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その4
私は少し大きめのカップに九分目までついだ珈琲を持って書斎に向かった。
四畳半の部屋の三隅を本棚で囲い、その本棚には私が厳選した本をぎっしり詰めている。
1Kの部屋だから、実質二畳と少しが私の生活空間。
壁沿いに足の低い机と使い古されたパソコン。そのすぐ後ろにぺちゃんこの布団が引かれて、すぐに眠れる。
机とパソコンと本と布団。それ以外、何もないこの部屋が私にとってのすべてだった。
私はパソコンを少し横にずらし、珈琲の香りを部屋いっぱいに楽しみ香る。
少し狭い部屋だけど、すぐに香ばしい珈琲の香りが充満できるのがこの部屋の利点だ。
私は珈琲に口をつけて考えた。
さて、今日は何を読もう。
昼食前のブレイクタイム。
珈琲片手に本の世界を想像する。
この後、アルコールの酔いに任せて瞑想に浸るのに最適な本。
ビールの炭酸とからあげの肉汁にマッチした組み合わせを考える。
その時、ブラックな珈琲の苦味が鼻から頭いっぱいに広がって、私は様々な本の主人公達に挨拶するのだ。
ピピィ、ピピィ、ピピィ……。
そんな至高の儀式の最中、私の頭にノイズが走った。