吸血姫と胸の十字架
「ローズ、貴女は生きて...」
白銀の髪の美しい女性が泣きじゃくる少女をそっと抱き締めた。
「嫌、お母様、私を一人にしないで……」
少女も女性を離さまいと必死に縋ろうとするが、突然睡魔に襲われ始めた。女性は、そんな少女をもう一度強く抱き締めると、少女の首に十字架の首輪を付ける。
「これは、貴方のお父様と私からの贈り物よ…どうか幸せになってね、私たちの愛するローズ」
その女性の言葉を最後に、少女は気を失った。
† † † † † † † †
かつて世界は『古の血族』によって、支配されていた。人々は彼らを『ヴァンパイア』と呼び、酷く恐れた。
特に『古の血族』の一つであるヴォルデン一族は『始祖王の血族』で、一人一人が特殊な力を保持していた。
ヴォルデン一族の現当主アランは『古の血族』の王でもあり、罪を犯した者を種族関係なく徹底的に処罰した。
それに対して反感を持ったのが、アランの従兄弟にあたるラシュル一族の長ジハルである。ジハルはアランを自分の屋敷に呼び出し、彼を罠に嵌めた。
再生不可能なまでに血を失ったアランは、灰と化し、アランの妻であったユリアは死に物狂いで逃げた……が、追っ手に追い詰められ、敵の手にかかるよりは、と自殺した。
それが十年前に起こった悲劇である。しかし、当時一つの噂が人々の間に流れた。その噂とはアランとユリアの間に一人の美しい娘がいたのではないか?というものだ。
人間と違ってヴァンパイアの繁殖力は極めて低く、まして子供が出来るなど滅多にない。そのため、その噂は知らず知らずの内に皆の記憶の中から忘れ去られていった……。
† † † † † † † †
「ローズ!そっちに敵が向かった!」
全身黒ずくめの男性が近くで戦っていた少女に呼びかける。
「……分かったわ」
目の前の敵を始末した白銀髪の少女は、静かに息を整えた。
そして、両手に握られている双剣を強く握りしめ、舞うように剣を振るう。
すると、少女を狙うように動いていた影達が次々に灰と化していく。
「流石だな、ローズ!」
黒ずくめの男性も少女に負けじと剣を操り、影を一掃する。
数十分後、男性と少女の活躍により、周囲の影は消滅し、辺りに灰だけが残った。
「今日は一段と敵が多かった気がします。ベン、怪我はありませんか?」
「あぁ、お陰様でな。
よし、上に任務の完了を報告しに行くぞ」
アラン王の時代に結成された『ハンター協会』は、罪人を処刑することを許された組織である。ハンター訓練所を卒業した者なら、種族関係なく誰しも協会に入ることができた。
白銀の髪に黄金の瞳を持つ少女ーーローズも種族上ヴァンパイアであるが、上位ハンターとして名を持つほど活躍している。『吸血姫』ーーそれが彼女の呼び名である。
ローズは、6歳までの記憶が全くない。雪の降る夜、道端に倒れていたところをハンター協会の会長ロイに拾われ、血の滲むような訓練に堪え、現在に至る。
ちなみにローズの身分を証明できるものは胸の十字架しかない。ロイに十字架を見せたところ、「封印の類なのだが、かなり高度な技術で作られているな。どうやったら、封印が解けるのか分からない。ま、悪意ある魔具には見えないから、大丈夫だろう」とのこと。
協会への帰り道を歩いていると、ふとあることが頭によぎり、口に出した
「ベン、聞きましたか?ジハルが『ハンター協会』を解散させようと、躍起になってることを…」
「ん?…あの噂か…多分『ハンター協会』が前王アラン殿の命によって結成されたのが気に入らないのだろう。なんせ、ジハルはアラン王を毛嫌いしていたからな」
ジハル…アラン王を騙し討ちにした卑怯者、同胞としてその卑怯さに虫唾が走る。
ローズは、再び重い口を開いた。
「それに…あのジハルはヴァンパイア至上主義の屑ですからね…他種族の力を舐め過ぎている。きっと、近い内に倒されるのではないでしょうか?」
