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彼方より~From distance~  作者: NIRO
第二章
9/10

登校

目にまぶしい光がかかる。

ぼんやりとして、まだ頭が働かない。

時計を見る。

8:30

ん?・・・

遅刻だ!!

「やばい、遅刻だ!!圭祐なんで起こしてくれな・・」

急いで跳ね起きると、そこにはだらしなく寝そべっている圭祐の姿が・・・

気持ちよく寝ている圭祐の頭をサッカーボールよろしく蹴り飛ばす。

「圭祐、起きろ!!」

「馬鹿、痛てえよ!!ひとの頭を気安く蹴るなよ!!」

「じゃあ今度から気高く蹴るな。」

「なら、いいよ・・・って何か違げえよ!!」

「そんな馬鹿いってないで早く着替えるぞ。」

「なんで?」

「なんでって・・・」

あ、そうなんだ。俺たちはずっと怠惰な生活を送っているんだった。

授業にも出ず、遊んでばかり。

教師に反抗して生きるのが生きがいなんだ。

心の奥で分かっていた。その方向へと無意識に進んでいることに。

「俺は退院初日だ。初日ぐらいまともに授業受けないと、春に殺されそうだ・・」

「あっ、それ言えてる。でも俺は午後から行くわ。」

そういって二度寝を始めた。

はぁ・・・

俺は適当に朝食を食べ制服に着替えて家を出た。

教科書などは俺は学校においているのかここにはなかった。

外に出ると、病院では感じられなかった熱気が俺を襲った。

・・・もうこんなに暑いのか

病院はクーラーのおかげで涼しかったが、病院を出るとなるとそうもいかなかった。

汗でシャツが張り付く。仕方のないことだがとてもいやな感じだ。

平日ともあって、道路にはほとんど人がいなかった。

・・・

・・

教室の前まで無事に来ることができた。

問題はここから。

どう授業に紛れ込むか・・・

先ほどから様子みていると、どうやら俺の席は、今いる通路側と反対の窓側の一番奥のようだ。

そこにきれいにふたつ空席があり、その隣にモンスター級学級委員長、下林 春がいた。

そして、前の方には昨日のエセ外国人がいた。

さて、どうするか・・・

今頃来たとバレると、春にとび蹴りを食らうことは必須と考えていいだろう。

ドアを開けると開けた音でばれてしまう、窓からよじ登る?いや、ばれて蹴落とされたらまた病院行きだ・・・

というより、とび蹴りをくらえばどっち道病院行きでは?

そのまま進入のすべを考えていると廊下で足音がした。

誰だろう、圭祐か?なら手伝ってもらうか。

重みのある足音のするほうへと向かう。

「おい、けい・・・」

そこには、がつっり鍛えられたボディに身を包んだゴリラのような教師が立っていた。

「菅原、退院おめでとう。で、授業をサボって何をしてるんだ?」

平然と尋ねるゴリラ。

「えっと、・・・・急な用事ができました!!」

急いで反対方向へと走り出す。

が、足を痛めているのかうまく走れない。

「退院初日から、鍛えなおしてやる!!こい、菅原!」

走ってこっちに向かってくる!

急いで逃げなければ。

前を向いてとりあえずゴリラと距離を置く、が、俺の目の前には

「よっ、真樹。あんた脱出しようなんていい心意気よねー。」

暴力系委員長、春が待ち構えていた。

「おまえ、授業は出なくていいのかよ。」

「私の成績だとあのぐらいの授業でなくても平気よー」

頭いいのか、流石委員長、だが、ここではこいつの相手している場合ではない。

というよりそんな理由で授業抜け出していいのかよ・・・

「俺も授業は受けなくていいらしいから、先に帰るわ。」

そういって横をすり抜ける。

「あんた、私に見つかっておいて、私の許可なしに帰れると思ってるわけ?」

俺の頭の中で委員長警報機が大音量で流れている。

やばい、だが例えるなら前門の猫、後門のゴリラ。これだったら誰でも前門突破を狙う!!

暴力系だからといっても相手は女子、所詮俺の敵ではな・・・

右肩を思いっきりつかまれる。

うそだろ、俺は春を抜いたはず・・・

そして、俺の身体がふわりと浮いて、視界が上下逆になる。

そのまま壁に叩きつけられる。

後頭部から鈍い音が聞こえる。

それは外からではなく頭の内側から響いてくる。

俺病み上がりなんですけど・・・

「私を抜けるなんて大きな勘違いをしたものねー」

こいつに、投げられるなんて・・・

「隅岡先生、どうぞ。」

そういって俺の襟をつかんで引渡し。

「くそっ、ゴリラに捕まっちまった・・・」

「病院にいっても頭までは治らなかった様だな、菅原。俺が矯正してやろう・・・」

事実上の死刑宣告だろう。

「春、お前ゴリラと組んでるのか・・・」

「春は、お前のような不良の更生を受け持ってくれているからな。本校でもトップの成績を持つ春に、授業を抜け出す許可は既に出してある。」

俺はそのままずるずると引きずられながら連れ去られてしまった。

・・・・

・・・

・・

一生出してもらえないかと思った・・・

3時間に及ぶ個人面談も終わり、昼休みには俺は自由の身になった。

こんなに面談が短いのも俺が課題をすべて提出したおかげらしい・・・

春からの報告にゴリラもとても驚いていた・・・

「おい、あれが退院してきた不良だぜ・・・」

「噂に寄れば課題すべて出したらしいよ・・・」

「いや、私が聞いたのは誰かにやらせたとか・・・」

「やべっ、あいつが近いから向こうで話そう・・」

俺が廊下に出ればこう噂。

もう俺が課題すべて提出の噂は流れているようだ。

ひどいもんだ・・・

まあ、俺が出さなかった自業自得、か・・・

教室に戻ると圭祐が来ていた。

「よう、真樹。おまえ隅岡んとこに閉じ込められてたんだって?」

「まあな。」

「よくやるよ、お前も。だから昼休み行こうって行ったのに。こうやってくれば、あの暴力おんなも・・・」

「誰が暴力おんなですって?」

圭祐の背後から現れる修羅のオーラをまとった春が登場。

「い、いやだぁぁぁぁあああ」

圭祐退場。

まったく、さわがしい。


もう昼か・・

午前中、俺は授業は受けなくてすんだが、あんなことになるんなら逆に授業を受けた方がマシだ。

圭祐がいないと静かだな。

ゆきは隣のクラスだし昼飯は圭祐が帰ってきてからでいいだろう。

・・・・暇だし、寝るか。

俺は机にうつ伏せになって目を閉じた。


世界には、「自分のことを一番知っているのは自分自身だ。」という言葉がある。

だとしたら、自分のことを全く知らない人間は何なんだろうか。

 本当の自分を知らない人間はどうなるのだろうか。

 本当の自分を知ろうとしない俺はどうすればいいのだろうか。


俺は一人、ふと心の裏に浮かんだ問いから逃げるようにして眠りについた。

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