付与術師、追放される。
「ジン。お前はクビだ」
其れは、七大迷宮の一つ、【常闇の遺跡】を攻略中の出来事だった。
俺たち『黒獣の牙』は現在、数ある迷宮の中で七つある超高難易度の一つ【常闇の遺跡】を攻略中だ。この【常闇の遺跡】は中は真っ暗で、常に闇の瘴気で溢れている。それ故に迷宮内では連携が取りづらく、尚且つ、魔物も強力。これまで挑んだ冒険者たち全員が、全滅、又は、撤退を強いられている。
俺たちがいるのは五階層。そんな場所で俺は顔を引き攣らせていた。情け無いがこればかりはしょうがない。何故なら俺の後ろは底が見えない大穴。後、一歩でも下がったら落ちてしまうまでに迫られた状況だからだ。その状況下でのクビ宣告。この後、自分が何をされるのかが容易に想像出来る。そんな俺の心情を察してかリーダーのグルトの顔は狂気に溢れる。その後ろでは無言で俺を見る四人の姿が。
戦士のダン。
拳闘士のバリー。
治癒師のリリィ。
魔法使いのカール。
それぞれが俺に冷たい視線を向けて来る。
「……何故だ?納得する理由を教えてくれ」
「アンタは何処まで馬鹿なの?」
カールが俺とグルドの話に割って入る。
「そんなのアンタが無能だからよ!」
「そんな……俺はしっかりと役目を果たして……」
「テメェがいつ俺たちの役に立ったんだよ?テメェは常に俺らの後ろでウロチョロしていただけだろうが!」
「そうだ。お前は我々の邪魔でしかない」
鼻で笑うバリー。続けて厳しく事を口にするダン。
今、この場に俺の味方は誰一人としていない。だが其れでも俺は諦めずに説得を試みるも……。
「無能の貴方を今まで置いて居たのは、貴方が持つスキル『アイテムボックス』が荷物持ちに丁度良かったからです」
アイテムボックスは俺の持つスキルの一つだ。俺は今までこのスキルで彼らの荷物を運んでいた。しかし、俺が言っているのはこの事ではない。だが、それでも……。
「お前たちが俺を必要としないのなら、俺がパーティーを去るだけで良い筈!何も俺を殺す必要はないだろ!?」
いくら俺が邪魔だと言っても殺す必要はない。
「おいおい、人聞きの悪い事を言うなよ」
「……事実だろ」
「いや違うね。お前は、迷宮攻略中、俺たちの脚を引っ張った挙句に魔物に殺されて死んだ……これが事実だ」
グルドはニヤリと半笑いを浮かべ、そう言い放つ。言葉が出なかった。
そんなの事実無根じゃないか……。
「無能なお前に相応しい最後とは思わないか?」
「何で其処までして俺を……」
「俺たちはこれから全ての七大迷宮を攻略し、富や名声を手に入れ、歴史に名を刻む。だがな、そんな華やかな人生にお前のような無能がいたと言う汚点があってはならない」
俺はグルドの言葉に驚愕した。他の仲間も当然とばかりにグルドの言葉に頷く……。
「幸い、お前の存在は殆ど知られてない。だが、普通に追放するだけじゃもしかしたらお前がかつて俺たちと一緒のパーティにいたと喋るかもしれねぇだろ?其れで、信じる奴も出て来るかも知れない。此処で俺たちに汚点が着く。だからだよ」
「ソフィアは!ソフィアは何て!!」
俺は最後の希望に賭けた。
ソフィアとはパーティーの最後の一人で、剣聖と謳われる程の剣士だ。そして、俺の幼馴染みでもある。彼女なら……。
「あぁ、そもそも彼奴はお前の追放を知らない。絶対に反対すると知っていたからな……だから、あの女の居ねぇうちにお前を殺る事にしたんだ」
そうだったのか……そもそもこの迷宮攻略は最初から可笑しかった。この迷宮攻略、当初の予定では別件で王都にいるソフィアの到着を待つ手筈だったのだ。だが、グルドは彼女の到着を待たずに無理に迷宮攻略を決行した。そして其れを止める者は俺以外に居ず、グルドらは俺がいくら止めても行ってしまい、俺も放っておけなく着いて行ってしまった。だが、その全てが、まさか俺を殺すためだったとは……。
俺は辛くて、悔しくてしょうがなかった。今まで仲間の為と思って頑張っていた事が彼らからしたらただの邪魔でしかない事に……。
「そう言う訳だからアバよ……無能」
グルドは最後のそう言って、俺を奈落に突き落とした。そして、俺は裏切られた辛さと悔しさを胸に深い闇に落ちて行った。だが、この時俺の中には、死の恐怖は一切無かった。
彼等は知らなかった。
この時をもって彼から与えられた恩恵を全て失った事を……。
自分たちがどれだけ愚かな事をしてしまったのかを……。
自分たちが破滅の道を歩む事になる事を……。
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