「それは、どうだろうな。なんせ、ジハルほどの『血の力』を持った者がいない。最強の血族ヴォルデン一族は奴の手によって破滅し、今のヴァンパイア界は奴のラシュル一族の独壇場状態だ。それに、ジハルに匹敵する『血の力』を持ったアズハルト一族の次期長レオン殿は、ジハルと人間の間にできた娘を嫁がされそうになっているしな」
「…レオン」
記憶にある名前を耳にし、ローズは思わず呟いてしまった。
実は、レオンの父とロイが旧知の親友だったためか、レオンはよく協会に遊びに来ていた。
五年ほどレオンに会っていないが、当時は女のローズよりも弱く、泣き虫だったことを今でも覚えている。そんな泣き虫なレオンを守りたいと、ローズは強く決心し、大人さえも辛いと思う厳しい訓練に食らいつけたのだ。今を思えば、あれはローズにとって淡い初恋だったのかもしれない。
「レオン…また会えるでしょうか……」
ローズの声が暗闇に吸い込まれるようにして、消えていった……
† † † † † † † †
任務の報告を終えたベンとローズは、食堂に移って夕食をとっていた。
「いやー、今日も雑魚ばかりで疲れたぜー。雑魚は群れるから面倒ちぃーーー」
酒を飲んだベンが、悪態を吐く。ローズはまだ16歳なので、トマトジュースを飲んでいる。
元々ローズは血への渇望が全くなく、いくら血を見ても欲望に囚われることはない。逆に他のヴァンパイア達がローズの血を見て、自我を失うほどで、友人曰く、「始祖の血に匹敵するほど強い欲望に囚われる」そうだ。
「…ベン。飲み過ぎでは?明日も任務が控えているのでしょう?」
酒を飲んで、周囲に絡み始めたベンに注意を促す。
「ローズ!俺のせっかくの楽しみを奪うなーーー!!!てかお前の顔、反則だろう!!!頼むから、俺の隣に並ぶなーーー!!!」
「はぁ…」
変な理由で突然キレられ、頭上に?マークが浮かんだ。
ローズ自身も自分の容姿が普通より優れていることは自覚している…いや、自覚せざるを得なかった。
なんせ、父のロイが言うのだ。「お前は天然男ホイホイだと、思え!そして、男は俺以外全て獣だ!!!」と。
これを毎日父は言うのだ。おかげで夢の中にまで、父の教えが出てくるほどだった。
「ベン、贅沢を言うな。皆ローズと任務したくても我慢しているんだ」
取り巻きの男性陣がジトーとベンに視線を送る。この贅沢者めが!と目が訴えている。
「うるせーーー!!!ロイ会長に毎日毎日お前のことを信じているからな、俺の分までローズを守ってくれ、と言われてみろ!俺の頭が狂いそうだわ!!!」
まさか父がベンにそんなことを言っていたとは…。先程までベンを批判していた取り巻きたちも黙り込み、逆にベンに同情の目を向けている。
すると、ローズの視界の端で食堂の中に駆け込んでくる者が見えた。
「ローズ殿はいますか!!!」
「ん…?そんなに慌ててどうしたの?」
「ロイ会長がお呼びです!至急応接間へ来るように、と」
「分かった。今向かう」
席を立ち、自分の食器を片付ける。そして、そのまま急ぎ足で応接間に向かった。
† † † † † † † †
応接間に入ると、既にそこにはロイと一人の青年がいた。
光り輝く金髪、澄んだ青い瞳、鋭利な印象を受けるが恐ろしいほど整った顔立ち……かつて泣き虫だったとは思えないほど変わり果てたレオンがいた。
「ローズ、来たかい。覚えていると思うが、あのレオンだ」
「……ローズか」
鋭利な顔立ちからは予想できないほどの甘く低い声。思わず、聞き惚れそうになってしまった。
「…久しぶりです、レオン」
あの頃の弱くて泣き虫だった頃のレオンはもういない…。
「…綺麗になったな」
「え…?」
レオンの言葉に耳を疑った。多分これは幻聴だ、と自分に言い聞かす。じゃないと、自分が調子に乗りそうだ。こんな美青年に褒められて、嬉しくない女がどこにいようか、いやいないだろう。
「おいレオン、ローズを口説くな。野郎共と毎日いるせいか、全く危機感が足りてない。親として心配になるぐらいだ」
「と、父さんッ!!!
