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慟哭の魔法少女  作者: 黒飴 巴
7/11

第7話 儀式

 時間がないから、諸々の説明は後にしてまずは魔法少女になる儀式をすることになった。とにかく、急いで都内の病院で暴れている化け物、〝叛逆者〟を阻止する必要がある、とのことだ。事が急を要する事態なのは、椎名雪も十分わかっていた。

「シイナさんを正規魔法少女の代わり……代理魔法少女にする儀式というか、作業というかをこれからします」

「代理まほうしょうじょ……」

 そのまんまだな、と思ったことは突っ込まなかった。リロット・アーブル――リリィが真剣な顔をしていたからだ。

 雪に肩を支えられながら、リリィは床から立ち上がった。窓とベランダをしきりに気にした。

「はい。これをやらなければシイナさんは魔法少女になれません。今は時間がないので一番手っ取り早いやり方で……いきます」

「うん」

 リリィはリビングのドアに目配せした。横目に雪を見て、遠慮気味にドアを指さす。

「なので……あの、一度シイナさんのお部屋に戻りたいのですが……あのお部屋はシイナさんのお部屋ですよね?」

「え? ああ、うん。さっきいた部屋なら私のだけど」

 何故ちょっと顔を赤くする?

「えっ。ここじゃあ駄目なの? その儀式っての」

 階段をその足でまた上るのは大変だろう。リリィはもじもじしながらこくっと頷いた。なんか挙動が不審だな。

「はい。その……ここよりも、あちらのお部屋の方が……いいと……」

 理由をはっきり説明してくれないので釈然としないが、そちらの――魔法少女の事情は何一つわからないので、ここは従うしかない。地理的な何かとか風水とか、色々あるのかもしれない。

「そうか、わかった。じゃあ上に行こうか。今すぐだよね?」

「はい」

 ぽっとリリィの頬が赤くなった。だからなんなのよ?

「階段上るの手伝うよ」

「はい、すみません」

「もう慣れたようなもんだよ」

 リリィと一緒に二階まで上がった。階段では意外と苦労せずにリリィを上らせることができた。リリィが頑張ってくれたのと、互いに上手く息を合わせられたからだと思う。

 雪の部屋に入った。さっき部屋に来てから一時間も経っていないから当然だったけど、リリィがいた匂いが強く残っていた。全く不快ではない、むしろどんな空気清浄より心地がいい香りだ。なんて言ったら多分変態だろう。でも本当にリリィの匂いはいい匂いだった。女の子の香り、というやつだ。まるで自分の部屋じゃないみたいだ。

 雪がドアを閉めていると、リリィは部屋に踏み込んで行って、窓の外を覗き込んでいた。片足で歩くことに慣れてきたみたいだった。ひょいひょいと巧く歩行できるものである。感心していると、リリィが肩ごしに振り返って言った。

「シイナさん、あの、カーテンお閉めしてもよろしいでしょうか?」

「え? ああ、うん。いいけど」

 なんでカーテンを閉める必要があるのだろう。これも儀式の一環だろうか。日差しが強いと駄目、とか、暗くないと駄目、とかだろうか。いまいち意図が読めない。これが魔法少女事情というやつか。

 片足で上手にバランスを取ってカーテンをきっちり閉め、次にリリィはけんけんでベッドに向かった。枕の横のあたりで止まり、こちらを振り向いた。

「あ、あの、シイナさん」

「はい。なんでしょう?」

 手いじりし、非常に訊きづらそうにリリィはごにょごにょと呟いた。

「こ、このベッドは……その、ふ、二人で寝たりなどしても大丈夫でしょうか?」

「はい? といいますと?」

 こっちを見れないのか、目を逸らしてリリィは理由を述べる。

「で、ですから、あの、ここに例えば人が二人一緒に寝たとしても、壊れたりなどしないでしょうか……ということです」

 こっ恥ずかしそうにリリィは顔を赤く染めていた。その問いの意味がよくわからなかったが、雪は頷いて返答した。

「ああ、それなら大丈夫だよ。よほど重い人が乗らない限りは。けっこう頑丈だし、昔は妹と一緒に寝たりもしてたし」

「あ、そ、そうなんですね……じゃあ、安心です」

 安心? 何が。

 それにしても、確か今年に入ってから一度も妹と同じベッドで寝ていない、ということを思い出した。雪が高校生にもなったことだし恥じらいがあるのか、単に姉離れの時期が来たのか。別に仲が悪くなったわけではないけれど、少し寂しい気がしないでもなかった。今度少し誘ってみようかな。ホラー映画でも見れば一緒に寝てくれるかもしれない。

 下衆な発想はさておき、今は魔法少女の儀式だ。さて、代理魔法少女任命の儀式とはどんなものなのか?

