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彼方より~From distance~  作者: NIRO
第一章
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終日

「こんにちはです。」

「・・・おっす。」

二人が入ってくる。

やはり、ゆきは見ていて和む。

かわいらしいし、いるだけでおっとりとした空気が流れこむ。

俺も自然と緊張がほころぶというものだ。

そんなゆきに比べて、けいすけは肩を落として明らかにテンションが低そうだ。

なんか見ていてなんともいえない・・・

何かあったのかと聞こうとすると、先にけいすけが口を開いた。

「おまえさ、春となにか約束でもしたの?」

はる?

・・・約束?

この二つの単語・・・

さっき確かに委員長とは約束したが・・・

もしかして、そのことなのか・・・

「あ、ああ。今まで溜めてた課題全部出すって約束した。」

はる・・・あの暴力系委員長女子の名前か。

「あべばっ」

その瞬間、けいすけが驚いたのか、奇声を上げて倒れてしまった。

「けいすけくん!」

倒れたけいすけにゆきが駆け寄る。

なにしてんだろ、あいつ。

頭を打ったのか、頭をさすりながら立ち上がった。

「いててて。あまりにもびっくりして、倒れてしまったよ!!まったく、お前のせいで俺も入院する羽目になりそうだよ。」

ため息交じりの声で言う。

「ん?なんで?」

なんでこいつも入院する羽目になるんだ?

できればこいつと一緒に入院なんてしたくない・・・

「あいつも出すって言ったんだから、おまえもだせーみたいなこと言われてさー。」

なんだ、こいつも出してないのか。

俺たちはいったい学校で何をしているんだ・・・

課題も出していないとなると、ちゃんと出席しているのかも危うい・・・

しかも金髪だし・・・

ちゃんと俺たちは学校を卒業できるのだろうか・・・

しかし、同じ脅迫被害仲間としてけいすけも気の毒だ。

あの暴力女にかかればしぶしぶ了承するしかないのだろう。

「で、なんで入院なんだ?」

「それが、出さなかったらお前と一緒に入院させるって脅されちゃって。」

俺と一緒にってところがまたこわい。

このホモと一緒となると何をされるか・・・

「てことは、さっき春に会ったのか?」

「はい、春さんとさきほどお会いしました。」

とすると、二人と春は顔見知り以上の関係・・・

いや、けいすけに課題を出せって言っている時点で俺と同じクラスという可能性が高い。

だが、けいすけが全校生徒の中でも有名なぐらいの課題提出率の悪さなのかもしれない。

こいつに限ってありえそうだ。

でも普通に考えて、俺と同じクラスでなかったら、なぜ他のクラスの委員長がわざわざ見舞いに来るんだ?

まぁ、俺と春が特別な仲ってなら別だが・・・・脅迫だの罵倒だのされてるしそれはなさそうだ。

てことは、俺、けいすけ、ゆき、春の四人は同じクラス・・・ってことか。

「で、さ。まさき。春と二人で何話してたの?」

「別に、課題の話だけど。」

なんだ、妙に疑り深いな。話の内容なんてどうでもいいことじゃないか。

もしかして、そういう関係だったことを知ってたとか・・・?

そうだったらそうだったで怖いのだが・・・おもに物理的な面で。

それだとこうして入院しているのも納得がいくのだが・・

そんなことを考えているとけいすけがさらに探り出す。

「なにか、貰ったりしてない?」

なんて勘が鋭いんだ!!

「ど、どうしてだよ。」

あまりの勘の良さに動揺してしまう。

おい、しっかりしろ、俺!!

「いや、妙に春がごきげんだったから。」

「べ、別に貰ってねーよ。なんだ、お前。春との仲を疑ってんのか?」

こうなったら、こっちから攻めに入ってみる。

守るより攻める!!

それが俺のモットーだ!!

さてどうなんだろうか、そうゆう仲だったのか?

「まあ、少しね。貰ってないんならいいよ。それなら、俺の思い違いだし。別に貰ってたら冷やかすだけだけどね。」

こいつ、意外と馬鹿そうに見えて感づきやすいし侮れないな。そうそうに対策を立てなければ・・・

「とりあえず、まーくん、体調は大丈夫ですか?」

疑り深いけいすけとは違ってゆきは俺の体調を気にかけてくれているようだ。

ああ、いつ見ても本当に和む・・・

ゆきのおかげで病気も早々と治りそうだ・・・

「無理はしないでください。まだ、身体によくないですから。」

「ああ。無理はしない程度にするよ。」

「ゆきちゃん、僕も無理しないようにするよ。」

おまえは黙ってろ・・・

「けいすけさんは、無理してでも勉強やってください。」

「えー。僕だけっ!!」

「「ははははは・・・」」

三人でいると、とてもおもしろかった。

まあけいすけを馬鹿にするだけのことだが・・・

三人で会話していると、もう陽は落ちすっかり暗くなってしまっていた。

本当に三人でいると時間というものを忘れてしまう。

「もう暗い。すまないな、二人とも。」

「いいってことよ。」

「はい。気にしないでください。」

「そういってもらえると助かる。」

とても暗いので、夜道がとても心配になる。

とくにゆきはかわいいからなおさら心配だ。

こういってみると、けいすけもゆきもとてもいいやつだった・・・

本当に心強い・・・

俺たちは、友達以上の関係だったに違いない。

それこそ、言葉で言い表せないような・・・

「けいすけ、ゆきを自宅まで送っていってくれ。」

「おう。合点承知。」

親指を立ててポーズを決める。

どこの合言葉だ・・・

「じゃあ、おやすみなさいです。まーくん。」

「おやすみ、まさき。」

「ああ、おやすみ。」

二人が出て行って、一人になる。

ああ、今日はあわただしかった。

たくさんのことがあった。

ありすぎてたまらなかった。

おれは、このままでいいのだろうか・・・

・・いいはずだ。

何もしなくても明日は始まる。

とりあえず、情報を整理して、明日に備えよう。

課題もボチボチと始めますか・・・

そうして、意識が戻っての一日目が終わった。

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