え、えーと、レオン?今日は何の用で?」
親バカを発揮するロイに、ローズの顔が真っ赤に染まる。血は繋がっていないが、ロイとローズを実の娘のように扱ってくれる。嬉しく思うものの少し照れ臭い。
「…頼みがある」
「頼みですか?」
ジハルに匹敵する『血の力』を持っているレオン。そんな彼からローズに頼みとは一体どのような内容なのだろうか?
「ジハルが私に娘を嫁がせようとしているのは知っていますか?」
「えぇ、知っていますが、それが何か?」
強き者には強き相手を…『血の力』を最も重視するヴァンパイアにとって、政略結婚は珍しくない。
唯一特殊だったのがヴォルデン一族で、『古の血族』の中で最も濃い血を持つ彼らは、どんな血でも喰らい尽くしてしまうらしく、自らの手で相手を選ぶことができるとか。ま、既に途絶えてしまった血族であるのだけれど。
「俺はジハルの娘を迎える気はない。一度、古の魔女に運命を占ってもらったが、俺の運命の相手は気高く、ジハルさえも凌ぐ力を持つという…」
「運命の相手?」
「あぁ、魔女は俺のことを『希望の子』と呼んだ。ラシュル一族が支配するヴァンパイア界を滅ぼし、新たな世を作ると言った。そのために俺には、運命の相手が必要だと。『血の覇者』と呼ばれる相手が…」
『血の覇者』という言葉が頭の中で木霊する。昔大切な人が私のことをそう呼んだ気がする…思い出そうとするが、壁のようなものがそれを邪魔する。
「『血の覇者』とは何ですか?」
「ヴォルデン一族に関係する何からしい。だが、知っての通りヴォルデン一族は、ジハルの手によって滅ぼされた。もしかしたら、ヴォルデン一族の遠い遠い血族が生き残っているのかもしれない」
「なるほど…それで、あなたの頼みとは?」
「俺の仮の婚約者になって欲しい」
「え?」
ローズの思考が一瞬停止した。
「ジハルの娘といっても人間の女との間にできた娘だ。少なからず、ジハルの『古の血』は薄まってる」
「それとこれがどうして私との仮婚約に結びつくんですかッ⁉︎」
「お前に頼む前に他の血族の女性をあたったんだが、既婚者しかいなくてな。諦めかけていた時に、俺の親父がローズに頼んでみては?と提案してきたんだ。お前なら『吸血姫』として名高いし、力もある。ジハルも反対できないんじゃないか、と」
「む、無茶苦茶な!父上からも何か言ってくださいッ!!!」
「私は…賛成だ。なんせ、ジハルはハンター協会を潰そうとしている。レオンが俺の娘であるローズと仮婚約してくれたら、ジハルもハンター協会を潰しにくくなるだろう。その間にレオンが運命の相手を見つけてくれれば、一石二鳥じゃないか」
まさか、ハンター協会のためとはいえ娘を売るとは…。いや、私もハンター協会が潰されるのは嫌だけど…ちょっと複雑。
「お父様の許しも出た。後はローズ次第だな?」
「う〜〜〜、分かったわよッ!!!その計画、乗ってあげようじゃないのッ!!!」
† † † † † † † †
レオンの計画に乗ってから、一週間が過ぎようとしていた。ヴァンパイア界に戻ったレオンは、ローズとの婚約を大々的に発表した。
おかげで今日開かれる『古の血族』主催の夜会に、レオンの婚約としてローズも招待されてしまった。
「なんで…私がこんなドレスを…」
紺の色のシックなドレスに身を包んだ自分が姿見の鏡に映り、ローズは深く項垂れる。しっかり鍛えあげられていたおかげでコルセットの着用は免れたが、高いヒールといい、とても動き辛い。
「…似合っているな」