 リリィに注目して待っていると、心を落ち着かせるかのように深呼吸をしていた。何やら緊張しているように見えるのは、現職魔法少女にとっても重大な儀式だからだろうか。顔を火照らせたまま、いよいよリリィは雪の方を向いて話し始めた。

「今は道具が無いので……それに、準備している時間も無いので、先程言った通り最も早くて簡単な方法で、シイナさんを魔法少女にする儀式を行います」

 すると、リリィはファスナーを開けてジャージの上を脱いだ。そもそも上しか着ていなかったから、パンツとブラジャーだけの下着姿になった。ジャージの襟からちらちらのぞいていた谷間が、白くてきゅっと締まったお腹とともに前回に露わになった。初めに脱がせた時はリリィは寝ていたけれど、こう意識があって動いている時に下着姿になられるというのは、ちょっと刺激の与えられ具合が違った。

 だって可愛いし、綺麗だし、清楚そうだから露出の多い恰好はどうかと思うのに――脱いだら脱いだで華美で艶やかだ。

 リリィは脱いだジャージを椅子の背凭れにかけた。

 やっぱり恥ずかしいのか、ちらちらと雪の反応を気にしている。それからベッドに上がって、足を崩した姿勢で雪の方を向いて座った。

 ていうか、何で脱いだんだ? え、これも儀式? 儀式なの?

「あ、あの、シイナさん」

 目を合わせづらそうに余所を見たりこっちを見たりして、リリィは雪を呼んだ。

「うん、なに」

「こちらへ、来てください」

「あ、うん。わかった」

 雪はベッドに歩み寄った。これは一緒にベッドに乗るべきなのか。いや、でもリリィはほぼ裸だし、特別広いベッドじゃないから窮屈だろう。

 雪はベッドの前で棒立ちするに留まって、次の指示を待った。ベッドの上ではあられもない姿で恥ずかしそうに頬を染める英国少女の姿。傍らで突っ立っている日本人少女。どちらとも何も言わずにただ見つめあっては目を逸らす。薄暗い部屋の中。

 どういう状況だ、これ。

 やがてリリィが少しうわずった声で言い訳みたいに言った。

「ほ、本当は道具とか使うんですよ? いつもこんなやり方するわけじゃないんですから。〝叛逆者〟に襲われた時に、荷物も失くしちゃったんです」

「うん、わかった、わかったから。それで、私は何をすればいいの?」

「…………」

 言いづらそうに渋ってから、妙に突き放したような口調になった。

「こ、これは〝吸引〟と言われるやり方です」

「吸引……?」

 ぽんぽん、とリリィはベッドを叩いた。座れ、ということなのだろう。わけもわからず雪はベッドに腰を下ろした。するとまた、リリィは手でちょいちょいっと雪を呼び寄せた。もっと近づいて、と。

 ベッドに足を上げて雪はリリィに身を寄せた。リリィが下着しか身に着けていないので、あまり接近するのには抵抗があった。

「パ……」

「パ?」

 リリィは上目遣いに雪を見た。その仕草はちょっと心臓に悪い。

「パーカー……を、脱いでもらえませんか?」

「パーカーを? いいけど……」

「チャ、チャックの部分があたると痛いので……」

「う、うん?」

 当たると痛いって、どこに?

