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彼方より~From distance~  作者: NIRO
第一章
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三人

目を開ける。

強い光が目に入ってまともに開けない。

ぼやけて白が一面に広がっていることしか分からない。

だが、時間が経つに連れ、徐々に目が慣れてきたようだ。

視界が開ける。

俺が見ていた、白いものは天井だった。

ということは俺は寝ているのだろうか。

ここはどこだろうか。

いそいで身体を起こす。

「あっ、まー君起きちゃだめ。まだ・・」

「へ?、・・ぐぁ・・」

腹に激痛が走る。

この世のものとは思えない痛みだ。

もう少しはやく言って欲しかった・・

痛みで口をぱくぱくするだけで声がでない。

「まだ治ってないんだから、動かしちゃだめです。」

そういって俺の肩を持ってゆっくりと寝かせてくれる。

とてもやわらかくて、肌のぬくもりが伝わってくる。

顔を横に向けると高校生だろうか?

制服を着た清楚な感じの女子と、第一ボタン開け、髪型もぱやんぱやんな不良っぽい男子がいた。

なんだ、こいつら。

一瞬身構えるがすぐに、解いた。

どうやら、見舞いに来てくれたようだ。

だが、二人とも顔に見覚えがない。

「よっ、まさき。やっと意識が戻ったか?けっこう心配したんだぜー。」

見た目程は不良じゃなさそうだ。

今こいつは”まさき”と呼んだ。

・・・まさき。

話の流れ的に俺を指していることは明らかだ。

俺の名前は、まさきなのだろうか?

思い出せない。

「まさき?」

不良が不安げな顔をしている。

「あっ、ああ。これで、もう大丈夫だ。心配かけてすまないな。はは。」

笑って馴れ馴れしいキャラでごまかす。

拒絶するよりはマシだろう。

記憶がないことは、今はバレないほうがいい。

バラすときがきたらいつでもバラせる。

今は、バラすときではないだろう。

「本当に大丈夫なの?」

女子生徒のほうに疑われているようだ。

顔をよく見ると小顔でとてもかわいい。

「だって、俺だぜ。大丈夫だって。」

心配をかけないように明るく振舞う。

とりあえず記憶があるように言動を注意せねば。

事故以前の俺のキャラが明るい奴であるよう願うだけだ。

「それもそうだよ。なんてったってまさき、だもんな。」

「それどういうことだよ。」

俺はもともと頑丈な奴だったのだろうか。

「そうゆう意味だよ。まさきもこんなんだし、ここにいたってしょうがないや。ゆきちゃん行こう。」

そういって二人とも荷物をまとめる。

キャラは大丈夫なようだ。

このキャラでいけばなんとかなるだろう。

ちょっと安心する。

「ふたりともどこ行くんだ?」

「私たち、いま昼休みなんです。もうすぐ授業始まりますので、いかないくてはなりません。あっ、でも心配しなくても大丈夫です。放課後も二人できますから。」

「ごめんな、迷惑かけて。」

「気にすんなって。なんだ?頭でも打ったか?」

「打ってねーよ。二人とも勉強がんばれよ。」

何気に言ったその言葉にびっくりしたのだろうか。

二人とも時が止まったように固まってしまった。

怖くて俺から話しかける。

「お、おい。どうかしたのか?」

「あ、あのなあ、まさき。なんて言ったかよく聞こえなかったんだ。もう一度言ってくれないか?」

ただたんに、聞こえてなかったのか

「え?だから、頭打ってないから、二人とも勉強がんばれって。」

ちょっと声を大きくして聞こえるように言う。

「・・・・」

二人ともあっけにとられる。

そして、

「まさきは、頭の検査してもらったほうがいいな。」

「なんでだよ。勉強するとこだろ、学校は。」

「あ・・・・あああ・・うわぁぁぁ。まさきが狂ったぁぁぁ。」

そう叫び声をあげた。

どう考えてもこいつが狂ってるようにしか思えない。

「馬鹿。ここは病院だぞ。少しは静かにしろ。」

注意すると、馬鹿な不良は、目に涙を溜めながら近づいてきた。

「な、なんだ。気持ち悪い。」

なんて不細工だろう。

吐き気を催していると、

「まさき・・・・絶対完治させてやるからな。」

そう呟いて、

「うわぁぁぁぁぁぁぁ。」

と叫びながらどこかに行ってしまった。

それを呆然と眺める俺とゆき(そう呼ばれていた)。

「あいつは放っておいていいのか?」

俺のほうから声をかけた。

「あ、べつにいつものように戻ってきますよ。」

彼女からは、落ち着いていて、とてもやさしい雰囲気を漂っている。

あのホモ不良とは大違いだ。

ただ、見た覚えもないのにどこかで見たことがある、記憶がそう告げていた。

「まーくんは、とても落ち着きました。とてもいいことです。」

きれいな笑顔。見ていてそう思った。

「そうか、俺はそんなに落ち着いてなかったか?」

事故以前の俺に関わる質問だ。

「はい、それはもう。けいすけくんといつも遊んでばかりだったじゃないですか。」

あの馬鹿不良のことだろうか・・・

あんなホモ野郎と友達だったのか・・・

ちょっとぞっとする。

「そうだったな。」

「ぼーっとしてますけど、大丈夫ですか?」

「あ、ああ。ほら、早く学校に行かないと午後からの授業遅れるぞ。」

悟られるとまずい。はやく出て行ってもらわなければ。

情報がない今はあまり質問されると対応に困る。

「はい。じゃあ、また放課後来ますね。では。」

そういってゆきと呼ばれていた女性は去っていった。








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