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食事をしながら、この世界の話を聞く②

「その『森の賢者様』が俺と同じ『迷い人』?」

「そうだ。『森の賢者様』はチキュウからやってきた『迷い人』だったらしい」

 俺と同じように地球から迷い込んで、この世界で生きている人。それでいて信じられないことに何百年も生きているハイエルフという存在。俄然、興味が湧いた。

「『森の賢者様』は人嫌いで有名だ。それは『迷い人』への態度も含めてだと言われている。昔、この国は『森の賢者様』を怒らせてしまった。『森の賢者様』は簡単に一国を滅ぼす事が出来るだけの力を持っている。そのため、『森の賢者様』の住まう土地は聖地となり、『迷い人』を利用する事になれば『森の賢者様』が出てくるかもしれないという事になる為、『迷い人』を利用する事は少なくとも我が国ではしない」

 正直、何百年も生きているとか、それだけ国に警戒されている人物というのも実感がわかない。同じ地球からやってきて、『賢者様』などと呼ばれるまでに至った存在。

「その『森の賢者様』は、とてもすごい人なんですね」

「そうだ。この世界で最も有名で、誰もが知っている存在だ。それはセイナ様だけではなくて、他のハイエルフの方々にも言えますが」

「……ハイエルフって、エルフの上位種みたいなものですか?」

「そうだ。そもそもエルフはハイエルフの血を受け継いでいる。人と子を成して、エルフが生まれたらしいのでな。『守護神』と呼ばれているアキヒサ様の血を継いでいるのがエルフ達だな」

 また新たな名前が出てきているが、名前からして彼は日本人だろうか。さっきの『森の賢者様』と呼ばれているセイナと言う人だって、名前からしたら日本人かもしれない。

 となると、この世界のエルフって日本人の血を引き継いでいる存在しかいないって事なのだろうか。

 何だかそれを考えると不思議な気持ちになってしまう。

 エルフってファンタジー的な存在という認識しかないし、そんなものに自分がなってしまった事も、そして基本的にエルフは日本人の血を引き継いでいる事も。全部不思議で仕方がなかった。

「その方も、地球の人?」

「さぁ、それは知らないが……。それで他に聞きたい事はなにかあるか?」

「色々あるんですけれど……。とりあえず聞きたいのですけれど、俺は帰れるんですか?」

「……それは、私には分からないが。ただ……『迷い人』が帰ったという話は聞いた事がない」

 分からない、けれど聞いた事はないとグラニーさんははっきりと言った。下手に帰れると騙されるよりはいいかもしれないが、正直言ってショックだ。

 日本にもう帰れない。家族にもう会えない。その可能性がどこまでも高い。―—その事実を知ってしまうと、衝撃を受けるのも当然だった。

 俺は普通に高校に通って、家に帰る途中だったのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

 どうして俺がこんな目に遭わなければならないのだろうか。

 もう二度と会えないという事なのだろうか。

「……カグラ、帰れないとなると悲しいだろうが、こちらでも十分に生きていけるようにきちんと補助する事になると思う。だからそんなに気を落とさないでほしい」

 そんな風にグラニーさんは言うが、やはりショックがなくなる事はない。頭の中が一杯一杯で、混乱ばかりしてしまう。

 そうか。帰れないからこそ、『森の賢者様』と呼ばれる存在さえもこの世界で生きているのか。

 ―—王宮に報告をすると言っていたが、結局その先にどうなるだろうか。こちらで生きていくとして俺はどんなふうに生きていけるのだろうか。本当に地球には帰る事が出来ないのか。

 その疑問は一つずつ解決していくべきだろう。

 それはグラニーさんも詳しく知らなさそうだから、疑問を解決するとしたら王宮にもしいけたら確認してみるべきか。

 でも本当に王宮に行って、俺にとって悪いようにならないのだろうか。

 『森の賢者様』の影響で『迷い人』に悪い事はしないと言っていたが、本当に一人の影響でそんな事になるのだろうか。

 たった一人の存在がそんな風に国に影響を与えるなんて思えないのだが。実際にどんな人物なのだろうか。このままグラニーさんに保護されたままの方がいいだろう。言葉通りならば、この国は俺の敵にはならないだろうから。……しかしもしグラニーさんが俺をだましていたら……とも考えるけど、俺をだましているようには見えない。どちらにせよ、このまま逃げ出したとしても魔物なんてものがいるのだから一人では生きていけないだろうし。

「……はい。お世話になります」

 ショックを受けながらも、俺はグラニーさんの言葉にそう答えた。その後、食事が終わるまではこの世界についての事を少しずつ聞いた。



 今、こちらでは昼間のようで食事の後は屋敷の案内をしてくれた。この屋敷は思ったよりも大きく、貴族ってすごいと思ってならなかった。王都には報告の手紙をすでに出しているらしく、おそらく近いうちに王都に行くことになるだろうとグラニーさんは言っていた。




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