 雪は脱いだパーカーを椅子の上に放り投げた。雪は上にTシャツ下にジーンズという、リリィに比べればずっと厚着の恰好になった。

 これからどうするんだろうと思っていると、なんと、リリィは雪の前で足を広げ始めた。ちょっと、なんていかがわしいポーズを取るんだ。

 だめだよそんな恰好しちゃあ、リリィ。そんないやらしいポーズしちゃだめだよ。でもそんな君も可愛いよ。

 下にパンツしか穿いていない綺麗な脚を広げた――と、そこであるものが目についた。左の内腿のパンツに近い――本当に近くて際どい位置に、赤い丸い紋様が書いてあった。五百円玉くらいの大きさもない小さな印だ。傷や何かの痕ではなかった。濃い赤色で、明らかに人為的に描かれたものだった。

 そこで気がついた。これは血で描いたんだ。

 根拠も特に無い、ただぱっと、これは血だ、と思った。

 内腿のちょうど雪が注目していたその印を、リリィは指さした。

「これは魔法少女の紋様です。これを身に刻むことで、私達は魔法少女となることができるようになるんです」

「へ、へえ」

「刻むと言っても、ただ紋様を描くだけですけど」

「……」

 雪が次の指示を待っていると、リリィは更に顔を紅潮させて、そして、言った。

「吸引とは、つまり、私のここからシイナさんが魔法少女の力を吸い込むということです」

 魔法少女の紋様を指さして、リリィはそう説明した。

 リリィはこれ以上ないくらいに顔を真っ赤っかにしていた。恥じらう姿がちょっと犯罪っぽく見えてしまうのは雪が悪いのだろうか。

 吸い込む、って?

 〝そこ〟から?

 リリィが指さしている、そこからか?

「え、吸い込むって、どうやって」

「口をつけて、そのまま吸ってください」

 えええええええ~~~。

 まじでか。

 これは流石の雪でも、恥ずかしいというか、抵抗があった。

 だって、内腿に口をつけて、吸うって? しかもリリィのだぞ? 他ならぬリリィの内腿だぞ? 変態かよ!

 しかし、リリィは真剣そうだった。赤面しながらも、その目は彼女が本気であることを物語っていた。

 雪は唾を飲み込んだ。一応、確認することにした。

「ここにキスして、私が吸うってことだよね?」

「はい」

「本当にいいの?」

「そ、それしかないんですっ」

 リリィは手の甲で隠すように顔を覆った。隠れきれてないのだけれど。

「物理的な吸引が、実は一番効果的なんです。魔力もよく通る上に、体にも馴染みやすくって……」

「そこらへんは説明されても、わかんないかな」

 魔力とか言われても……今朝まで普通の女子高生だったので。今も気持ち的にはそのままだが。

「シ、シイナさんこそ……」

「え?」

 急に裏返った声で、リリィが言った。潤んだ目が雪を見ていた。

「私のこんな所なんて、吸いたくないですよね……」

 勢いよく雪はリリィに詰め寄った。リリィがびくっとした。顔は赤いけど、怯えた様子はなかった。

「じゃあ、するよ。私……」

 ぽすっと枕に、リリィは頭を預けた。

「はい。どうぞ……」

 雪はつやつやするリリィの太腿に手を触れた。こそばかったのか、リリィが「んっ」とかすかに悶えた。

 それからつーっと指で腿を辿っていき、魔法少女の紋様に指先をあてた。触っただけでは印が描かれているとはわからない。変わった感触はなかった。同じすべすべした肌だ。ここを、これから……。

 枕の上でぎゅっと瞼を閉じているリリィを見た。雪は太腿から手を離して、覆い被さるように、リリィの体の上に腕でまたがった。

 なんだ? とリリィが細く目を開いた。そのリリィの顔を隠していた彼女の右手を、雪は左手で掴んで横にどかした。

 びっくりした顔で、リリィは目を見開いて雪を見た。二人の顔の距離は――その態勢に伴った近さにあった。

 リリィの甘い息が香った。雪はじっとリリィを見つめた。リリィも雪から、目を離さなかった。

「雪、って呼んで」

「セツ……?」

「うん。雪って漢字で書いて、『セツ』って読むんだ」

「そうなんですか……」

 ふふっと、リリィが笑った。その笑顔が宝物のように、輝いていた。

「綺麗な名前ですね」

 リリィの右手首から手を離し、雪は彼女の脚の間に、座った。

「うん、ありがと」

 ゆっくり姿勢を低くしていって、リリィの内腿に手を当て、股のすぐ傍にある紋様に顔を近づけた。リリィの体に近づくと、彼女の匂いが強く香った。少し、汗もかいてみるみたいだ。

