第5話 告白
炊飯器に残っていたご飯を入れた鍋に水を加えてコンロに乗せた。蓋を閉めてスイッチを押した。ガスが放出され、ぼっと音を立てて鍋の下に火が点いた。椎名雪はレバーで火力を調節して、時間を確認した。十二時十五分だった。
部屋で寝かせていた女の子が起きた。思ったよりも具合が良さそうだった。食欲もあるみたいだったので、一先ずは安心した。あとは怪我のことだが、それは要相談ということで、まずは物を食べて体力を回復してもらおう。ヨーロッパ系の人の口にお粥が合うかはわからないけれど、食べやすい方が良いと思った。パンが良いならサンドイッチも買って来てあるし、食パンくらいならある。
問題は食材が減っていることを母にどう説明するかだ、と雪は考えていた。
「………」
ぐつぐつと音を立て始めた鍋を眺め、雪は頭の中を整理していた。
さっき部屋で気がついた女の子と話している時、不思議なことが起こった。女の子自体は丁寧に礼を言える礼儀正しい良い子だ。謝りもしていた。雪は嫌とは思っていないし、だからこそあの子を家に連れて来たのだ。だが感謝を述べている最中、女の子指先が突然光ったのだ。
それは雪の顔のすぐ前だったが、不思議と眩しくはなかった。目が眩むこともなかった。光の残像が目の裏に焼き付くこともなかった。ただ目と鼻の先であの子の細長い綺麗な指が白い光を放ったのが見えた。光はすぐに収まり、何事だろうと思っていると、途端に女の子の様子がおかしくなった。寂しそうに落ち込んだかと思うと、何かにとても驚いていた。
雪を見てびっくりしていたようにも感じたけれど、何にそんなに驚いたのだろうか。突然の怪現象にリアクションを取りづらかったのは雪の方なのだが。あれは何かの気のせいか、錯覚だったのだろうか。
まあ、わからないことを考えていても仕方がない。おっと、そろそろかな。
コンロの火を止め、鍋のふたを開けた。湯気がむわっと雪の顔を覆った。スプーンでちょっとだけ掬って口に運ぶ。うん、いい感じだ。
鍋を乗せたお盆を持って雪はリビングを出た。あの子の口に合うといいけど。
廊下を歩いていると、階段の方から物音がした。何だろうと思って早足に階段を覗きに行った。
すると、階段の真ん中辺りで、上で寝かせていた少女が手すりに掴まって立っていた。包帯をぐるぐる巻きにした左足を庇うようにして不安定な姿勢で階段を下ろうとしていた。
「あ……」
少女が気づいてこちらを向いた。意外だったので雪は思わず足を止めた。
「どうも……」
小さく会釈して、少女はまた階段を降りようとし始める。雪は壁際にお盆を置いて、急いで彼女のもとに向かった。
「ちょっと、まだ駄目だよ無理しちゃ」
少女の左側に回って、肩を貸した。
「もう歩けるの? でも足怪我してるんだから気を付けないと。階段落ちたら危ないでしょ」
「すいません」
雪が肩を貸して一段ずつ慎重に降りた。また階段を上がらせるのを危ないので、リビングに連れて行くことにした。
「ありがとうございます」
肩を組んだ雪の方を見て、少女は言った。その状態で向き合うとかなり顔が近かった。互いの息が顔にあたった。出し抜けに照れたのか、少女は急いで顔を背けた。
可愛いな、こいつ。
それにしても大人しく寝てないで降りてくるだなんて、意外と活発な女の子だ。寝るだけならソファでもいいし、食事は一階で取らせよう。
リビングのソファに少女を座らせて雪は廊下に戻り、お粥を取って来た。テーブルの少女の前にお盆を置いて、鍋の蓋を開けた。沸き立った湯気の中にあるお粥を見て、少女が「わあっ」と声を上げた。嬉しそうな反応だった。心なしか目が輝いている。外国人にお粥はツボなのか。
「食べられる?」
雪は訊いた。お粥を作るとは言ったけれど、お粥が何なのかを承知していたか定かではなかったのが不安だった。
