か問題でもあるのか?」
「実は、武器を作りたくても、材料がないんだ」
心底困ったように、イザクは大きなため息をこぼした。
話を聞くと、あの件以来、専属で契約していた冒険者に次々と契約を破棄され、武具を作るのに必要な鉱石の供給が滞っているらしい。
そのせいで、安価で大量に採取できる鉱石を使い、武具を作っているらしい。
イザク曰く、ナマクラ。それでも、複数の鉱石を組み合わせることで、一定以上の品質を保つことができる。
店に並んでいるのはどれも、契約破棄される前にイザクと親父さんが作ったものだと言う。
そして、これも裏で糸を引いているのはギリクだと言う。
「おかげさんでまともな武具を作れず、腕が錆びそうなんだよ」
「其れは大変だな。だが、ないなら他の所から輸入すれば良いんじゃないのか?」
「勿論其れも考えたさ。だが、親父の噂が広まって何処も売ってくれねぇんだ」
確かに其れは職人とっては死活問題だな。其れに時間が無い今、早急に冒険者を探さなければ………ん? 冒険者?
あ、俺、冒険者だった。それなら……。
「ならばその鉱石、俺が採りに行く。だから、ギルドに指名で依頼を出してくれ」
「良いのか!」
「良いも何も俺は武器を作って貰う立場なんだ。俺が採りに行くのは当然だろ? その代わりに」
「代わりに?」
「親父さんの汚名をかき消す最高の武器を作れ!」
俺はイザクに拳を向ける。
「当たり前だ!」
イザクはニヤリと笑うとその拳に自分の拳をぶつける。
「………つまりは、その者の為に主人殿は〝闘神祭〟とやらに出る事になり、その為の鉱石採取を明日、行うと」
「まぁ、そんな所だ」
俺は宿に戻ると、イザクの店で起こった出来事を話し、大会に出ることをステラに伝えた。
ステラは呆れた様な表情を見せる。
「主人殿は本当にお人好しじゃの。 見ず知らずの人間の為に其処までやる奴などそうはおらんぞ?」
「………どうしても見捨てる事が出来なかったんだ」
「そんな事は分かっておる。主人殿の性格はこの数日でよく理解しているつもりじゃ」
そう言って妖艶な笑みを浮かべるステラ。その表情に俺は少しばかり意識が持っていかれる。
「……まぁ、そう言うわけだから俺は明日は鉱山の方に行くつもりだ。ステラはどうする?」
「妾は少しばかりこの街を見てまわろうとおもっておる。 此処は食べ物が美味しいらしいからの!」
あ、ステラって、見た目に似合わず食いしん坊なんだな。
ステラの意外な一面を見た俺だった。
(………そう言えば、ソフィアも食べる娘だったな)
一方、その頃街の入り口では、漆黒の鞘に収まる剣を携えた黒髪の美少女ソフィアが立っていた。
「……ふぅ、ようやくついた。ジン君何処かな?」
ステラ「此処まで読んでくれて感謝するのじゃ!」
ジン「『面白かった!』『続きが気になる!』『応援してる!』
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作者「感想なども聞かせて頂けると嬉しいです。其れが、今後も作品を書き続ける強力な燃料となります!」
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