相変わらず、良い匂い。

「じゃあ、するよ」

 雪の吐いた息がリリィの内腿に跳ね返った。

「……はい」

 頭上からリリィのか細い声が聞こえた。雪はそっと内腿の紋様に唇を触れた。

「……っ」

 リリィの体温が唇から伝わる。かなり緊張しているみたいだ。リリィの肌が熱い。

「紋様を噛むようにして……強く、吸ってください。でないと、効果がないので……っ」

「うん……わかった」

 一度唇を離してから、少し口を開いて紋様に覆い被せた。

「ふ…んん……」

 リリィの小さな悲鳴がした。ふと口を離すと、リリィが顔を赤くしながら首を横に振った。

「続けてくださいっ」

 再三紋様に口をつけて、雪は言われた通り吸い始めた。

「ふ、あ、は……んんん……ふぁ、ん………っ」

 リリィが押し殺した声を漏らす。

 雪も少しだけ、体が火照ってきた。

 薄暗い部屋のベッドの上で開脚したリリィの内腿を、雪が吸い込んでいる構図はどう考えても怪しく、官能的だった。

「んん……あ、はぁ……ふんん……はひ………」

 喘いだリリィの体がびくんと反応している。激しく動かれないように雪がリリィの太腿を押さえた。パンツにかなり近い位置に紋様があるので、雪の顔が下着に触れることがある。

「…………」

 なんだこれ。

 どうしてこうなった。

 今更だけど女の子同士でなんでこういうことしてるんだ?

 アウト……いや、女同士だからむしろセーフか?

 もう、なんだかよくわからなくなってきた。

 リリィの匂いが直接脳に染み込んでくるみたいで、気持ちよかった。

「もっと、強く……止まらないで強く、吸ってください……っ」

 魔法少女が指示を下した。専門的なことは彼女に任せるしかない。だから、雪は言われた通り彼女の紋様に強く、吸いついた。

 血が集まって赤くなるんじゃないか、ていうくらい強く吸った。でもリリィは喘ぎながら「もっと」と注文してくる。雪は息継ぎしてから噛みつくように紋様に吸いつく。

「もっと、強く……やめないで……強く吸って、くださいぃ……あっ」

 つい舌でリリィの内腿に触れてしまう。唾液を舐めとるとリリィの喘ぎ声が一段と濃くなる。

「んん……ふぅ…はぁ、ひゃっ、はぁぅはぁっ、あぅぅ……」

 敏感に反応する脚を押さえて、雪は吸いつき続ける。

 唾液が口の端から漏れた。ずっと吸っている雪も苦しくなってきた。

 息継ぎしてからまた内腿にしゃぶりつく。雪の息も、段々と乱れてきた。リリィはずっと悶えている。必死に我慢してくれてるみたいだが、体はびくびくと反応していた。涎が零れる。