「い、いいんですか?」
頬を紅潮させて少女はきらきらした眼差しで雪を見た。うわっ、すっげぇ元気そうじゃん。
「うん。口に合うといいんだけど……」
少女は盆に入れておいたスプーンを手に取って早速お粥を食べようとした。ぴたっとスプーンを鍋に入れる前に手を止め、ちらっとこちらを見やった。
「あ、あの。日本ではこういう時、イタダキマスって言うんですよね?」
「うん。そうだけど」
女の子は目を閉じて、お辞儀をした。
「イタダキマス」
言うが早いがスプーンに掬って勢いよく口に運んだ。雪が注意する前だったので遅かったが、かなり熱かったようで、女の子は声にならない悲鳴を上げた。ふうふうと息をして口の中を冷まそうとする。
「食欲はあるみたいだね。……まだ熱いから、気をつけて。スプーンに取って冷ましてから食べるといいよ」
きゅっと閉じた少女の瞼に涙がにじんでいた。
「水、持ってこようか」
雪はコップに水を注いで持ってきた。
「あ、ありがひょうごひゃいまう」
「どういたしまして」
雪は少女の斜め前の一人用ソファに腰を下ろした。水を一口飲んで口の中が落ち着くと、雪の忠告通りスプーンの中で少女はお粥を冷めるのを待ってから口に運んだ。それでもまだ熱そうにしていたが、どうにか飲み込んだ。
「どうかな」
雪は味を訊いた。女の子は思い出したようにばっとこっちを向いた。
「美味しいです」
「そっか。よかった」
冷ましてから、また口に入れる。朝から何も食べていなかっただろうから、きっとお腹も空いていたんだろう。言った通り美味しそうに食べてくれた。食も進むみたいだった。
「食べられる分だけでいいから。大した物は無いけど、何か欲しい物あったら言って」
「ふぁい」
雪は背凭れに背中を預けた。少女はいい食べっぷりだけど、動作の一つ一つの淑やかさがあった。言葉も上品で礼儀正しい。どこかの偉いお嬢様かもしれなかった。
「日本語、上手だね」
雪は言った。
口に運んだ一口を飲み込んでから、少女は話した。
「私の友達が教えてくれたんです。いずれ日本に来ることになるから、憶えておいた方が良いって」
「へえ」
友達、か。やっぱりそれまでは外国に住んでいたってことか。日本に来たのは初めて、みたいな態度だけど、発音も完璧だし片言じゃないし、初来日とは思えないくらいぺらぺらだった。喋り方も日本人っぽい。その友達がよっぽど教えるのが上手かったんだろうな。
雪はソファに座り直し、体の正面を少女に向けた。
「私は椎名雪。日本の高校生です。一年生で、歳は十六」
はっとして、急いでスプーンを置いて少女は姿勢を正した。その時ちょっと足を痛そうにした。
「慌てなくていいよ。楽にしてて」
「あ、はい、ありがとうございます」
仕切り直し、少女は真剣な顔をして膝に両手を揃えた。
「私はリロット・アーブルと申します。わけあってイギリスから来たばかりです。歳はシイナさんと同じです。私のことは、リリィと呼んでください」
英国少女リリィは、深々と頭を下げた。ご丁寧にどうも、と雪も会釈した。
イギリスかあ。随分と遠い所から来たな。何しに来たんだろう。それにしてもやっぱり日本語上手いなあ。
「同い年だったんだ」
「はい」
「てことは、こっちに留学?」
リリィは小さく首を振った。
「いえ、向こうでは高校に通っていませんでした」
「そうなんだ。……リロット・アーブル、だっけ。リリィってのは?」
「親しい友人との愛称です。向こうではみんなそう呼んでくれてました」
「なるほど」
確かにリリィの方が呼びやすい。
「リリィは何しに来たの」
それを訊いた途端、リリィの表情がかすかに曇った。気まずそうに俯いて、雪から目を逸らした。逃げ道を探しているみたいだった。