落ち込んでいると、後方からレオンの声が聞こえ、思わず振り返る。金のラインが所々に刺繍され、白を基調とした軍服を身に纏ったレオン。いつもに増して、神聖なオーラを放っているレオンに見惚れそうになる。
「お、驚かさないでよ!」
「すまない。では、俺のお姫さま。お手を…」
そう言って手を差し出してくるレオン。こんな美青年にエスコートされるなんて、もう一生味わえないかもしれない。だって、レオンには運命の相手がいて、自分は仮の婚約者なのだから。分かっていても、その事実にチクリと心が痛んだ。それを必死に押し込めて、彼の手に自分の手を重ねる。
「ちゃんとエスコートしてよね?私の王子様?」
ローズの不意打ちにレオンの動きが止まった。
「…ローズ、狙っていたか?ち、お返しだ…」
と言って、レオンは片膝をつき、物語に出てくる王子様のような動作でローズの手の甲に口付けを落とす。あまりにも突然のことで、ローズの顔が真っ赤に染まった。
「…う〜、レオンはいつもズルいです!」
「ローズが可愛くて、からかいたくなった」
「う〜〜〜!!!レオンには運命の相手がいるでしょう!私なんかにかまってないで、ちゃんと探しなさいよね!」
「…運命の相手なんていらない…」
レオンがポロリと呟くせいで、ローズは上手く聞き取れなかった。
「…え?なんて言ったの?」
「ッ…気にするな。では、行くぞ?」
そう言って、レオンはローズの手を強く握りしめ、会場に向かった。
† † † † † † † †
会場の中は多くのヴァンパイアで蔓延っていた。そして、会場の奥の玉座に座る一人の男性。長い灰色の髪を後ろに流し、ゆったりと構えている様子が王としての余裕を感じさせる。
目は深く閉じられており、瞳の色は分からないが、噂によると血のような赤い瞳だという。
あの男性を見ていると、何故か血が騒ぐ。身体全身で、あの男性は危険だと訴えている気がする。
「…彼がジハルですか?」
「あぁ、随分とご機嫌斜めだな」
ジハルを見て、「ご機嫌斜めだ」というレオン。ローズからしてみたら、寝てるようにしか見えない。ローズがじーと眺めていると、ジハルがゆっくりと瞼を開けた。そして、覗く真っ赤な瞳。その瞳を見た瞬間、さっき以上にローズの血が騒めき出す。
「殺せ」「裏切り者には死を」「我らに血を」と自分ではない誰かがローズの耳元で囁く。
「や、やめて…」
「ローズ?」
レオンが心配そうにローズの顔を覗き込むが、ローズは両腕で自分の身体を抱きしめるようにしてその場に座り込む。
「…か、母様。お願い、私を一人にしな、いで……」
ローズの頬を涙が伝い始めた。膨大な記憶が…頭の中を駆け巡り、胸の十字架がピキパキと音を立てる。
「…レオン、パートナー殿の体調が優れないようだが?」
いつの間にかこちらに移動していたジハルが、レオン達を冷たく見下ろしてくる。
「…人の多さに酔ったのでしょう。パートナーを心配していただき、ありがとうございます」
「ふん、我が娘の方がその女よりも頑丈で『血の力』も強い。その女を下がらせろ。かわりに…シャロンおいで」
ジハルが周囲に呼びかけると、ピンク色の髪の少女が出てくる。
「お父様、なーにー?あ、レオン様ッ‼︎」
レオンを見つけると、嬉しそうに近寄ってくるシャロン。もちろんローズのことはガン無視。
「ち…ジハル様、私はローズを連れて引き下がりたいと思います」
「駄目だ。シャロンを連れて、回れ」
「レオン様、行きましょう?そんな女、放っておいて、ね?」
レオンの腕を引っ張り、ローズから引き離そうとするシャロン。
「は、離せ!俺はローズを愛してるんだ!」
「ッ!!!
