4.アルバ族
キラキラネーム…!
イメージは北◯の拳の世紀末覇者のお馬さん…
でもあれよりは小さいです。
「貴方様こそ、神が遣わした救世の使いに違いない!」
騎馬隊を興味本位に相手にし、殲滅した結果。
朱天は現在何故だか妖怪の一種のような種族に囲まれて担ぎ上げられ、彼らが乗る中でも一際大きな黒馬に乗せられていた。
彼らの頭には猫に見える耳、腰には尻尾がありまるで猫又である。
しかも一般的に知られる女性型ではなく皆男性、しかめ中には初老らしい白髪や髭を生やしたものまでいた。
暑苦しい猫耳集団である。
「……猫又か、おまえら?」
「ねこ、また、とは…いやいや我々はアルバ族、獣神ゼクト様を信仰するアニマ…獣人の一種でございます。」
「…ふむ、妖怪変化ではなく人の一種であるとは…また変わったところにたどり着いたものだ。」
もし、朱天が以前と同じ十尺はある大鬼の姿であればこの様にありがたがられる事なく逃げ出すか、敵対して軒並み血祭りにあげられていただろうことを思うと彼らは幸運であった、今の朱天はたまたま小柄な美少年の姿であり、角も額の髪をかき分けなければ分からない程度、むしろ生まれつきある奇瘤だとでも言って通るほど目立たない。
騎馬隊を蹴散らした後、元々騎馬隊に蹴散らされかけていたこのアルバ族の部隊にいきなり跪かれて今に至る。
この後は集落に案内し、歓迎の宴を開くとまで言われていた。
(……どう考えても俺の力を利用したいだけだろうが…まあ、いい忌々しい人間ではなく猫又…いや、獣人とやらであるなら話も聞かんではないしな。)
「…しかしその小柄な身体であのように強いとは…そう、そうだ、私はベルクと言う、機電の名を聞いても構わないだろうか?」
中年にさしかかった年頃だろう短毛種らしい猫の獣人が問う。
「……朱天だ、そう呼んで構わん。」
「そうか、救世のお人は朱天殿、か。」
「……生粋の人間と言うわけじゃない、混じり物でな、あまり人間扱いされたくはない。」
そう答えればベルクは何を勘違いしたのか、そうか!そうだったか、まったく帝国の獣人排他主義は酷いからな、などと頷いていた。
(…盛大に勘違いしているが、まあ構わんか。)
そう考えて黒馬に跨がり、カッポカッポと呑気な蹄の足音を聞きながら馬の背に揺られる朱天。それに、彼は案外この馬を気に入っていた。
「名前…名前はそうだな、黒曜、などどうだろうか。」
ぶひひん、と。
わかったのかわからないのか黒馬は嗎く。
「……その馬の名はブラック破邪☆極吽流星号♡といいますじゃ、東洋の漢字、とやらをふんだんに取り入れた名前…どうじゃろ、カッコイイじゃろ?」
一番年配の灰色猫の獣人がそう答えた。
「漢字があるのか、この世界?」
ブヒヒン!
ーーどうやら、この名前以外ならなんでも良さそうである。
馬にキラキラネームはやめて差し上げろ。
…いや、本当に。