あの化け物と関係があることかな、と雪は考えた。
「それは、その……ごめんなさい。言えません」
ちらっとリリィがこちらに目を向けた。その目が、雪の目には――何だか寂しそうに映った。
言えない、か。
まあ、別にいいけど。困ってるから、助けただけだし。誰だって事情はあるものだ。
植物型の化け物に襲われてるとか、犯罪的に可愛いとか、良い匂いがするとか。髪の毛さらさらとか。色々あるのは当たり前だ。
「謝らなくていいよ」
リリィは自信無さげに顔を上げた。軽い口調で、雪は言った。
「言いたくないことは言わなくたっていいよ。こっちも、無理に訊いたりしないから」
だから安心して、と最後に付け加えた。
何やら彼女が不安そうだったので、そう言いたくなった。
とりあえず私のことは何も気にしなくていいよ、と。
リリィの食事を途中で止めてしまっていたことを思い出した。
「細かいことはいいから、それ食べて。足、は――まだ痛いよね。それ食べ終わったら、包帯代えよ」
「はい……ありがとう、ございます」
おずおずと、リリィはスプーンを持った。ちびっと一口ずつ食べ始める。
「それ、何回目?」
表情筋硬いよね、と言われるくらい感情表現は上手くないけど――雪は微笑して、リリィに言った。
「礼なんていいよ」
一瞬、リリィの顔が泣きそうになって、目が潤んだのが見えた。一旦俯いてから顔を上げて、ほほ笑んだ。
「ありがとうございます……」
「だからいいって」
雪は中腰に立ってテーブルに置いてあるテレビのリモコンを取った。ソファに腰を下ろしてから、テーブルを挟んでリリィに画面を向けたテレビに、リモコンを向けた。
「テレビ入れようか?」
訊きながらボタンを押してテレビの電源を入れた。画面がつき、雪が最後に入れた局の放送が映し出された。この時間、どこかでドラマの再放送とかしてたかな、どうだろう。
そう思ってテレビ画面を見ていると、流れ始めたのはドラマでもバラエティでもなくニュース速報だった。テロップに「暴風」と表示されていたのを目で捉えた。雪は他の局にチャンネルを回した。どこの局も生放送で速報を流していた。内容はみんな同じで「暴風」とか「被害」とかの字幕や解説が出ていた。中には番組を返上して速報のニュースに切り替えている所もあった。
これじゃつまらないかな。ちらっとリリィのことを気にしながら雪は初めに入っていた局にチャンネルを戻した。
スタジオと現場が中継で繋がっているようだった。今は現場から直接生放送を流していて、ヘルメットを被ったレポーターが緊迫した顔でそこの様子を伝えていた。レポーターがしきりに気にしているのは背後に映る大きな建物のようで、そっちを見たりカメラを向いたりしながら早口に状況を報せている。
「えー、繰り返します。こちらが先程から暴風で窓ガラスが割れるなどの被害が起きている、都内の私立病院です。えーこちらは先程から、何度も何枚ものガラスが割れ、中でも被害が起きているようです。つい十分程前にこちらの病院の一部の職員と患者さんが避難を開始しました。えーあちらに見えます玄関から避難しております。救急車や消防車までが駆け付ける事態となっておりまして、えー怪我人も出ているようです」
背後に映っているのは病院らしい。よく見ると一部の窓ガラスが割れており、破片が路上に散乱していた。レポーターが指した病院の玄関前では、担架に乗せた人を救急隊員が救急車に乗せているところだった。遠くから見ていても、顔や手が真っ赤で怪我人であること一目瞭然だった。強く風に吹きつけられて、レポーターも話しにくそうだった。レポーターの着ている上着が煽られる音が声と一緒にマイクに拾われている。バタバタと雑音が入って状況説明が聞き取りにくい。