 なんかちょっと、こっちも変な気分になってきた……。

「ぷはぁっ」

 雪は紋様から口を離した。魔法少女の紋様から糸を引いた。リリィの内腿は紋様を中心に雪の唾液まみれになっていた。

「や、あ、やめちゃだめ……続けて、ください……」

「ごめん、ちょっと休憩」

 手の甲で口の涎を拭いつつ、雪は休息を進言した。これは思ったよりも大変だ。こんなに強く吸い続けていなきゃならないとは思わなかった。

 リリィは大きく息を吐いた。彼女も少し休憩を置いた方がよさそうだ。あんなに敏感に反応してたのでは、疲れただろう。

「ん……ふぅ……」

 リリィは呼吸を整えている。雪も大きく息を吸って呼吸数を調節し直した。心臓も少しどきどきしつつある。

 おかしいな。あんまり動悸は変化しない方なのに。

 リリィの妖艶ともいえるみだらな姿に雪は目を向けた。

「…………」

 これはまた、別か。

 ちょっとどきどきするのも無理はないかもしれない。

 唾液で濡れた紋様を指で撫でた。ぬるっとした肌の上を指が滑る。

「ひうっ」

 リリィが小さく鳴いた。

 彼女の股の間に手をついて、雪は顔を下げた。

「じゃあもう一回、いくよ」

「ちょっと、待ってください」

 慌てた口調でリリィが遮った。雪は顔を上げた。

 恥ずかしそうに顔を手で隠しながら、リリィは言った。

「私も……少し、休憩……」

「………」

 そうですか。

 まあ、ですよね。普通は。

 ひぃ、ふぅ、と出産でもするみたいに息を整えるリリィに、雪は訊いた。

「リリィはこれやるの何回目?」

「えっ、は、初めてですよっ」

「あ、そうなんだ」

 拗ねたようにリリィは目を逸らした。

「い、いつもは道具を使ってやるんですから……こういうのは、やったことがありません。今回が、初めてです」

「道具を使う方は、こんなのとは違うんだ?」

「はい。まあ、もっと楽というか……健全というか……」

 言葉の最後の方で声がかなり小さくなった。

「そう、だよね……魔法少女のことはよくわかんないけど……」

「……」

「……」

 沈黙に静まり返った。雪とリリィは互いに顔色を窺うように目と目を合わせた。

「じゃあ、やろっか」

 先に言ったのは雪の方だった。リリィが弱弱しく返事をした。

「はい……」

 リリィの太腿に手を当てて、顔を脚の間に沈めるように下げていき、大きく息を吸ってから、紋様に口をつけた。

「ひ、ふぅ……っ」

 指示通りに強く吸う。リリィがどれだけ喘いでも構わず紋様に吸いつく。魔法少女の力を吸い上げる。「いい」と言うまで吸うのをやめてはいけない、それがリリィの指示だった。

「は、はぁっ……ひぃっ……あ、ああっ、う、は、あっ」

 今までで一番、強く、激しくリリィの体に吸いついた。口だけではなくて、全身でリリィに抱きついているような感覚だった。

「あ、うくぅ………あ、はあぅああっ………あっ、ううぁ、は、あぁ、ふんん……」

 頭がくらくらしてきた。

 それでも雪はしがみつくように強くリリィに吸いついた。

「……はぁうあっ、あっ、あっ、ふぁああうあ、あぁぁぁっ、せ、つ、さぁん……雪、雪さん……あ、あぁう、はぁっ……ひう……雪さ、ん、雪さん、せつぅ、さん、あっ、あん、んうう……あぁぁ……雪さん…雪さん……雪、さぁぁん………っ」

 なんで名前呼ぶの……でもちっとも悪い気はしなかった。

 頭がぼやっとするのはその魔法少女の力ってのが入り込んできているからなのだろうか。だとしたらちょっと、麻薬みたいだ。なんか、言葉で表せないけど、気持ちよくて、意識がぼんやりして――多分中毒になる薬って、こんな感じなんじゃないだろうか。

 雪は必死に吸い込んでいたが、リリィもまた必死に耐えているみたいで、その時に聞こえていた喘ぐ声がまた――本当に可愛かった。

 食べちゃいたいくらいどうのって、文字通りこれのことなんじゃないかな……。

「雪さん……はあぁぁっ……いい、です。もう……そろそろです……おわりました……あぁっ……」

 ぷはっと、半ば引きはがすように雪はリリィの体から口を離した。唾液がまた糸を引いた。息をするのも忘れていたみたいで、口を離した途端、急に呼吸が荒くなった。

 リリィの疲れたような声が聞こえた。

「ありがとう……ございました。これで、完了です……」

 蒸気が出そうなほど顔を、体を赤く火照らせたリリィが儀式の成功を伝えた。そうか、よかったと雪は思った。

 ぴくんと、リリィの脚がまだ震えていた。雪も汗をかくくらい体が熱くなっていた。

 パーカー脱いでおいてよかったな。むしろもっと薄着でもよかったくらい。

 あ、そうだ。

 外で暴れてる化け物を、止めに行かなくちゃならないんだった。ということを、ふと思い出した。ああ、なんだかまだ頭がぼんやりしていた。

「じゃあ、行こうか」

 と、雪は小さい声で言った。雪も少しだけ疲れているみたいだった。

「はひ……」

 と、リリィは力の抜けた返事をした。

 少しの間渋ってから、どちらからともなく二人は体を起こした。

 なんというか。

 一発セ●クスでもしたような気分だった。


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