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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

深夜巡回

作者:
掲載日:2019/08/13

 コツ コツ コツ

 消灯時間をとうに過ぎた病院の廊下。

 私の足音が妙に響く以外は、静かなものだ。

 コツ コツ コツ

 毎日のことではあるが、深夜の巡回というものはどうにも慣れない。そう先輩に告げたが、「その内慣れるよ」と一蹴されてしまったが。

 コツ コツ コツ

 早く先輩方のように慣れることが一番だと、自分に言い聞かせてはいるが……。

 コツ コツ 


 ……ピチャン


「……?」

 聞こえる筈のない、異音が聞こえた。

 まさか、今時水漏れでもあるまいし。

 首を振って、再び歩みを進めていく。

 コツ コツ コツ コツ


 ……ピチャン


 また、だ。

 今度は確かに、水音が聞こえた。

 どくん、と恐怖に心臓が高鳴る。

 いや、気のせいだ。気のせいに決まっている。

 だが。


 ピチャン、ピチャン


 そんな私を嘲笑うかのように、今度は連続で聞こえた。

 懐中電灯で前を照らしても、何もない。

 ということは、後ろだろうか。しかし、身体が固まってしまったかのように、振り向くことが出来ない。

 コツ、コツ、コツ、コツ

 足音を早めるが。


 ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャン……!


 追いかけるかのように、水音は早く、そして大きくなっていく。

 鼓動が破裂しそうに増し、懐中電灯を持つ手は大きく震え、取り落としそうになるのを必死に堪えている状態だ。

 もう限界だ。

 私は今までにない速さで、廊下を走り抜けていく。

 あと少し。

 あと少しで、待機室へと辿り着く。

 だが。

 私は忘れていた。

 その近くに、巨大な姿見があることを。

「ひっ……!」

 引きつった声が零れた。

 姿見に映し出されていたのは、恐怖に歪んだ私の顔と、そして。


 全身が血に塗れた、女性の姿。

 ぴちゃん、ぴちゃん、と血が落ちて、足元に円を作っていた。


「あ、あ……」

 誰か呼ばなければ。

 叫ぼうとしても、声が、出ない。


 たすけて。

 たすけて。

 だれか。


 その祈りは、届くことはなかった。

 にたぁ、と女性の唇が笑みを形作る。

 血に塗れた白い腕が、私の首に、伸びて。


 ぶちぃっ……!!


 ごとり、と首が落ちたのが、何故か聞こえた気が、した。


(終)

  

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― 新着の感想 ―
 夜に何度も人体から垂れたらマズイ液体を止めずに、後ろから迫る状況、ストーカー以上の恐怖ですね。 引力のあるお話でした。
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