リリィも一緒になってテレビに注目していた。雪はテレビを消すのをやめてテーブルにリモコンを置いた。
なんか凄いことになってるな。強風が吹いているみたいだ。
雪は窓の外を見てみたが、ここからでは変化はあまり見られなかった。雲の流れはちょっと速いかもしれなかった。
レポーターがまだ喋っていた。
「風が、非常に強く、私も、立っているのがやっとです。えー、本日午前十一時頃から吹き始めた強風は……あっ! 今、窓ガラスが割れました! 病院の窓ガラスが割れました! 四階でしょうか、今四階の窓が割れました――」
音までは届かないが、建物の四階辺りの窓が砕けたのをカメラが捉えた。レポーターが興奮して騒ぎ出した時、雪も注意を惹かれ、息を呑んだ。だが――彼女はレポーターが早口に伝えたこととは、全く別のことに注目していた。
全神経の注意が〝それ〟に惹かれた。そして驚愕とともに激しい違和感を覚えた。
現場レポーターが割れたと伝えた窓――それに、下の階の同じく割れた窓から植物の弦のような太く長いホースが伸びていた。〝それ〟はぐねぐねと動いて、上の階の窓――四階の窓にどんどん入り込んでいっていた。
どこかで見覚えがある――と雪は思った。いや、感じた。あれを自分はどこかで見たことがあると、直感した。
あれはなんだ?
次の瞬間、予想は確信に変わった。
三階の窓から、太く長い弦が更に二本、三本と溢れ出した。屋内から伸びたその触手のようなものは外を通って上階の窓枠を掴み、他の数本は窓の回りにへばりついた。
そして大きな緑色の頭が、姿を現した。食虫植物のような大きな口が、口だけで構成されたような頭部が窓から顔を出した。
窓から外に身を乗り出すと、上の階を仰ぎ、両肩から更に三本の触手を伸ばして四階のガラスが砕けた窓を掴んだ。
――あの化け物だった。
雪が登校中に遭遇した。
住宅街に現れた。
リリィを襲っていた――あの植物の化け物だった。
テレビ画面に映っていたのは、間違いなくあの化け物の異形の姿だった。
雪は目を見張った。
あの化け物が、東京都内の病院に現れた――!
化け物は窓から体を出して、壁を登り始めた。木の根の足が落ちないように壁のでっぱりを正確に踏んでいる。触手が窓枠を掴み、化け物の巨体を持ち上げていく。蜘蛛のように壁を登り、四階の窓に、化け物は頭から一気にずるるっと飛び込んだ。テレビの画面から、病院の壁から化け物の姿が消えた。化け物は病院の中に再び入って行った。
ぞくっと寒気がしそうになった――あの窓は強風で割れたのではない――あの化け物が上の階に上がるために、触手で叩き割ったんだ――。
レポーターは相変わらず窓ガラスが割れて路上に落下しただの被害がなんだの騒がしく話している。そこで一旦、画面がスタジオに切り替わった。風に一切煽られない屋内のスタジオにいるキャスターが二人並び、「現場は大変な強風に見舞われているようですね」だなんてわかりきったことを言っている。
現場のレポーターも、スタジオも、強風についてしかコメントしていなかった。各地で屋根が剥がれたり看板が飛ばされたりなどの被害が出ている、としか報じられていなかった。
おかしい。絶対におかしい。
何であの化け物について何も触れられていないんだ?
あんな異形の化け物が病院の中で暴れているというのに、テレビの中では一切そのことについて驚きもされなければ言及もされていなかった。おかしいとしか思えない。とてつもない違和感だった。
テロップには「暴風」「強風」「窓ガラス割れる被害」としか表示されていない。化け物に関する反応は何一つ無かった。
そんな、ありえない。テレビであれだけはっきり放送されたんだ、東京中、いや日本中で騒ぎになって然るべき事態だろう。チャンネルを変えて他の局の報道も見てみようか?