この女が悪いのね!いいわ!私がこの会場から追い出してやるんだから!」
そう言って、シャロンはローズの元に近寄り、蹴り飛ばそうとするのを、レオンが慌てて止めに入る。
「ちッ、ふざけんなよ!!!」
「キャッ⁉︎」
レオンがシャロンを突き飛ばし、ローズを庇うように背中に隠す。突き飛ばされたシャロンは、今の衝撃で足を挫いたらしく、その場に倒れ込んだ。
「貴様、我が娘に…罰をくれてやろう」
そう言って、ジハルは自分の指を噛み、レオンに手を翳す。すると、ジハルの掌から流れ出た血は床に垂れることなく空中で集まり始める。
血を変化自在に操る、それがジハルの『血の力』。この力で血を数多の剣に変化させ、アランを再生不可能まで刺し殺したのだ。
「…どうやって痛めつけてやろうか?」
笑みを浮かべながら、ジハルは血の塊を変化させていく。血が作り出したのは、大きな鎌。
その鎌を掴んだジハルは、その場で一振りをした。途端に、レオンの左手首が吹き飛んだ。
「……」
無くなった左手首を無言で見つめるレオン。時間が経てば、再生できるが血を失うのはあまり宜しくない。
「ハハ、次はどこの部位を行こうか?」
ジハルはもう一度鎌を振り落とし、レオンの右肩から下が吹っ飛び、次に左足が消える。体のバランスを失ったレオンはその場に倒れ込む。
それをローズは、ただ呆然と眺めていた。「やめて」と言いたいのに声が出ない。
「達磨になってみるか?それとも…その後ろの女性を凌辱させたほうが面白いだろうか、レオン?」
「ッ!!!ローズは関係ない!」
かなり血を失って、苦しいはずなのにローズを庇うとするレオン。
彼に庇われるだけの自分が悔しい。昔、誓ったではないか…彼を守れるようになるのだと…強くなるのだと。
ローズの中で誰かが囁く。
『力が欲しいか、ローズ』と低く、どこか懐かしい男性の声が。
『大切な人を守るのです、ローズ』と優しくも、力強い女性の声が。
父様と母様の声が聞こえる。
「父様、母様…私の力を…彼を守る力を下さい」
ローズが祈るように呟くと、胸の十字架が光り出し、それはローズ自身を包み込む。
「ロ、ローズ?」
急に光りだしたローズにレオンが振り向く。
カチャリ、という音と共に胸の十字架が外れる。
途端にローズの白銀の髪がさらに光り出し、黄金の瞳が真紅に染まった。その瞳は、ジハルの瞳の色よりも色鮮やかで美しい。
「美しい」と誰かが呟いた。
「あ、有り得ない!その瞳の色にその輝き…ヴォルデン一族の生き残りだと!バカな!」
酷く狼狽するジハルを、ローズはそっと見つめた。
「…母様は自分の命を犠牲に私にこの首飾りを作ってくれました。この首飾りは、ヴォルデン一族の禍々しい力を抑え、幼く力の制御も上手くできない私の身を守ってくれました。
ジハル、貴方にその王座は相応しくない。その座は『始祖王の血筋』であるヴォルデン一族が引き継いできたもの。それを他の血族が治めるなど、あってはならない」
ローズが会場に手を翳すと、会場にいる全ての者が跪き始める。
「な、なぜこんな小娘に跪くのだ!王は私だ!私の命令に従え!」
「父は、私に言いました。お前は『血の覇者』の力を持っている、と。『血の覇者』とは始祖王と同じ力。つまり私は生まれた瞬間から王となる定めだった。私の力を知った父は、私の存在自体を隠しました。もし私の存在が世界にバレたら…きっとそれを利用しようとする輩が出てくるでしょう?だから、力が安定し、正しい判断ができるまで…と」
「『血の覇者』だと、ふざけるなー!!!」
逆上して立ち向かってくるジハルに冷たく言い放つ。
「…お前に慈悲を与えてあげましょう。自らその命を絶ちなさい。さすれば、お前の一族全ての者の命を助けましょう」
ローズがジハルに命じると、ジハルの意思とは裏腹に身体が勝手動き出した。
「ば、馬鹿な!身体が勝手に動くだと!!!」
ジハルは自らの両腕で自分の首を絞める。
「…さようなら、ジハル。あの世の父と母に謝罪してください」
「ヤメロォォォオオ!!!」
そのローズの言葉と共にジハルは自らの手で自らの首を刎ねた。
† † † † † † † †
「まさか、ローズがヴォルデン一族の生き残りだったとは…予想にもしなかった。ちなみにお前の親ってアラン王とユリア様か?」
ジハルの処刑を終えたローズとレオンは、会場を後にし、レオンの屋敷で静かに寄り添っていた。
「えぇ、二人共私のことを深く愛してくれました」
「そうか…それで、話は変わるんだが…もう一度プロポーズしていいか?」
「え?」
「いや、この前は仮の婚約者としてだったから…俺の本当の婚約者になって欲しい」
若干照れながらプロポーズしてくるレオンに思わずローズは笑ってしまった。
「ふふ。勿論じゃない、レオン。
貴方は私の『希望』になってくれるんでしょう」
「あぁ…常にお前の『希望』となろう…」
父様、母様、私ローズは貴方たちが残してくれたこの世界の『希望』となり、素晴らしい世界を創り上げてみせましょう。
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