まさか。
雪は思い当たった。
初め、雪にはあの化け物が見えていなかった。リリィが見えるようになった後、初めてあの化け物が視認できるようになった。それまでは透明の化け物だった。
そういうことなのか?
あの現場にいるリポーターにも、他のスタッフにも、スタジオの人にも、テレビを見ている他の人達にも――誰にも、あの化け物はまるで見えていないのか?
他の人達にとっては、あの化け物は全く見えない透明な存在だとしたら、大騒ぎもされず、もしかしたら聞こえもせず、勝手にガラスが割れただけにしか見えなかったということか。ぐねぐねと蠢いて壁を這い上がっていったあいつの存在に誰一人気づいていないということか。
雪一人を除いて。
テレビで奴を見た雪のみを例外にして。
――いや、違う。
私だけじゃない。
あの時奴が見えていたのは、私だけじゃない。
雪はテレビからリリィに目を移した。リリィはお粥を食べる手を止め、テレビに見入って凍りついていた。顔が蒼白になっていた。
「あ………」
と、声を漏らした。とてもショッキングなものを見てしまったかのようだった。
あいつ――化け物はあそこで何をしているんだ。あれが何なのかというよりも先に、それが疑問だった。あいつはリリィを狙っていた。数時間前までは住宅街にいた。それが今は何故あんな私立の大きな病院で暴れているというんだ。あいつは何のためにあそこに行ったんだ?
雪が見ていることに、リリィは気がつきこちらを見た。青ざめたリリィの顔が、悲痛に歪んだ。後ろめたそうに、雪から目線を外した。
初めからわかっていた。リリィは、知っているんだ。あの化け物が何なのかを。
あれが何者で、自分が襲われていた理由も、あそこ現れた意味も、全部知ってるんだ。
リリィはわかっている。
二人の間に沈黙が沈んだ。テレビではスタジオのキャスターが都内の被害状況を説明していた。話している内容は少しも頭に入って来なかった。
雪はじっとリリィを見つめていた。リリィは一点を見つめて、迷っていた。話し出そうとして、やめて、また口を開いて、やめた――そんなことを繰り返して、やと重苦しくリリィは口火を切った。
「シイナさん……」
「うん」
リリィはこっちを向かないままで訊いた。
「あなたには、あれが見えましたか?」
「見えた」
頷かずに雪は答えた。
「壁を登ってった化け物なら、見えた」
「………っ」
リリィは俯いた。スプーンを鍋の中に置いた。お粥はまだ少しだけ残っていたけど、もう冷えてしまったみたいに見えた。そんなわけは、ないのに。
雪は心を決めて、口を開いた。
「ねえ」
リリィの肩がびくんとした。言葉を切ってから雪は言った。
「あれが何なのか、訊いていい?」
「………」
「朝に会った時、あれがどうしてリリィを付け狙っていたのか、訊いていい?」
あれとあなたにどんな関係があるのか、訊いていい?
「…………」
怯えたような顔をして目を背け、リリィは揺らいでいた。雪は黙ってリリィの返事を待った。
テレビはついたままだったけど、何を話しているのか全く聞こえなかった。
雪は、待った。
リリィは多分、悩み抜いた。
そして、意を決したように、リリィは顔を上げた。雪と正面から顔を向き合った。血色が戻り、緊張したように頬が赤くなりつつあった。
雪は口をつぐんでリリィをまっすぐ見つめた。リリィもまっすぐ雪を見つめ返した。そこに確かな決意があった。
リリィの言葉を聞く覚悟が雪にはあった。リリィが打ち明けてくれる覚悟を、決めてくれたからだ。
「シイナさん」
「うん」
リリィは姿勢を正した。そして、言った。
「実は私は、魔法少女なんです」